- 1 粗忽評判記 山本周五郎
- 2 【朗読】粗忽評判記 山本周五郎 読み手アリア
- 3 紀伊快男子 山本周五郎
- 4 【朗読】紀伊快男子 山本周五郎 読み手アリア
- 5 紀伊快男子 主な登場人物
- 6 紀伊快男子 覚え書き
- 7 美少女一番乗り 山本周五郎
- 8 【朗読】美少女一番乗り 山本周五郎 読み手アリア
- 9 美少女一番乗り 主な登場人物
- 10 美少女一番乗り 覚え書き
- 11 義理なさけ 山本周五郎
- 12 【朗読】義理なさけ 山本周五郎 読み手アリア
- 13 義理なさけ 主な登場人物
- 14 義理なさけ 覚え書き
- 15 良人の鎧 山本周五郎
- 16 【朗読】良人の鎧 山本周五郎 読み手アリア
- 17 良人の鎧 主な登場人物
- 18 良人の鎧 覚え書き
- 19 艶書 山本周五郎
- 20 【朗読】艶書 山本周五郎 読み手アリア
- 21 艶書 主な登場人物
- 22 艶書 覚え書き
- 23 艶書 山本周五郎
- 24 【朗読】「艶書」 山本周五郎 読み手 アリア
- 25 艶書 主な登場人物
- 26 艶書のあらすじ (※ネタバレを含みます)
- 27 艶書 覚え書き
- 28 芋粥 山本周五郎
- 29 【朗読】芋粥 山本周五郎 読み手アリア
- 30 芋粥 主な登場人物
- 31 芋粥のあらすじ (※ネタバレを含みます)
- 32 芋粥 覚え書き
- 33 花匂う 山本周五郎
- 34 【朗読】花匂う 山本周五郎 読み手アリア
- 35 花匂う 主な登場人物
- 36 花匂う 覚え書き
- 37 花宵 山本周五郎
- 38 【朗読】花宵 山本周五郎 読み手アリア
- 39 花宵 主な登場人物
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紀伊快男子 山本周五郎
【朗読】紀伊快男子 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「紀伊快男子」です。この作品は昭和15年講談雑誌に掲載されました。
紀伊快男子 主な登場人物
高田牧之助・・・二十八歳、頼宣の愛臣の一人。五百石の近習番で水戸以来のお側去らずで文学にも明るく武芸にも達し家中きって秀才の名を謳われている。怒ると「豹」と呼ばれる。
長瀬吉之丞・・・二十六歳。近習番、佐和の兄で美男、牧之助と幼い頃から隣同士で兄弟同様の仲。
佐和・・・十七八歳。牧之助の許嫁者。
大崎半九郎・・・大崎玄蕃の甥。二十人力の膂力と剣と槍をよく使い、大阪の陣には兜首八級を挙げて福島正則に「鬼九郎」の名を貰う。恐ろしく傲岸粗暴の質で、和歌山へ来てから半年ほどの間に、もう幾十度となく腕力沙汰を演じていた。
大崎玄蕃・・・福島正則の家臣、鞆ノ城主として八千余石を領していたが、主家改易と共に村上彦右衛門、真鍋五郎兵衛らと紀伊頼宣に迎えられ、八千石の高禄を以て随身した。
紀伊快男子 覚え書き
美少女一番乗り 山本周五郎
【朗読】美少女一番乗り 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「美少女一番乗り」(昭和13年/少女倶楽部増刊号)です。人里遠く離れた飛騨の山中、摩耶谷の奥に、建武の時代から連綿と伝わる郷士の一族が棲んでいた。伝説によると、後醍醐天皇の勅勘を蒙って流罪になった殿上人の裔で、北畠賀茂という家を中心に十八軒の家が全く世間とは交わりを絶って生活し、代々どんな領主にも貢ぎをせず、一族独立の面目を誇ってきた。
美少女一番乗り 主な登場人物
お弓・・・16歳。北畠賀茂の一人娘。殿上人の子孫にふさわしい教養と、郷士の娘として馬術、薙刀、太刀の修行に励む。五郎という熊を育てている。
五郎・・・小さいときお弓に拾われて育てられた大熊。
北畠賀茂・・・北畠十四代の賀茂老人。摩耶谷の一族を指導する非常に厳格な人。お弓の父。
苅谷兵馬・・・高山城の藩士。木曽方の城塞の備えを探りに行き、帰りに鹿追沢の砦の者に見つけられる。
村井伝之丞・・・摩耶谷の一族で力量も武術の腕も優れているが、平常から粗暴の質で「生涯こんな山奥に朽ちているより世間へ乗り出して一代の英雄になりたい。」と若者たちをそそのかす。
美少女一番乗り 覚え書き
白刃(はくじん)・・・鞘から抜いた刀。抜き身。
人跡(じんせき)・・・人の足跡、人の通った跡。
重傷(おもで)
昏倒(こんとう)・・・めまいがして倒れること。
連綿(れんめん)・・・長く続いて絶えないさま。
僻遠(へきえん)・・・ある地域や場所が中央から遠く離れていること。
時勢(じせい)・・・移り変わる時代の様子。
群雄(ぐんゆう)・・・多くの英雄。
割拠(かっきよ)・・・それぞれが自分の勢力を張ること。
勅勘(ちょっかん)・・・天皇から受ける咎め。
厳然(げんぜん)・・・いかめしくおごそかなさま。
岩窟(いわや)・・・岩の洞穴。
褥(しとね)・・・座るときや寝る時に下に敷くもの。
猿(ましら)
気息奄々(きそくえんえん)・・・意気が絶え絶えになって、今にも死にそうなさま。
奸賊(かんぞく)・・・こころのねじけた憎むべき悪者。
眦(まなじり)・・・めじり
寝鳥(ねとり)・・・ねている鳥。
拉いだ(ひしいだ)・・・勢いをくじく。
叫喚(きょうかん)・・・大声でわめきさけぶこと。
義理なさけ 山本周五郎
【朗読】義理なさけ 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「義理なさけ」(昭和22年)です。中山良左衛門が内庭から手をはたきながら入っていったとき、しず江という若い小間使いが人目を憚るような身ごなしで廊下を小走りに奥の間のほうへ来るのを見つけた。なんの用があるんだ。奥の間には良左衛門と甲子雄の部屋しかない、そこは小間使いの出入りは常から禁じてある。しかし、しず江は甲子雄の居間へすべるように入っていった。良左衛門は足ばやに広縁へあがり戻って来たしず江の肩をつかみ何をしにきたのか問いただした。しず江は何も云わなかったが、甲子雄の机の上にはおもてに若旦那さまと書かれた封書が置いてあった。良左衛門は封を切った。文言は短かったが内容に驚かされた。
義理なさけ 主な登場人物
中山甲子雄・・・二十四歳。幼いじぶんから素直な子供で、気持ちも明るく性格もきびきびと濁りがなかった。ひと頃は学問に熱中していたが、この数年は武芸に興味をもちだして、中条流の小太刀では家中指おりの名をとっている。佐伯靱負の娘と縁談がととのい、近日うちに結納のとりかわしをかわすところだった。
中山良左衛門・・・甲子雄の父。小田原藩の江戸屋敷年寄役。八百万石の御納戸奉行。
園生・・・二十歳。ひじょうな美貌と抜きんでた才芸とで有名な甲子雄の許嫁者。
しず江・・・中山家の小間使い。三年前、十五歳で小間使いにあがった。眼の大きなふっくらした顔立ちで、笑うときにできる片笑窪が云いようのない可憐な感じだった。甲子雄は彼女を見ることは好きだった。
義理なさけ 覚え書き
謝絶(しゃぜつ)・・・相手の申し入れを断ること。
うろん・・・正体の怪しく疑わしいこと。
宿元(やどもと)・・・泊まっているところ。
詮議(せんぎ)・・・罪人を取り調べること。
淙々(そうそう)・・・水が音をたてて、よどみなく流れるさま。
瀬音(せおと)・・・浅瀬を流れる水の音。
僭上(せんじょう)・・・身分を超えてた出すぎた行動。
良人の鎧 山本周五郎
【朗読】良人の鎧 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「良人の鎧」です。(昭和18年)孫兵衛は義兄与太郎が石田三成に取り入ろうとするのを憎んでいた。それは主君右京太夫幸長の父は弾正少弼長政で、もと織田信長の家臣であり、秀吉とはあい婿の親族であったが、秀吉が関白太政大臣とまで栄達するあいだに、二人の間柄は必ずしも折り合いがよくなかった。長政は二度まで秀吉のために危うく殺されようとした。その二度とも徳川家康が調停にたって命は助かったが、二十四万石の大名としてはぬぐいがたい屈辱だった。そのうえ去年秀吉が逝去して間もなく、浅野長政は密かに徳川どのを討とうと謀略をめぐらせているという密謀を徳川家に通じたものがあった。その密謀が治部少輔から出たものだということは今では知らぬものがないといってよい。だから与吉郎がしきりに三成に取り入っていることは屈辱の上塗りであり、ましてあわよくば己の運の踏み段にしようという肚があるとすれば、孫兵衛は最悪の場合をも辞さぬ気持ちを持っていた。
良人の鎧 主な登場人物
香田孫兵衛・・・浅野幸長の家臣。義兄、菊岡与吉郎があわよくばご主君をさし越えて気に入ろうとれが石田三成に贈る下心で育てていた犬を斬り、兄与吉郎も斬ってしまい出奔する。
屋代・・・孫兵衛の妻。良人が戦に間に合わなかったので・・
菊岡与吉郎・・・浅野幸長の家臣、石田三成に取り入るため、贈る犬を育てている。孫兵衛に斬られる。
菊岡弥五郎・・・浅野幸長の家臣。与吉郎の弟。
平林大膳・・・孫兵衛の知人。
和泉兵庫介・・・孫兵衛の知人。
良人の鎧 覚え書き
権門(けんもん)・・・官位が高く、権力や勢力のある家。
武弁者(ぶべんしゃ)・・・武士、武官。
疎隔(そかく)・・・疎くなってへだたりができること。
遠侍(とおさぶらい)・・・武家の屋敷の侍詰め所。
霜雪(そうせつ)・・・年を取って白くなった髪の毛や髭の事。
安閑(あんかん)・・・のんびりと静かな様子。
第(だい)・・・立派な屋敷、家。
進捗(しんちょく)・・・物事がはかどること。
朋輩(ほうばい)・・・同じ先生に師事したり、同じ主人に仕えている仲間。
敢然(かんぜん)・・・困難や危険を伴うことは承知しながら思い切って行う様子。
艶書 山本周五郎
【朗読】艶書 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「艶書」(昭和29年/小説倶楽部)です。岸島出三郎は、部屋住みの三男で21歳、幼い頃からおとなしくのんびりした性分だった。隣り屋敷の新村の末娘七重とは幼なじみで、二人ともほとんど口をきかなくともお互いの気持ちがよくわかり、手まねや身ぶりや、簡単な目くばせなどで充分に用を便じる仲だった。その日は宝暦二年の三月二日で、出三郎は道場の師範から念流の折紙をもらったが入門したのも長兄の命令だったし剣術はあまり好きではないのでその日をもって退門してしまった。そしてその夜は新村家の宵節句に招かれた。雛祭りだから集まるのは女性ばかりだが、その日は九百五十石の老職の息子、笠井忠也も来ていた。彼は性格が派手で調子がよく、新柳町の花街でなかなかの遊び手と呼ばれていた。忠也の座持ちがいいので娘たちはすっかり興に乗って宴は盛り上がった。出三郎は兄に見つからないように先に帰った。部屋に入って脱いだ着物を畳んでいると、袂の中から一通の封じ文が出てきた。読んでみると恋文だった。
艶書 主な登場人物
岸島出三郎・・・部屋住みの三男、ひやめし。幼い頃から地誌伝説の類に興味があり、毎日領内を歩き回っては資料を集めたりしていた。21歳の新村家の宵節句で恋文を袂に入れられるが誰からか分からない。
七重・・・出三郎の幼馴染。十七歳で笠井へ嫁してゆくが・・・
笠井忠也・・・九百五十石の老職の息子。社交上手で花街でもなかなかの遊び人と云われている。
貞高半兵衛・・・定高家の養子。藩政改革を十年前から行っている。
艶書 覚え書き
艶書 山本周五郎
【朗読】「艶書」 山本周五郎 読み手 アリア
こんにちは。癒しの朗読屋アリアです。今回の朗読は、山本周五郎作 「艶書」(昭和29年)です。艶書とは恋文のことです。恋心を書き送る手紙です。この作品は「花匂う」(昭和23年)によく似ています。どちらものんびりした性質で部屋住みの三男なのだけど、好きで始めた自己流の郷土誌集めをきっかけに変わっていく好短編です。
艶書 主な登場人物
岸島出三郎・・・二十一歳、部屋住みの三男。幼い頃からのんびりしたおとなしい性格、剣術は好きでない。毎日領内を歩き回って郷土史の資料を集めている。七重に招かれた宵節句で、艶書を袂に入れられるが誰からのものか分からない。
七重・・・隣家に住む中老の娘。のんびりおとなしい性格。出三郎と幼馴染。隠し子のある忠也と結婚する。
笠井忠也・・・出三郎の友人で、家が裕福、一人息子、男ぶりがよく、花街でも遊び上手と評判。七重を妻にするが隠し子がある。
定高半兵衛・・・出三郎の兄の旧友。三年まえ藩侯の側近にあげられ藩政の改革を計画する。出三郎の郷土史に興味を持ち、協力を頼む。
艶書のあらすじ (※ネタバレを含みます)
出三郎は毎年となり屋敷の宵絶句に招待されていた。末娘の七重とは幼なじみ、二人ともおとなしく無口だが、ちょっとした手まねや身振りでもお互いの気持ちをよくわかりあっていた。宵節句には出三郎のほかにもう一人男の客があった。派手な性格で調子がよく、花街でも遊び手といわれる笠井忠也だった。彼は陽気で拘りのない性分で、その宵節句でも座持ちがよく、娘たちを巧みな遊びぶりで興がらせた。出三郎はそんな彼のことを思うと、羨ましいよりはむしろ悲しい、泣きたい気分になった。先に家に帰り、脱いだ着物をたたんでいると、袂から一通の封じ文が出てきた。開けてみると恋文であった。「誰だろう‥‥。」部屋住みの気の利かない自分に恋する娘があるはずない。これは悪戯かもしれない・・・と思うのであった。
艶書 覚え書き
艶書(えんしょ)・・・恋文のこと。
閑職(かんしょく)・・・仕事の暇な職務。重要でない職務。
壮観(そうかん)・・・規模が大きくてすばらしい眺め。
部屋住み(へやずみ)・・・次男以下で家督を相続できない者。それがまだ分家・独立せず親や兄弟の家に留まっている。
矢立(やたて)・・・携帯用の筆記用具。墨壺についた筒の中に筆を入れ、帯に差し込んだりして持ち歩く。
宵節句(よいぜっく)・・・ひな祭りの前日の晩。
知己(ちき)・・・自分のことをよく理解してくれている人。親友
机辺(きへん)・・・机の辺り。
広汎(こうはん)・・・広く行き渡るさま。力や勢いの及ぶ範囲が広いさま。
林相(りんそう)・・・木の種類や生え方などによる森林の様相。
空閑地(くうかんち)・・・利用されずに放置されている土地。まだ開墾・整地されていない荒れ地。
水利(すいり)・・・田畑のかんがいや、飲用・消化などに水を利用すること。
迂愚(うぐ)・・・物事に疎く愚かなこと。愚鈍なこと。
露悪(ろあく)・・・欠点や悪いところをわざとさらけ出すこと。
相貌(そうぼう)・・・顔かたち。容貌。
黙契(もっけい)・・・無言のうちに合意が成り立つこと。また、その合意。
硬論(こうろん)・・・物事の道理を解き明かし論じること。
呻吟(うめき)・・・苦しんでうめくこと。
芋粥 山本周五郎
【朗読】芋粥 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は山本周五郎作「芋粥」(昭和18年)です。(一人ならじ/新潮文庫)
芋粥 主な登場人物
十時隼人・・・年は三十二三、
七重・・・早朝の稽古のあと慎ましやかな微笑で芋粥の接待をし、その場に明るい楽しい色どりを添える隼人の妻。賃仕事にも励む。
鈴木惣兵衛・・・三河のくに岡崎藩の老職。隼人に好感を持つ。隼人を機会をみて世に出すべきと考えている。
梶井図書介・・・岡崎藩、新陰流の師範。
芋粥のあらすじ (※ネタバレを含みます)
承応二年五月はじめのある日、一人の浪人者が岡崎藩の老職・鈴木惣兵衛のの元へ面会を求めてきた。彼の名は十時隼人。五十日前に城下に妻と二人で来て一刀流の町道場を開きたいという。岡崎藩には、梶井図書介という新蔭流の師範が稽古をつけているが手が足りない。ちょうど兵法家を探していたところだった。
芋粥 覚え書き
煩忙(はんぼう)・・・仕事が多くて忙しいこと。またそのさま。
主取り(しゅうどり)・・・新たに主人に仕えること。武士などが主君に召し抱えられること。
凛烈(りんれつ)・・・寒気のきびしいさま。
短袴(たんこ)・・・丈の短い袴。
一途不退転(いっとふたいてん)・・・他を考えず、一つのことに打ち込む。信念を持ち決してあきらめないこと。
花匂う 山本周五郎
【朗読】花匂う 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです、今回は、山本周五郎作「花匂う」です。この作品は昭和23年面白世界別冊に掲載されました。武家の三男の部屋住み瀬沼直弥は、部屋住みで時間があるので弁当持ちで出かけて領内全部の風土資料を集め、土地土地の古老を訪ね、社寺、古跡を探り、林相や気候や作物を調べたりしてそれを克明に記録した。長四畳の板間に棚を作って、集めた資料をそこへ積んでいく。出かけない時は居間の机で気の向くままに整理をした。直弥は三男坊の部屋住だということにもさして悩んだり僻んだりしたためしはない。将来のためにどうしようなどということもなく与えられた平凡な日を従順に暮らしていた。しかし、隣家の幼馴染みの多津と友人の信一郎の婚約が決まった時、突然眠れない夜が始まり、彼は自分が多津を愛していることに気付くのでした。
花匂う 主な登場人物
瀬沼直弥・・・部屋住みの三男、家族に「三男の甚六」と呼ばれている。少年じぶんから伝説や地誌を聞くのが楽しみだった。隣家の多津とは四つ違いで幼い頃はよく遊び相手をさせられた。
矢部信一郎・・・直弥の藩の学問所からの親友。直弥を介して多津を知り結婚する。しかし実は自分の家にいた小間使いとあやまちをして、男の子がある。
庄田多津・・・よく笑う明るい性格。産毛が濃くて腕にも頬にも水蜜桃のように柔らかい毛が生えている。信一郎と結婚する。
竹島半兵衛・・・藩の学問所で五人組といわれた友人の一人。
花匂う 覚え書き
甚六・・・大事にのんびり育てられ、他の兄弟姉妹に比べてぼんやりしているさま。
歌妓(かぎ)・・・酒宴で歌う芸妓。
林相(りんそう)・・・木の種類や生え方などによる森林の様相。
勤倹(きんけん)・・・勤勉でむだな出費を少なくすること。
実直(じっちょく)・・・誠実でかげひなたのないこと。
妾婢(しょうひ)・・・めかけや下女。
逮夜(たいや)・・・葬儀の前夜。
流連(いつづけ)・・・遊興にふけって家に帰ることを忘れていること。
讃仰(さんぎょう)・・・聖人や偉人の徳を仰ぎ尊ぶこと。
幽囚(ゆうしゅう)・・・捕らえられ閉じ込められること。
教唆(きょうさ)・・・事を起こすよう教えそそのかすこと。
経綸(けいりん)・・・国家の秩序をととのえ治めること。
周旋(しゅうせん)・・・交渉などで当事者間に立って世話をすること。
花宵 山本周五郎
【朗読】花宵 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「花宵」です。この作品は昭和17年、少女の友に掲載されました。周五郎作品に繰り返し出て来るテーマ、「おれが」という自分だけ偉くなる気持ちでは、どれほど学問武芸に抜きんでたところで少しも値打ちはない、御国のお役にたつもののふになろうと努力するのが武士の道・・・が描かれています。少女ものだからか、兄弟がそれぞれに母が贔屓にすると考え、自分は継の子ではないかと疑います。当時は兄妹も多かったと思うので、読者の少女は英三郎や清之助に共感したりしたのでしょうか・・・なんて想像してしまいます。
花宵 主な登場人物
森脇英三郎・・・11歳、森脇家の二男。気弱で内にこもる読書の好きな少年。兄ばかり贔屓にする母に対して、自分は継の子ではないかと思っている。
森脇清之助・・・十三歳、森脇家の長男、元気で性質も明るい。