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さぶ9 山本周五郎

【連載朗読】さぶ9 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「さぶ9」です。七月の大暴風の後、おすえが栄二のところにやってきた。大あらしの時から栄二のことが心配でたまらなかったのだ。栄二は相変わらずおすえに対して素っ気なく、おすえはさぶの手紙を四通置いて帰って行った。字の下手なその手紙には日付がなく、内容はどれも栄二のことを心配し、自分の近況が書かれていた。そこには栄二に心配させないように葛西でゆっくり養生し、脚気も腸も九月頃にはすっかりよくなるだろうと気楽に書いてあるが、栄二にはさぶの辛い明け暮れがあらわに感じるのであった。寄場では、全部の人足で大あらしと高波の後片づけと再建にかかっていた。おすえは五日めごとに来ていたが、八月の十一日には「すみよし」のおのぶが訪ねてきた。おのぶはさぶのことで話があって来たのだ。さぶは芳古堂から手紙一本で暇を出されていた。その理由をおのぶから知らされた栄二は愕然とするのだった。またおのぶは、復讐しか頭にない栄二に、それは自分本位でそんなことにかかりあうことはない、それよりも栄二のために苦労もし、心配もしている人たちのことを考えるように云う。

かん太
寄場にいる人たちの中には「一生ここで暮らしたい」と考える人が少なくなかった。この寄場のたてまえは、江戸市中の多くの浮浪者、小泥棒、牢を出ても職も身寄りもない者などを集めて手職を与え、賃銀を貯えさせ、機会があれば市中へ出て一般市民と同じ生活のできる人間にするということだった。
アリア
栄二は与平からその話を聞いて、世間の下積みになって、世間のからくりに振り回されながら、その日その日をかつかつに生きている人たちがここへきたら、やっぱり二度と世間に戻りたくないと云うだろうと思い、さぶもその組だと思うのだった。
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さぶ9 主な登場人物

おのぶ・・・「すみよし」の女中。さぶのことを話に寄場に訪ねてくる。そこで女衒の六が死んだことを知る。

さぶ・・・脚気と腸を患って実家の葛西へ帰っているが、そこでも追い使われている様子。六月に芳古堂から暇を出される。

成島治右衛門・・・寄場の奉行。

さぶ9 覚え書き

無法(むほう)・・・道理にはずれていること。乱暴なこと。

上げ潮・・・満ちて来る潮。満ち潮。

横物(よこもの)・・・横に長く書かれた書画や、それを表層した軸物や額。

頬桁(ほおげた)・・・ほおぼね、ほおがまち。

すべた・・・女性を卑しめ罵る言葉。顔のみにくい女性。

雑用(ぞうよう)・・・こまごましたものの費用。雑費。

一心(いっしん)・・・心を一つの事に集中すること。

悪辣(あくらつ)・・・情け容赦なくたちが悪いこと。あくどいこと。

 

 

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