【朗読】米の武士道 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「米の武士道」昭和17年、講談雑誌に掲載されました。甲府城の若き郡代、料治新兵衛が赴任してきてから約四年になる。彼はまだ若く、二十五歳になったばかりだったが、果断と明敏な手腕を存分にふるい、たちまち郡内の治績を素晴らしく上げた。しかもその治法がすべて官に薄く、郡民に厚く、第一に農村の繁栄を土台としていたから、郡民たちは彼を名郡代として心から信頼していたのだった。時勢は徳川慶喜が大政を奉還し、天下は御一新のよろこびを迎えたと思う間もなく、鳥羽伏見の戦が起こって慶喜は追捕使を受ける身上となり、諸代諸侯は徳川家のために鉾をとって起つという評判が飛んだ。料治新兵衛はある日、石和の代官所から抜き身の槍を持った足軽十人、大八車二十輌を引いて村々の百姓の倉を開けて持ち米を全てお取り上げに回っていた。