【連載朗読】さぶ10 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「さぶ10」です。七月の大暴風の後から行われていた南の護岸工事は九月下旬には終わりかけ、寄場の中にはそれまでにない、なごやかで親密な気風がうまれたようだった。しかし栄二はまた口数が少なくなり、いつもできるだけ独りでいようとした。おすえも休みごとに訪ねてきたが栄二は会わなかった。栄二は金持ちが金の力で、目明しがお上の威光をかさに、何の咎もない自分を罪人にし、半殺しのめにあわせたことを繰り返し反芻し苦しんでいた。十月になり、護岸修理があと一日か二日で終わるところまできていた。石垣の外に沿って杉丸太の杭を打ち込む工事で、その日は七人しか働いていなかった。栄二は地盤に穴を掘る係だったが、あと五本だという、その四本目を掘っているとき、突然石垣が崩れて栄二をその下に押しつぶしたのだった。
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さぶ10 主な登場人物
小頭の伝七・・・五十五六歳、見たところは七十の年寄り。痩せて皺たるんで、栄二が石に押しつぶされてもとうてい力を貸すことはできない。
さんてつ先生(滝本直道)・・・目つきのするどい中年の痩せた医者。ほとんど無報酬で寄場の世話をする。
中島坦庵・・・山城樫の外科医。南蛮流とオランダ流の医学に通じ、外科では当代五指のうちにあげられる名医。栄二の足の手術を行う。
さぶ10 覚え書き