【連載朗読】さぶ5 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「さぶ5」です。(五の一~五の五)栄二には綿文の主人の金襴の切れが、なぜ自分の道具袋に入っていたかわからない、覚えがないし、何かわけがあるに相違ないと主人に確かめに綿文へいくが、店に因縁をつけにきた者として火消の頭と若い者二人に雪の積もった道へひきずりだされ、二人がかりでぶん殴り、踏んだり蹴ったりされた。次には番小屋で岡っ引きと子分に十手でさんざんに打ち据えられ、足蹴にされ、番小屋の隅に転がされた。そこへ町廻り与力の青木功之進、同心の安井友右衛門、下役の岡村次兵衛の三人が見廻りの途中に立ち寄った。青木は栄二に事情を聞くが、復讐しか考えられない栄二は何も答えない。やむを得ず、青木は栄二を北町奉行所に連れていく。栄二は奉行所の仮牢に七日入れられ、又左衛門は自分で吟味をし、いろいろ親切にふるまう。しかし栄二の態度は変わらなかった。功之進は綿文の方を調べたが、「ただどなり込んで狼藉をされた」というだけで、栄二の素性や身許について何も話さなかった。栄二のこれまでのしらべでは、ほかに余罪はないようだから、本来ならこのまま召放しにするところだが、住居も請人も申立てず、職の有無も云わぬ以上、無宿人の処分はまぬかれない。栄二は石川島の人足寄場に送られることとなった。
さぶ5 主な登場人物
青木功之進・・・町廻り与力二十七か八、痩せ型で背丈が高く、細面の浅黒い顔は際立って目鼻がはっきりしていた。いかにも自制心と意思の強さを示しているような顔つき。
安井友右衛門(同心 ) 岡村次兵衛(下役 ) 青木又左衛門(北の奉行所・上席与力 功之進の一族)
岡安喜兵衛・・・役所詰元締役。
松田権蔵(赤鬼)・・・寄場差配。五十ばかりの雄牛のような躰つきで肩に肉が瘤のように盛り上がり、赤黒い顔に目と口ばかり大きく、鋸の目を立てる時のような 耳障りな声をしている。
小島良二郎・・・人見張役。四十四、五歳。やさ男で着物の衿を首をしめるほどひき合わせ、あまったるい声で何かをなでるような話し方をする。
(もっこ部屋)
伝七・倉太・才次(小頭)
金太・・・博奕でしょっぴかれ石川島へ送られた。
次郎吉・・・栄二がどこかで会ったことがあると思う。
与平・・・女房を殺しそこなって石川島へ送られた。
さぶ5 覚え書き
通用金(つうようきん)・・・世間に通用している貨幣。
内済(ないさい)・・・表沙汰にしないで内々で事を済ませること。
吟味(ぎんみ)・・・罪状を調べただすこと。
激発(げきはつ)・・・はげしい勢いで起こること。激しく奮い立つこと。
牢問い(ろうどい)・・・江戸時代の拷問のうち、むち打ち、石抱き、海老責の三つ。
劈く(つんざく)・・・勢いよく突き破る。
狼藉(ろうぜき)・・・無法な荒々しいふるまい。乱暴な行い。
無宿人(むしゅくにん)・・・江戸時代、百姓、町人が、駆け落ち・勘当などによって人別帳から名前を外された人。
無頼(ぶらい)・・・正業に就かず、無法な行いをすること。
仁恵(じんけい)・・・思いやりの心と恵。