【朗読】牡丹花譜 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「牡丹花譜」です。この作品は昭和13年、婦人倶楽部に掲載されました。主人公の黒上奈々は十八歳、黒上家の牡丹畑に繚乱と咲く牡丹の花にも勝るとて、黒上家の牡丹姫と呼ばれています。幼い頃から武張った事が好きで、小太刀や薙刀をよく遣い、馬にかけては男も及ばぬ腕を持っていました。そんな美しい奈々に胸を焦がす従兄の常次郎は、日毎につのっていく胸の想いをどうかして伝えたいと思っていました。しかし奈々の心は固い蕾のように閉じてひらかず、手に掴んだと思うといつかするりと身を躱すのでした。ある日、いつものように常次郎と稽古に励んでいた奈々は、五人の荒武者が白面の青年を取り囲んでいるのを発見し、即座にそこへ駆けつけその青年を助けます。それから奈々は、助けた青年のことが忘れられなくなるのでした。
牡丹花譜 主な登場人物
黒上奈々・・・十八歳、仙台伊達領、岩沼の豪家黒上家の一人娘。早く父母を失い、叔父銕兵衛の後見で育つ。黒曜石のような瞳を持ち「黒上家の牡丹姫」と呼ばれる。
常次郎・・・二十歳、仙台伊達領、郷士城田銕兵衛の次男。奈々とは従兄同志。奈々に恋している。
陸奥守綱村・・・六十余万石の領主。細面で相貌が女のように弱々としていながら、高い額、濃い眉のどこやらに、冒し難い高貴な威の閃く人。五人の荒武者に囲まれているところを奈々に助けられる。
牡丹花譜 覚え書き
絖(ぬめ)・・・生糸を用いて繻子織にして精練した絹織物。生地が薄く滑らかで光沢がある。
草臥れる(くたびれる)・・文中ふりがなより
毟って(むしって)
草仏(くさぼとけ)・・文中ふりがなより
清絹(すずし)・・・織目が荒く軽くて薄い織物のこと。
仰反(あおのけ)・・・あおむいて後ろへ反り返る。
日毎(ひごと)・・・毎日。ひび。
白面(はくめん)・・・色白の顔。
争闘(そうとう)・・・あらそい戦うこと。
お許(おもと)・・・二人称の代名詞。主として女性を親しんでいう語。
連銭葦毛(れんせんあしげ)・・・馬の毛色の名。葦毛に灰色の丸い斑点の混じっているもの。
嫋々(なよなよ)
悄然(しょうぜん)・・・元気がなく、うちしおれているさま。
亭(ちん)・・・休憩したり、雨や日光を避けて涼んだり、景色や季節の移ろいを眺めたりするためのあずまや。
暮靄(ぼあい)・・・夕暮れに立ち込める靄、夕靄。
入輿(にゅうよ)・・・身分の高い人が嫁入りすること。
恩顧(おんこ)・・・情けをかけること。よくめんどうをみること。
苦衷(くちゅう)・・・苦しい心のうち。
承引(しょういん)・・・承知して引き受けること。
気息奄々(きそくえんえん)・・・息が絶え絶えになって、今にも死にそうなさま。
押し拉がれる(おしひしがれる)・・・無力感におそわれる。
崩折れる(くずおれる)・・・衰弱する。崩れるように倒れる。
無量(むりょう)・・・はかることができないほど多い。
長久(ちょうきゅう)・・・長くつづくこと。