【朗読】非常の剣 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「非常の剣」です。周五郎先生33歳、昭和11年の作品です。この頃から「キング」「講談雑誌」「婦人倶楽部」「講談倶楽部」「少年倶楽部」などに次々と作品を発表されています。この年に発表された作品は他に、「半化け又平」「入婿十万両」「暗がりの乙松」「無頼は討たず」「彦四郎実記」などがあります。個人的には昭和10年代の作品もとても好きです。
杉田弦八郎は、三日前に御達しが下り洲の鼻の番所頭に任ぜられた。役料も百石増しとなり、これを機会に何とか昇進の途を開いてやろうと思っている。さっそく叔父の根上棋兵衛に報告にいき、棋兵衛の娘で許嫁者の弓江との結婚の許しをもらいに行った。その夜は井染橋の満須屋で、同役たちが祝宴を催してくれることとなっていた。その祝宴の席で弦八郎は、旧い友達、建部金吾に会う。彼は酒のため出世が遅れて今では洲の鼻の番所で記録方を勤めていた。彼は番所勤めが二年になるので内情も色々と知っているが、どことなく歯に衣を着せた口ぶりだった。そしてふいに盃を置くと番所に泊まる出役というので先に帰ってしまった。しばらくすると若い番士が「密貿易船を抑えた。」と云って入ってきた。就任早々の事件、弦八郎は酔いも一気に醒め、張り切った気持ちで酒楼を出たのであった。
非常の剣 主な登場人物
杉田弦八郎・・・島原藩洲の鼻の新しく番所頭に任ぜられる。
根上棋兵衛・・・島原藩馬廻り五百石、弦八郎の叔父。武辺一徹の頑固親爺。関ケ原、大坂両陣に目覚ましい手柄をたて、主君松倉右京太夫から伝家の鎧一領を賜った。今は全くの閑職。ことわざを一言言う度に持ち出すので「諺の棋兵衛殿」と呼ばれている。
弓江・・・棋兵衛の娘、弦八郎の許嫁者。
建部金吾・・・弦八郎の旧い友人、番所の記録方、
野村源兵衛・・・目附頭
笹目元右衛門・・・目附役番所総取締方、
生田九之進・・・目附役番所総取締方次席。
楢山源七・・・目附役番所総取締方
非常の剣 覚え書き
ぬけに・・・密貿易
四挺櫓(しちょうろ)・・・ちょうろは、四本の櫓を使って操る船、江戸時代に一番速かったのは八挺櫓だそうです。
曲汀(きょくてい)・・・曲がりくねった入江。
多島海(たとうかい)・・・多数の島が点在する海域。
暗躍(あんやく)・・・人に知られないように密かに策動すること。
兇徒(きょうと)・・・殺人や謀反などの悪行を働くもの。
踪跡(そうせき)・・・事が行われた後。
嫣然(えんぜん)・・・美人がにっこり笑うさま。
沸然(ふつぜん)・・・自然に湧き上がるさま。
吉左右(きっそう)・・・よい知らせ。
悄然(しょうぜん)・・・元気がなくうちしおれているさま。
豁然(かつぜん)・・・視野が大きく開けるさま。
盃盤(はいばん)・・・杯と皿鉢。
浮かれ女(うかれめ)・・・遊女。
禍根(かこん)・・・わざわいの起こるもとや原因。