【朗読】日本婦道記 小指 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「日本婦道記」より小指です。この作品は昭和21年講談雑誌に掲載されました。山瀬平三郎は極めておっとりとした気質で、川越藩秋元家の小姓組で書物番を勤めていました。平三郎には放心癖があって、(平三郎は十八歳で書物番を命ぜられてから始まったと信じているが)失敗というほどではないが時々顔を赤くする場合があります。袴の前後ろが分からなくなったり、出仕の支度で紙入れの代わりに旅を懐中したり、扇子を忘れて文鎮をもっていったりする例がいくらもありました。父の新五兵衛はそれをおおらかに笑っていましたが、母のなお女には心痛の種で、自分の愛していた小間使の八重を彼に附けることに定めたのでした。それから八重は平三郎の着替えの世話や、持ち物の心配や、寝床の面倒など身の回りのすべての世話をしました。平三郎は父の友人に勧められた縁談を承知した後で、出仕の支度で八重を見た時、自分の本当の気持ちに気が付くのでした。
日本婦道記 小指 主な登場人物
山瀬平三郎・・・小姓組書物番。父の友人からの縁談を承知したあとで八重に対する自分の気持ちに気付き、八重に結婚を申し込む。
八重・・・平三郎の母なお女に愛され、放心癖のある平三郎の身の回りの世話を五年間している。
山瀬新五兵衛・・・藩の中老。平三郎の父。挙措の静かな温厚一方の人。かつて怒ったり荒い声を立てたことはない。
なお女・・・平三郎の母。
日本婦道記 小指 覚え書き
式日(しきじつ)・・・儀式を執り行う日。
白扇(はくせん)・・・模様などのない白地のままの扇。
嬌態(きょうたい)・・・女性の媚を含んだなまめかしいふるまいや態度。
常着(つねぎ)・・・家にいて日常着る服。
挙措(きょそ)・・・立ち振る舞い。
放心(ほうしん)・・・心を奪われたりして魂が抜けたようにぼんやりすること。
心痛(しんつう)・・・心配して深く思い苦しむこと。
いなや・・・承知か不承知かということ。
病歿(びょうぼつ)
朴訥(ぼくとつ)・・・かざりけがなく口数がすくないこと。
柔和(にゅうわ)・・・性質や態度がものやわらかであること。