【朗読】義理なさけ 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「義理なさけ」(昭和22年)です。中山良左衛門が内庭から手をはたきながら入っていったとき、しず江という若い小間使いが人目を憚るような身ごなしで廊下を小走りに奥の間のほうへ来るのを見つけた。なんの用があるんだ。奥の間には良左衛門と甲子雄の部屋しかない、そこは小間使いの出入りは常から禁じてある。しかし、しず江は甲子雄の居間へすべるように入っていった。良左衛門は足ばやに広縁へあがり戻って来たしず江の肩をつかみ何をしにきたのか問いただした。しず江は何も云わなかったが、甲子雄の机の上にはおもてに若旦那さまと書かれた封書が置いてあった。良左衛門は封を切った。文言は短かったが内容に驚かされた。
義理なさけ 主な登場人物
中山甲子雄・・・二十四歳。幼いじぶんから素直な子供で、気持ちも明るく性格もきびきびと濁りがなかった。ひと頃は学問に熱中していたが、この数年は武芸に興味をもちだして、中条流の小太刀では家中指おりの名をとっている。佐伯靱負の娘と縁談がととのい、近日うちに結納のとりかわしをかわすところだった。
中山良左衛門・・・甲子雄の父。小田原藩の江戸屋敷年寄役。八百万石の御納戸奉行。
園生・・・二十歳。ひじょうな美貌と抜きんでた才芸とで有名な甲子雄の許嫁者。
しず江・・・中山家の小間使い。三年前、十五歳で小間使いにあがった。眼の大きなふっくらした顔立ちで、笑うときにできる片笑窪が云いようのない可憐な感じだった。甲子雄は彼女を見ることは好きだった。
義理なさけ 覚え書き
謝絶(しゃぜつ)・・・相手の申し入れを断ること。
うろん・・・正体の怪しく疑わしいこと。
宿元(やどもと)・・・泊まっているところ。
詮議(せんぎ)・・・罪人を取り調べること。
淙々(そうそう)・・・水が音をたてて、よどみなく流れるさま。
瀬音(せおと)・・・浅瀬を流れる水の音。
僭上(せんじょう)・・・身分を超えてた出すぎた行動。