【連載朗読】さぶ13 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「さぶ」です。もっこ部屋の空気は眼にみえてとげとげしく、険悪になっていった。三月になると義一のまわりに集まるっ者たちは三十人近くになり、小頭の伝七は「まるで鉄火場のようだ」と云った。そして部屋の見張りには小島良二郎のほかに役人二人が当たるようになっていた。ある晩、栄二が棒投げをしていると万吉が寄ってきて、こぶの清七が女と一緒になるために寄場から出て行ったことを栄二に伝えた。そして義一らにおれたちのもっこ部屋をこんなざまにされてはがまんできない、もう辛抱が切れそうだ。あにいがやるときは俺たちもやると口火を切るのだった。栄二はもっこ部屋に戻ったとたん、りゅうに杖を蹴放されて土間へみじめにひっくり返った。そこへ義一が上り端へ出てきて栄二をいい笑い者にした。栄二はかっと眼が昏んだようになり、撞木杖を持ち直すと大股にとんで義一を力まかせに殴りつけた。
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さぶ13 覚え書き
きおいたった・・・ひどく意気込む。
鉄火場(てっかば)・・・ばくち場。賭場。
海端(うみばた)・・・海のほとり、うみべ
後架(こうか)・・・便所。
嘆息(たんそく)・・・悲しんだりがっかりしたりして、ため息をつくこと。
独り合点(ひとりがてん)・・・自分だけで、よくわかったつもりになること。
かな轡(かなぐつわ)・・・金属製のくつわ。口止め料として贈る賄賂。
おがみ打ち・・・刀の柄を両手で握って頭上に構え、上から下に切り下げること。
咎人(とがにん)・・・罪を犯した人。