【連載朗読】さぶ8 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「さぶ8」です。(八の一~八の六)清七の暴行で三人が大けがをした。清七は大牢へ送るということになりかねなかったが、栄二は清七を大牢へ送るなら自分も一緒に送ってくれと居直った。清七が暴れた時、罰をうけるなら一緒だと男の約束をし、それを信じて清七は掛矢を捨てたのだ。結局、清七と栄二は一緒に三十日の手鎖押籠めという処分になった。ある日、おすえが訪ねて来た。おすえはさぶから手紙がきて、栄二が寄場にいることを知った。さぶは行方がわからなかった栄二を探し続け、ついには浅草の香和堂で古金襴の切れのいきさつを知る。さぶは「氷に火がついても栄さんがそんなことをする筈がない。」と栄二を信じているし、おすえもまた栄二を信じていた。しかし栄二の頭には、自分をひどい目に合わせた者たちへの復讐しかなかった。おすえは、栄二がどんな辛いくやしい思いをしているかわからないが、さぶがどんな気持ちで栄二を探していたか、さぶの手紙を読んだ自分がどんな気持ちだったか、お互いに分かり合おうとすればこそ、友達があり夫婦があるんじゃないかと説得するが、栄二は黙って行ってしまう。三十日の押し込めが終わり、栄二と清七を祝うため、もっこ部屋ではみんなが手銭を出して、酒を買い、ささやかな膳でなごやかな時間を過ごす。そしてその夜、大嵐が寄場を襲った。
さぶ8 主な登場人物
清七(こぶ)・・・31歳。上州のどこか貧しい百姓の三男に生まれ、五つか六つの時に岩風呂で見たものから女が恐くなった。しかし、おとよだけは初めて会ったときから恐くなかった。寄場では手に負えない乱暴者といわれるが、極めて大人しい小心者で愚かしいほど善良な男。十五の年に故郷を出奔し、土方や人足をしながら二十二歳で江戸に出た。江戸でも土方や人足をしたが、四年前に三人を相手に喧嘩してけがをさせ、役人の手に渡された。しかし彼には請人がなく、故郷のことが云えないため無宿人として五年の期限付きで寄場へ送られた。
さぶ8 覚え書き
強硬(きょうこう)・・・自分の立場、主張を強い態度であくまでも押し通そうとすること。
大牢(たいろう)・・・江戸時代、江戸小伝馬町の牢で、戸籍のある庶民の犯罪者を入れた牢。
否応(いやおう)・・・不承知と承知。諾と否。
定番(じょうばん)・・・常に番をすること。
上方(かみがた)・・・江戸時代に京都や大阪をはじめとする畿内を呼んだ名称。
御破算(ごはさん)・・・今までの行きがかりを一切捨てて、元の何もない状態に戻すこと。
法度(はっと)・・・禁じられていること。
小股をすくう・・・人の油断やすきを利用して自分の利をはかる。
十両がとこ・・・十両くらい。
大恩(だいおん)・・・大きな恩、深い恩。
われ勝ち(われがち)・・・人よりも優位に立ち、先行しようとするさま。
おだてとともれえ籠にゃあ乗らねえぞ・・・おだてと、とむらい籠には乗らないぞ。