【朗読】鼓くらべ 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「鼓くらべ」(昭和16年)です。少女もので、芸の道に打ち込む十五歳の娘の姿が描かれています。昭和53年から61年まで中学の国語の教科書に掲載されていたそうです。
鼓くらべ 主な登場人物
お留伊・・・十五歳。町一番の絹問屋の娘。幼い頃から鼓にすぐれた腕を持っている。いつも離れ屋で稽古に打ち込んでいる。
老人・・・福井の生れだが、長いこと他国を流れ歩いた絵師。お留伊の鼓の音に誘われて庭前でずっとその音を聴いている。
お宇多・・・十六歳。海産物問屋「能登屋」の娘。お留伊にライバル心を持つ。
観世市之丞・・・或年の正月、領主前田候の御前で鼓くらべをし、打ち込む気合だけで相手の打つ鼓の皮を割る。それ以来、行方知れずとなる。
鼓くらべ あらすじ(※ネタバレを含みます)
お留伊は、庭先で鼓の稽古を聴く旅絵師の老人と色々と話し合うようになった。加賀国は能楽が盛んで、どんな地方に行っても謡の声や笛、鼓の音を聞くことができた。其の日ぐらしの貧しい階級でも、多少の嗜みを持たぬものはないというくらいであった。新年の嘉例で催される城中での「鼓くらべ」でお城に上るお留伊に向かって老人は、「すべて芸術は人の心をたのしませ、清くし、高めるために役立つべきもので、そのために誰かを負かそうとしたり、人を押しのけて自分だけの欲を満足させたりする道具にすべきではない。鼓を打つにも、絵を描くにも、清浄な温かい心がない限りなんの値打ちもない。人と優劣を争うことなどはおやめなさいまし、音楽はもっと美しいものでございます。人の世で最も美しいものでございます。」と話し聞かせた。いよいよ「鼓くらべ」の本番を迎えたお留伊は・・・
鼓くらべ 覚え書き
籬(まがき)・・・家や庭の区画を限るための囲いや仕切り。
鼕々(とうとう)・・・鼓や太鼓の鳴り響くさま。
結地(ゆいち)地頭(じがしら)・・・鼓の用語。
温雅(おんが)・・・穏やかで上品なこと。しとやかなこと。
嘉例(かれい)・・・めでたい先例。吉例。
根雪(ねゆき)・・・解けないうちに雪がさらに降り積もって、雪解けの時期まで残る下積みの雪。
木賃宿(きちんやど)・・・粗末な安宿。
総身(そうしん)・・・からだ全体。全身。
楽殿(がくでん)・・・音楽や舞踊を上演する建物。
躍起(やっき)・・・あせってむきになること。
辛酸(しんさん)・・・つらい目や苦しい思い。