【朗読】合歓木の蔭(ねむのかげ) 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「合歓木の蔭」です。この作品は昭和23年「新読物」に掲載されました。十七歳の奈尾は兄の市蔵の友人、岩田半三郎と婚約して祝言の日取りも決まっていました。奈尾は、市蔵という兄だけで女姉妹もなく、母も亡くし、厳しい父のもとで育てられて友達もありませんでした。二の丸御殿の舞台で行われる演能に叔母に付き添われて行ったとき、誰かがじっと奈尾を見ていることに気づきます。それは無礼なことなのだが奈尾は少しも怒りの感情は起こらず、むしろあやされるような密やかな喜びが胸に溢れて、一種のするどい快楽のような感じにとらえられるのでした。そしてそのじっと見る眼の主は、萩の廊下で奈尾の袂に結び文を入れ、その夜、庭の合歓木の蔭へ呼び出すのでした。
合歓木の蔭(ねむのかげ)主な登場人物
奈尾・・・十七歳。八百五十石の年寄肝入役の娘。小さいときから夢見がちな性質で、空想の方が現実より生々しく実感がこもっているように感じる。半三郎と婚約中、ふとすると誰かが遠くから自分を呼んでいるような錯覚におそわれる。そして結び文の主が、合歓木の蔭でささやく恋情の言葉に捉えられていく。
市蔵・・・奈尾の兄
岩田半三郎・・・七百石の納戸奉行、温厚で善良で思いやりが深く、奈尾にゆき届いた愛情を示してくれる。
男・・・老職なにがしの二男。
合歓木の蔭(ねむのかげ)覚え書き
こけら落とし・・・新たに建てられた舞台で初めて行われる催し。
演能(えんのう)・・・能を演じること。
拝見(はいけん)・・・見ることをへりくだっていう語。
耳こすり・・・人の耳許で小声にささやくこと。
眼まぜ・・・目くばせ。
賜餐(しさん)・・・殿さまから酒食を賜る。
三晩(みばん)
四半刻(しはんとき)・・・現在の約三十分。
放恣(ほうし)・・・気ままでしまりのないこと。
収斂(しゅうれん)・・・縮むこと。引き締まること。
無風帯(むふうたい)・・・一年中、あるいは季節によってほとんど風のない地帯。
平板(へいばん)・・・変化に乏しく面白味のないこと。
閃光(せんこう)・・・瞬間的に発する光。
悪癖(あくへき)・・・悪い癖、よくない習慣。
煩瑣(はんさ)・・・こまごまとして煩わしいこと。
喪心(そうしん)・・・魂が抜けたようにぼんやりすること。