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あらくれ武道 山本周五郎

【朗読】あらくれ武道 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「あらくれ武道」です。この作品は、昭和16年講談雑誌に掲載されました。小谷城きっての勇士、宗近新兵衛は相貌非凡にして千人の群の中にあっても紛れのない人品骨柄だったが、一つだけ欠点があった。それは彼の鼻が大きくて左へ捻じれていたことである。その鼻はひどく人の注意を引き、どんなに勘のにぶい者でもあっと云うくらいだった。じろじろ見ては失礼と思うから急いで目をそらすものの、誰の顔にも「みごとな物だな」という表情があらわれる。これが新兵衛には我慢がならないのだった。待ても暫しもなく二十人力が容赦なく暴れ出す。そんな新兵衛がものおもいに取りつかれてしまう。

あらくれ武道 主な登場人物

宗近新兵衛・・・二十六歳。浅井長政の家臣で小谷城の勇士と云われる。お市のかたの侍女・浪江を見初めた日からものおもいにふける。その思いを長政に打ち明ける。

浅井長政・・・小谷城主、新兵衛を家臣としてひじょうに愛している。

お市・・・長政の妻。

織田信長

浪江・・・お市の侍女。新兵衛の求婚は断るが、新兵衛にさらわれる。

 

あんちゃん 山本周五郎

【朗読】あんちゃん 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「あんちゃん」です。この作品は、昭和31年小説新潮に掲載されました。妹おさよに不倫な感情を持つ竹二郎が、その感情を抑えるために他の娘たちに気持ちを移そうとしたり、廓や岡場所へ行ったりするがどうあがいても徒労に終わる。妹に対する感情はますます強く激しくなるばかりだった。そしてある暑い日の夜・・夜中に手洗いに行った竹二郎は、なにげなく階下に寝る妹を見た時、暗くした行燈の灯りに浮かぶ掛布団をはぎ、寝巻をはだけて胸も脚もほとんど裸になったまま眠っている姿を見て竹二郎は自分が分からなくなる。それ以来、彼は自分を「おれは人間ではないけだものだ」と自分を責め続ける。

あんちゃん 主な登場人物

竹二郎・・・わげもの職人、妹に不倫な感情を持つ自分に嫌気がさし、ぐれていく。

おさよ・・・竹二郎の妹。ぐれた兄を心配している。そして病気の父の世話をしている。

民三・・・盗人。竹二郎と出会ってから八日間、二人でずっと飲み歩く。自分の秘密を竹二郎に語り、竹二郎の秘密を知る。

あんちゃん 覚え書き

駒下駄(こまげた)・・・台も歯も一つの材をくっつけて作った下駄。

中売(なかうり)・・・劇場や客席の間をまわって飲食物を売り歩く人。

出方(でかた)・・・客を座席に案内したり飲食物の世話をする人。

猫板(ねこいた)・・・長火鉢の端の引き出し部分に乗せる板。

湯女(ゆな)・・・温泉宿で客の接待をした女。

 

 

 

 

 

 

いさましい話 山本周五郎

【朗読】いさましい話 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「いさましい話」です。この作品は、昭和25年講談倶楽部 春の臨時増刊号に掲載されました。武家もの、人情ものです。藩政改革に情熱を燃やす笈川玄一郎は、大幅な緊縮財政のために江戸から国許へ下ります。しかし国許の人間は皆、彼をよそ者扱いし反抗的な態度を取ります。しかし作治奉行の老人、津田庄左衛門だけはいつも彼の心に寄り添い、いい相談相手となってくれました。やがて玄一郎は罠をしかけられ、あらあぬ疑いをかけられるこになります。そして・・・玄一郎の人柄の良さと感動的な最後がよかったです。是非最後までご視聴ください!

いさましい話 主な登場人物

笈川玄一郎・・・勘定奉行として江戸から国許へ下向する。

松尾・・・国許で娶った玄一郎の妻。

津田庄左衛門・・・作治奉行。玄一郎のよき相談相手。

和泉図書之助・・・城代家老

萩原準之助・・・江戸詰めの玄一郎の友人。

井部又四郎・・・江戸詰めの玄一郎の友人。

八木隼人・・・江戸詰めの玄一郎の友人。

益山郁之助・・・勘定奉行書記役

三次軍兵衛・・・勘定奉行書記役

上原十馬・・・勘定奉行収納役

伊賀守敦信・・・藩主

 

いしが奢る 山本周五郎 

いしが奢る 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「いしが奢る」です。この作品は1952年昭和27年に雑誌に掲載された短編小説です。「いしが奢る」の主人公いしは、周五郎先生の描かれる皆に愛されるかわいい女性です。外見は、十七か八で面長のすっきりした顔立ちで、背丈が高く、胸も腰もまだ少年のように細かったとあります。性分は、いしは明るくさっぱりした、そして思い遣りの深く、知っている者みんなに愛されていた、むずかしい客、酒癖の悪い客などは、いしがさばくものにきまっていた。酒ものませればかなり飲むし、少し酔うと笑い上戸になって「ようし、いしが奢る。」と云うのが口癖であった。とこれだけ読んでも魅力たっぷりですね。

いしが奢る 主な登場人物

いし・・・廻船と問屋、望湖庵を経営する青木重右衛門の養女で仲居をしている。外島又兵衛と末の約束を交わしている。

本信保馬・・・江戸邸の次席家老の子で俊才で美男、学問も群を抜き、柳生道場では三傑の一という誂えたような評判である。国許へ戻ったの            は勘定吟味役としてではないかと噂になる。

外島又兵衛・・・外島家の婿養子。おいしの情人気どりで小遣いをせびる、金と女にだらしのない男。

仲田千之助・堀勘兵衛・・・保馬の査察の手伝いに来た供。

八幡屋万助(海産物、橋立楼)・青木重右衛門(廻船、問屋、望湖庵)・島屋真兵衛(米穀商、掬水亭)・・・藩の御用商人で各自の業で独占    株を許されていた。藩に対する貸金も巨額だった。

能登屋伊平、角屋仁右衛門、作間忠太夫、渡島屋六兵衛・・・新しい勢力で、独占株を開放させるため、江戸の重臣にはたらきかけていた。

いしが奢るのあらすじ(※ネタバレ含みます)

六月中旬のある日、江戸から本信保馬が到着した時、旅装を解くより早く、藩の用足しや商人、各役所からの使者が進物や金を持って挨拶にきた。それは、彼が勘定吟味役としてきたという噂があったからである。藩の財政が極度にゆき詰まって、政策の大きな転換が予想されていたから、それぞれの挨拶も何らかの意味を含むものだった。明くる日、保馬は登城して重臣たちへ挨拶にまわった。ここでも城代家老が話の合間にそれとなくかまをかけるようなことを云った。保馬は軽く見合いに来たと答えた。しかし人々の頭には「勘定吟味役」がひっかかっていた。

城代家老の招待に続いて重職の人々が保馬を招待した。ひとわたり招待が済むと保馬は遊びに出始めた。初めて天橋立に行ったとき、掬水亭という料亭で休んだ。そこには水の上へ張り出した床があった。保馬は床の端のところに屈んでぼんやりと下の水を眺めていた。そこに娘が驚かすつもりで忍び寄ってきた。「わっ」と驚かすつもりが力が入りすぎて、保馬といしは水の中へ落ちてしまう。

かん太
保馬は相手が誰であろうとも招かれればゆくし、進物を出されれば黙って受け取った。(査察のため)
アリア
保馬と供の仲田と堀は、八幡屋以下三人の御用商人の実態調査をしていた。取引状態、年間の利潤、資産、保馬への進物、接待費用なども調べた。(能登屋ら四人の助力もあった。)
かん太
外島又兵衛とおいしの縁組で、八幡屋、島屋、青木の三人連合は、外島を勘定奉行か筆頭年寄に据えて自分たちの位置を確保しようとしていたんだ。
アリア
堀勘兵衛はおいしに注意しろと云う。外島はおいしに保馬の役目の本当の目的を探らせていると。初めのうち外島はしつこく保馬に近づこうとしたが、保馬が遊びだすと姿を見せなくなり、代わっていしとの交渉がはじまった。つまり彼女に肩代わりしたと考えられた。しかし保馬はそう考えたくなかった。
続く・・・

いしが奢る 覚え書き

俊才(しゅんさい)・・・並外れて優れた才能。またその持ち主。

不即不離(ふそくふり)・・・二つのものが強く結びつきもせず、また離れもしない関係にあること。つかずはなれず。

不拘束(ふこうそく)・・・なんの束縛も受けず、自由にふるまうこと。

帷子(かたびら)・・・裏をつけないひとえもの。夏に着るひとえの着物。

用達(ようたし)・・・官庁・会社などに商品を納めること。またそれをしている商人。

情誼(じょうぎ)・・・人とつきあう上での人情や誠意。

籠絡(ろうらく)・・・巧みに手なずけて、自分の思いどおりに操ること。

大身(たいしん)・・・身分がたかいこと。

衆人(しゅうじん)・・・大勢の人。

僭上(せんじょう)・・・身分を超えて出過ぎた行いをすること。また、そのさま。

斜交い(はすかい)・・・ななめ。また、ななめに交わること。

嬌羞(きょうしゅう)・・・女性のなまめかしい恥じらい。

賄賂(まいない)・・・自分の利益になるよう取り計らってもらうなど、不正な目的で送る金品。

縞の財布が空になる・・・京都の民謡・宮津節の歌詞。各地の船乗りや商人たちが宮津の遊郭で散財した結果、「二度と行こまい丹後の宮津、縞の財布が空になる」と泣き言を言って旅立ったという宮津節の歌詞。(世界の民謡・童謡より引用

辣腕(らつわん)・・・物事を躊躇することなく的確に処理する能力のあること。また、そのさま。

浮沈(ふちん)・・・浮いたり沈んだりすること。うきしずみ。

糊塗(こと)・・・一時しのぎにごまかすこと。

哀訴(あいそ)・・・同情を引くように、強く嘆き訴えること。

籠居(ろうきょ)・・・家に閉じこもって外に出ないこと。

敏速(びんそく)・・・反応・行動のすばやいこと。また、そのさま。

督促(とくそく)・・・約束の履行や物事の実行を促すこと。

 

うぐいす 山本周五郎

【朗読】うぐいす 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、昭和23年45歳の作品「うぐいす」です。復員兵の折岩昌三は、故郷の市は廃墟となり自分の家の焼け跡さえ分からずじまいで、そのまま上京して五十日余りになる。何もかも失い、上野の地下道に寝るようになってから人に施しを受けたこともあったが、それをやめて、もう水の他には口にしない日が七日も続いている。そんな彼が突然大会社の御曹司だと聞かされ、そのまま大邸宅に住むことになり・・・・

うぐいす 主な登場人物

折岩昌三・・・戦争から帰ると全てを失っていて生きる気力もなくなり、夜は上野の地下道で横になりながら水しか口にしなくなっていた。

老人・・・上野の地下道で知り合い、昌三に興味を持ち、五千円を渡して何かやってみないかと勧める。

お梅・・・公園で昌三を見つけて声をかける折岩家のばあや

村田七重子・・・昌三の秘書。まだ働き始めたばかりで、静養している昌三のもとへ毎日通ってくる。

佐野啓一・・・会社の役員達のやり方に異議を唱えて昌三に直訴する。

 

 

おしゃべり物語 山本周五郎

【朗読】おしゃべり物語 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「おしゃべり物語」です。この作品は昭和23年、45歳の作品で講談雑誌に掲載されました。武家もの滑稽ものです。母親の夢に出てきた摩利支天に「だちどころ」が生まれると云われた宗兵衛の成長物語です!少し長いですが最後までどうぞお聴きください。

おしゃべり物語 主な登場人物

宗兵衛・・・幼名は小三郎。幼少期から非常な饒舌で悪戯好きで家族や周囲の人々に悪たれと呼ばれる。何度も養子に出されるが、いずれも不縁となり戻ってくる。

いち女・・・宗兵衛の母親。妊娠するたびに夢知らせを受ける。宗兵衛を身籠った時には、摩利支天に「だちどころ」を産むと言われる。

孫太夫・・・宗兵衛の父。藩の中老千五百石の家柄。

里見平左衛門・・・いち女の実兄。非常に饒舌で宗兵衛を養子にする。しかし宗兵衛の饒舌に苦労する。

都留・・・溝口主水の娘。宗兵衛の実家の隣に住む幼馴染。

成沢兵馬・・・小姓組の先輩。年は宗兵衛より二つ年上の19歳。

島田右近・・・宗兵衛より四つ年上。家中随一の美男で、才知優れたうえに謙譲で、主君但馬守の寵臣と言われている。家はずっと足軽組頭。宗兵衛を兄弟分と言って面倒を見る。

但馬守治成・・・書物を読むこと以外に興味がに性格で、非常に癪が強い。

おしゃべり物語 あらすじ

宗兵衛の母親が、夢で摩利支天と問答をして「だちどころ」を産むと言って授かった宗兵衛(小三郎)が、幼い時から無類のおしゃべりと悪戯で悪たれとして育ち、その饒舌さがただの子供の特徴にとどまらず、周囲の大人たちも巻き込み、時には困らせ、怒らせ、感心させる様子がとても面白く描かれています。三度も養子縁組に失敗し、母の兄、里見平左衛門へ養子に行き、あまりのおしゃべりに頭を抱えた平左衛門が、宗兵衛を江戸詰のお役に就かせます。江戸詰では得意のおしゃべりで殿様の心を開き、派閥争いもおさめて活躍します。

 

おたは嫌いだ 山本周五郎 

【朗読】おたは嫌いだ 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「おたは嫌いだ」(昭和30年)です。(月の松山/新潮文庫)津由木門太が迷いながらも本当に愛する人を見つける話です。主人公・門太の心の中や一人ごとが多く書かれています。「おた」は双葉のことです。門太と双葉は幼い頃から仲がよく、まるで兄弟のように親しかった。双葉は自分のことを「おた」と呼び、門太のことを「もんたん」と呼んだ。

おたは嫌いだ 主な登場人物

津由木 門太・・・二十六歳独身。馬廻りだが使番を命ぜられて普請小屋に詰めている。両親を失ってから、姉と叔母の小萩に育てられた。双葉(おた)と幼なじみ。

すみ江・・・もんたの姉。十四歳の頃、主殿に恋し失恋した。それ以来、奥女中に上がり、現在では中老となる。

税所主殿・・・年寄肝入。御印筐の出し入れの責任者。門太にすみ江の気持ちをきいてほしいと求婚を頼む。

双葉(おた)・・・二十二歳。勘定奉行の娘。門太の幼なじみ。十七歳で奥勤めにあがり、今はすみ江の下で奥方づきの部屋持ちになっている。

お銀・・・深川の料理茶屋の娘。門太が結婚を考える娘。

三浦信吉郎・・・門太の友達。のんべえだが酔うとべらぼうに強い。

おたは嫌いだ あらすじ(※ネタバレを含みます)

門太とおた(双葉)は四つ違いであった。門太が二十一になったとき、姉のすみ江が「双葉さんを嫁にもらう気はないか」と門太にきいた。門太は笑って「おたをですか」とききかえした。おたとしては嫌いじゃありません。しかし妻としては好きになれそうもないんです。小さいときからあまり親しくしてきたので、その、つまり他人のような気がしないんです。私にとっておたは妹みたようなものです。おたと結婚することは、私には妹と結婚するのと同じことなんです。それから五年経つ・・・双葉は十七歳で奥勤めにあがあり、現在では姉の下で奥方づきの部屋持になっている。姉は口には出さないが、二人の結婚をあきらめていないらしい・・

おたは嫌いだ 覚え書き

御印筐(ごいんばこ)・・・藩主対馬守の印章を入れた筐。月に一度ずつ、工事担当の大名三家から呈出する書類へ総奉行として対馬守が照合検印するもの。そのたびに宝庫から出し、すむとすぐに宝庫へ戻す。

部屋子(へやご)・・・江戸時代、大名屋敷で御殿女中に召し使われた下女。

かどわかす・・・だまして、女・子どもを連れ去る、誘拐する。

禁足(きんそく)・・・罰として外出を禁止すること。

無学文盲(むがくもんもう)・・・学問・知識がなく、文字が読めないこと。また、そのさまや、その人。

手合(てあい)・・・連中、やつら。やや軽蔑していう。

番太(ばんた)・・・江戸時代、町や村に雇われ、夜警や火事、水門などの番に当たった者。非人身分の者が多かった。

無腰(むごし)・・・腰に刀を差していないこと。丸腰。

風態(ふうてい)・・・身分や職業をうかがわせるような外見上のようす。身なり。

奇天烈(きてれつ)・・・非常に風変りであるさま。

無頼漢(ぶらいかん)・・・無頼な男。ならずもの。ごろつき。

のら息子・・・怠け者で遊び好きの息子。道楽息子。

練達者(れんたつしゃ)・・・熟練して深く通じているもの。

露顕(ろけん)・・・秘密や悪事など隠していたことが表に現れること。

壮観(そうかん)・・・規模が大きくてすばらしい眺め。

賜暇(しか)・・・願い出て休暇を許可されること。また、その休暇。

竜吐水(りゅうどすい)・・・江戸時代から明治時代にかけて用いられた消化道具。

呪詛(じゅそ)・・・神仏や悪霊などに祈願して、相手に災いが及ぶようにすること。

人心地(ひとごこち)・・・生きた心地。また、ほっとくつろいだ感じ。

業病(ごうびょう)・・・前世の悪業の報いでかかるとされた、治りにくい病。難病。

褒貶(ほうへん)・・・ほめることとけなすこと。事のよしあしをいう。

 

 

 

 

おたふく物語 妹の縁談 山本周五郎 

【朗読】おたふく物語 妹の縁談 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「妹の縁談」(昭和25年)です。主人公のおしずは周五郎の妻がモデルだそうです。「妹の縁談」「湯治」「おたふく」の三つの短編を連作にしたので、作品内容に少しずつ矛盾するところがあって面白いです。

おたふく物語 妹の縁談 主な登場人物

おしず・・・三十二歳 十九で勘志津という名を貰った長唄の師匠。かなりな美貌だが、自分のことを「おたふくでとんま」と云う。

おたか・・・二十六歳 おしずの妹。神田今川橋の仕立て屋へ通いで六七年も勤めている。

絹女・・・薬研堀に住むおしずとおたかの生華の師匠。陽気な話好きで、かなりな頓狂な話をするおしずと好一対。

栄二・・・おしず・おたかの兄。十八で幕吏に捕らえられ、三年入牢した。家に度々金をせびりに来る。

友吉・・・綿問屋「信濃屋」の息子。おたかを嫁にもらいたいと思っている。

てつ・・・友吉の母親。陽気でさっぱりした性分。絹女の母親と血続き。

貞二郎・・・腕のいい彫金師。おしずが密かに想っているひと。

おたふく物語 妹の縁談 あらすじ(※ネタバレを含みます)

おしずとおたかは二人で両親を養っていた。おしずは長唄の師匠で、おたかは仕立て屋へ通いで勤めていた。

おしずは三年入牢した兄の栄二のためと、自分に気兼ねして嫁にいかないおたかのために奔走します.

 

おたふく物語 妹の縁談 覚え書き

番外(ばんがい)・・・普通のものとかけ離れて違っていること。

孟母(もうぼ)・・・孟子の母。賢母の代表とされる。

君子危うきには近寄らず・・・徳や身分の高い人は、自ら危険を冒すことはしないものだ。慎み深く危険を避けるのが君子だ。

頓狂(とんきょう)・・・だしぬけで調子はずれなこと。あわてて間が抜けていること。

律動(りつどう)・・・規則的にある動きが繰り返されること。

出稽古(でげいこ)・・・先方へ出向いて芸事などを教えること。

泥溝(どぶ)

柳子新論(りゅうししんろん)・・・儒学者・思想家の山県大弐が書いた江戸中期の思想書。幕府を非難するもの。

乳母日傘(おんばひがさ)・・・子どもが過保護に育てられることを云う。

難物(なんぶつ)・・・取り扱いにくい事物。また、扱いにくい人物。

狷介(けんかい)・・・頑固で自分の信じることろを固く守り、他人に心を開こうとしないこと。

 

 

 

 

おたふく物語 湯治 山本周五郎 

【朗読】おたふく物語 湯治 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「おたふく物語 湯治」(昭和26年)です。おたふく物語は「妹の縁談」(昭和25年)「湯治」(昭和26年)「おたふく」(昭和24年)三部作です。何度もTVドラマ化、舞台化される人気作品です。

おたふく物語 湯治 主な登場人物

おしず・・・長唄の師匠。妹と二人で両親の面倒をみてきた。器量よしで明るい性分。妹の結婚に向けて奮闘中。

おたか・・・結婚までに女四人で行く熱海への湯治を楽しみにしている。

栄二・・・妙な浪人者の仲間に入って十八で入牢し、牢を出てもその仲間と縁が切れず、時々金の無心にやってくる乱暴者。

新七・いく・・・父母。父は黙り屋、母も栄二が牢に入ってから外出しなくなる。口下手の無愛想。

信濃屋の夫婦・・・おたかが嫁入りする「信濃屋」の友吉の両親。

薬研堀・・・おしず・おたかの華道の師匠。おたかの仲人。

おたふく物語 湯治  あらすじ(※ネタバレを含みます)

「信濃屋」のてつの提案で、てつと、薬研堀の絹女、おしずとおたかの四人で熱海へ湯治に行くことになった。費用はすっかり「信濃屋」で持つことになっている。「信濃屋」の一人息子の友吉とおたかの縁談が纏まって、あと七日で結納、ひと月後には結婚することになっていた。おてつとおたかが嫁姑になる前に、おてつとしては長いこと主婦役を勤めてきた慰労。おたかはこれから多忙な主婦役を引き継ぐので事前慰労の意味で息抜きをしてこようというのだった。おしずも珍しく乗り気で「たかちゃんのおつきあいで」と云ったが、おたかは、嫁に行ったらおしず一人が家に残るし、これまでの苦労休めも兼ねておてつがおしずを保養させるつもりだと察しをつけていた。そんなある日の夕方、おしずは帰り道に駕舁き風の男に一通の手紙を渡される。その手紙は次兄・栄二からで十両の金を無心するものだった。妹の嫁入りを控えて、金とつくものなら鐚銭一枚でもよけいに欲しいおしずは「十両だなんてとぼけたこと云ってるわ」とその手紙を握りつぶした。しかし・・・

おたふく物語 湯治 覚え書き

遊山(ゆさん)・・・野山に遊びに行くこと。気晴らしに遊びに出かけること。

相伴(しょうばん)・・・連れ立って行くこと。また、その連れの人。

おぞけ・・・怖がる心。おじけ。

拘泥(こうでい)・・・こだわること。必要以上に気にすること。

目算(もくさん)・・・目で見て数量の見当をつけたり、大体の計算をしたりすること。

譬え(たとえ)・・・たとえること。

鐚銭(びたせん)・・・質の粗悪な銭貨。

分相応(ぶんそうおう)・・・その人の身分や能力にふさわしいこと。

餌桶(えおけ・えさおけ)

頓馬(とんま)・・・間が抜けていること。また、そのさまや、そのひと。

水面(みのも・みなも)・・・水の表面。

棚晒し(たなざらし)・・・いつまでも売れないで店に残っていること。

紅絹(もみ)・・・絹織物の一種、真っ赤に無地染めした薄地の平絹。

蝶足(ちょうあし)・・・膳などの足の末端がチョウが羽を広げたような形になっていること。

大義親を滅す(たいぎしんをめっす)・・・君主、国家の大事のためには、親兄弟をも犠牲にする。

強請(ゆすり)・・・無理に頼むこと。また、ゆすること。

懐手(ふところで)・・・和服を着た人が手を袖から出さずに懐へ入れていること。