【連載朗読】さぶ14 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「さぶ14」です。いよいよ話も佳境に入ってきました。その日は四月七日、北町奉行所の仮牢から出された栄二を、さぶとおすえが引き取りに来た。石川島では「再吟味」ということで差し戻されたが吟味らしいことはなかった。栄二は、あの傷害の現場は多くの者たちが見ていたのだから、このまま沙汰なしで済ませるわけはないし、自分の気持ちもさっぱりしない、そう思い、青木又左衛門に問い返した。又左衛門は、寄場人足百余人から栄二を放免するようにと嘆願所が出てい、こちらの調べでも栄二を罰する事実はないということだった。栄二は芳古堂のこと、綿文のこと、目明したちのことを思った。しかし、かつてはあれほど誓った復讐の決意もほとんど形を失っていた。そして四月の二十一日に、栄二とおすえは祝言をした。寄場から小頭の伝七、与平、万吉、松田権蔵ら四人が祝いにきた。
さぶ14 主な登場人物
おのぶ・・・徳と根比べ中。徳は酔うと絡んでくる。その度におのぶは剃刀を喉へ当てて手出しをさせないようにしている。
平蔵・・・おすえの父。筆屋の主人、妻を亡くして長いこと独りぐらしをしている。口の重い、温厚そうな人柄、五十を越したように老けてみえるが年は四十五歳。
おせえ・・・十六歳。寝たきりの父親を内職で養っている。店賃が溜まって追立をくったとき、さぶに助けを求める。
さぶ14 覚え書き
平気の平左衛門(へいきのへいざえもん)・・・まったく動じないこと。ものともしないこと。
吟味(ぎんみ)・・・罪状を調べただすこと。
紅絹(もみ)・・・紅で染めた無地の平絹。
油単(ゆたん)・・・ひとえの布や油をしみ込ませ、湿気や汚れを防ぐため、敷物や風呂敷に使った。
猫板(ねこいた)・・・長火鉢の端の引き出し部分にのせる板。そこに猫がうずくまることからいう。
什器(じゅうき)・・・日常使用する器具、家具類。
呻吟(しんぎん)・・・苦しんでうめくこと。
箱膳(はこぜん)・・・普段は食器を入れ、食事の際にふたを膳として使った箱。
木遣り(きやり)・・・重い木材や岩などを、大人数で声を掛けたりしながら運ぶこと。