癒しの朗読屋へようこそ 主に朗読作品の解説を書いています

記事を50音順で表示

NO IMAGE
目次

町奉行日記 山本周五郎

【朗読】町奉行日記 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「町奉行日記」(昭和34年)です。(町奉行日記/新潮文庫)TVドラマ、映画、舞台などでも人気の作品です。その藩では一年で三人も町奉行を辞任した。新任奉行職は、江戸邸から上意によって仰せつけられた望月小平太だった。

町奉行日記 主な登場人物

望月小平太・・・二十六歳。武芸に長じているが、行状は放埓を極め、江戸邸でも悪評の高く「着流し」なんとやらと仇名もある。

堀郷之助・・・二十八歳。大目付。家中の評判もよく、大目付として近年にない人物だといわれる。小平太の少年時代の親しい旧友。

安川雄之介・・・二十五歳。徒士目付。小平太より年下だが風貌は二三歳も上に見える。

(藩主)和泉守信真

(重職) (城代家老)今村掃部高次(次席家老)森島和兵衛(家老)落合主水正(家老兼奉行役元締)本田斎宮(寄合役肝入)佐藤帯刀(重職)内田舎人

(健士組・徒士組) 征木剛 田口源二郎 沢本正五 内島兵馬 沖野大六

(壕外の親方)  灘八・八郎兵衛・・・難波屋の主人   継町の才兵衛  巴の太十

 

 

町奉行日記 覚え書き

放埓無頼(ほうらつぶらい)・・・ほしいままにふるまって酒や女に溺れ、無法な行いをすること。そういう人。

唐変木(とうへんぼく)・・・気の利かない人物。物分かりの悪い人物をののしっていう語。

面憎い(つらにくい)・・・顔を見るのも憎らしい。

白扇(はくせん)・・・模様などのない、白地のままの扇。

隔絶(かくぜつ)・・・かけ離れていること。遠く隔たっていること。

遊興(ゆうきょう)・・・遊び興じること。とくに酒色に興じること。

凶状持ち(きょうじょうもち)・・・前科のある者。また、凶悪な罪を犯して追われている者。

祐筆(ゆうひつ)・・・筆をとって文を書くこと。

譴責(けんせき)・・・しかり責めること。不正や過失などを厳しくとがめること。

特命(とくめい)・・・特別の命令、任命。

塵芥(ちりあくた)・・・ごみ。全く値打ちのないもの。

煽動(せんどう)・・・気持ちをあおり、ある行動を起こすようにしむけること。

九寸五分(くすんごぶ)・・・刃の部分の長さが約29センチの短刀。

大籬(おおまがき)・・・江戸吉原で、最も格式の高い遊女屋。

嘖々たる(さくさくたる)・・・口々に言い立てるさま。

風趣(ふうしゅ)・・・おもむき。風情のある味わい。

喚問(かんもん)・・・公的な機関に呼び出して問いただすこと。

長らう(ながらう)・・・キセルのラウの長いもの。

政道(せいどう)・・・国を治めること。また、政治のしかた。

すべた・・・顔のみにくい女性。

溜飲が下りる。(りゅういん)・・・不平・不満・恨みなど、胸のつかえがおりて気が晴れる。

注進(ちゅうしん)・・・事件を書き記して上申すること。

 

 

 

 

 

 

 

 

百足ちがい 山本周五郎

【朗読】百足ちがい 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「百足ちがい」です。この作品は昭和25年キングに掲載されました。又四郎は秋成又左衛門が四十歳の時生まれた一人息子であった。又左衛門はまれに見るせっかちな人で「せかちぼ(せっかちん坊)」と呼ばれていた。そのため失敗も多く公開することが多かった。そこで一人息子、又四郎は沈着な人間に育てようと五歳になると太虚寺の雪海和尚に養育を頼んだ。そこで又四郎は、なにごともがまん、せくな騒ぐな、じたばたするなと育てられる。そうしてやがて又四郎には「百足ちがい」という定評が付けられる。世間でよく「ひと足ちがいだった」というが、彼の場合はいつも「百足ちがう」というわけで、つまるところ間に合わない、用が足りないという意味なのであった。

 

真説吝嗇記 山本周五郎

【朗読】真説吝嗇記 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「真説吝嗇記」です。この作品は、昭和23年新読物に掲載されました。酒飲みの飛田門太(とんだもんた)は鑓田という三百五十石御宝庫番頭の二男に生まれ、二十二歳で百五十石勘定方書役の飛田家へ入婿した。酒を飲んだり友情に篤くむくいたりする彼には俸給が足りない。だからいつも問太の兄の子、鑓田宮内(やりたくない)に金を借りるのだった。登場人物が個性的で面白かった!とくにけちんぼ宮内とかつ女のやりとりに注目です!

真説吝嗇記 主な登場人物

飛田門太(とんだもんた)・・・相当な酒好き。一日中飲んでいる。算数の天才で、およそ十五人分の仕事を一人で片づけるし、酒飲みの人情家で同僚の信愛を集めていた。飛田家へ入婿する前に鑓田家で部屋住をしていた時分からずっと宮内に小遣いをせびっていた。宮内の理解者。

よの・・・門太の妻。

琴太郎・・・門太とよのの長男。宮内が子どもの時からとっておいた玩具を全部譲り受ける。

鑓田宮内(やりたくない)・・・門太の兄の子。三歳の頃から吝嗇家。家中の評判は悪いが、門太だけは彼を愛し憂いしぼる。彼も門太だけには嫌な顔もせず金を融通している。

かつ・・・宮内の妻。無敵の吝嗇家。

矢礼節内(やれせつない)・・・鑓田家に三代前から仕える老家士。

真説吝嗇記 覚え書き

日子(にっし)・・・日数。

吐逆(とぎゃく)・・・飲食したものが、井から逆行して上がってくる現象。

鬼窟裡(きくつり)・・・鬼の住む洞穴。

将を射んと欲すればまず馬を射よ・・・主となるものを攻撃したり手に入れようとするとき、直接狙うより、その周囲から狙う方がよいことのたとえ。

倍加(ばいか)・・・倍に増えること。

吝嗇(りんしょく)・・・けち。

譴責(けんせき)・・・叱って責めること。

痼疾(こしつ)・・・長い間悩まされている病気。

僅少(きんしょう)・・・ほんのわずかなこと。

戒飭(かいちょく)・・・人に注意を与えて慎ませること。自分から慎むこと。

謹厳(きんげん)・・・まじめでいかめしいこと。

小言は言うべし酒は買うべし・・・いたらぬことはどんどん叱ってもいいから良いこともどんどん褒める。

割れ鍋に綴じ蓋・・・どんな人にもふさわしい伴侶があることのたとえ。

醜婦(しゅうふ)・・・醜女。

 

 

 

 

 

 

 

 

矢押の樋(やのしのとい) 山本周五郎

【朗読】矢押の樋(やのしのとい)山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「矢押の樋」(昭和16年)です。延宝八年から天和元年、二年の天候不順で奥羽一帯は五穀不作続きだった。同三年の春から飢饉状態が現れ始めた。農民たちは絶望し、土地を去ろうとする者も出始めていた。

矢押の樋 主な登場人物

矢押 梶之助・・・二十五歳。監物の弟。少年の頃から我が強く乱暴者で、亡き父は梶之助を「矢押家の瘤」と云っていた。

矢押 監物・・・二十九歳。家老職、梶之助の兄。明敏寡黙な老成人。幕府へ借款を申し込みに行く向田藩の使者となる。

吉井幸兵衛・・・北見村の豪農。加世の父。内濠から大樋をかけようという梶之助に協力する。

加世・・・幸兵衛の娘。梶之助を想っている。

外村重大夫・・・勘定奉行。梶之助が内濠で水練しているのを見つけ叱責する。

塩田外記・・・国家老。監物の舅。

 

矢押の樋 あらすじ(※ネタバレを含みます)

干害で飢饉状態の表れた向田藩では、糧米買い付けに奔走していたが資金が足らず埒が明かない。米の大出廻り地方が不作で奥羽諸国の大藩が一時に買い付けるので、現銀仕切りでないと商人が動かなくなっていた。そこで、幕府に借款願いを出すため、矢押監物を江戸に使者に出した。今、家中の若手の者たちは、お救い小屋の仕事や、水脈探し、井戸掘りなど炎暑を冒して山野に働いている。しかし、矢押梶之助はそれらに出なかった。噂では北見村の豪農、吉井幸兵衛の家に碁を打ちに通ったり、幸兵衛の娘、加世に執心などと取り止めのないうわさもあった。

かん太
矢押兄弟はこうと決めると後へ引かない性分だよ。兄・監物は幕府に借款を願いに行き努力したけれど不首尾に終わるんだ。監物は主家の使命を帯びた者がどう身を処するか、主命の重さを示すんだ。
アリア
梶之助も水が滾々と吹き出す城の内濠に大樋をかけようとする。彼の言葉が心に残るよ。
「城縄張りは重いものだが農民たちは今、一滴の水でも欲しいのだ。そして城にはそれが満々とあるのだ。若し農を以て国の基とするのが事実なら、そういう場合には城濠の水も切ろうという藩政の方向を示すことが重大だ。それによって農民たちは新しい希望を持つであろう。」

矢押の樋 覚え書き

四方(あたり)

剽軽た(ひょうげた)・・・気軽でおどけた感じのすること。また、その感じ。

不届者(ふとどきもの)・・・取り決めや法に従わないもの。

取糺す(とりただす)・・・厳しくただす。きつくただす。

干害(かんがい)・・・日照りのために生じる農作物などの災害。

山野(さんや)・・・山や野原、のやま、いなか。

生色(せいしょく)・・・いきいきとした顔色。元気そうな様子。

疲弊(ひへい)・・・心身が疲れて弱ること。

糧米(りょうまい)・・・食料にする米。

借款(しゃっかん)・・・政府の長期的な賃借。

水練(すいれん)・・・水泳の練習。

嘱望(しょくぼう)・・・人の前途や将来に望みをかけること。

寸暇(すんか)・・・ほんの少しの空き時間。

一抹(いちまつ)・・・ほんのわずか。

窮民(きゅうみん)・・・生活に困っている人々。

余人(よじん)・・・当事者以外の人。また、他の人。

落口(おちぐち)・・・水の流れの落下するところ。

斯様(かよう)・・・このよう、このとおり。

枯死(こし)・・・草木が枯れてしまうこと。

真向(まっこう)・・・正しく向かうこと。まっすぐに向かうこと。

掌(たなごころ)・・・てのひら。

悲歎(ひたん)・・・悲しみ嘆くこと。

目睫(もくしょう)・・・きわめて近いところ。

山塊(さんかい)・・・山系、山脈から離れ、ひとまとまりになっている山地。

基(もとい)・・・土台、基礎、また、物事の根本。

眉宇(びう)・・・まゆの辺り。まゆ。

冥加(みょうが)・・・思いがけない幸せ。

二世(にせ)・・・現世と来世。今生と後生。この世とあの世。

淋漓(りんり)・・・水、汗、血などがしたたり流れるさま。

奔流(ほんりゅう)・・・勢いの激しい流れ。

 

 

 

秋の駕籠 山本周五郎

【朗読】秋の駕籠 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「秋の駕籠」です。この作品は、昭和27年、講談倶楽部に掲載されました。正直者の駕籠屋の相棒、中次と六助の話です。二人は仲がいいときは一緒に住んでいた。別れて住んでいる時は喧嘩をしているので互いに口もきかず、稼ぎにも出ずに遊んでいた。しかしそれは長くは続かなかった。二人とも他に友達はないし、これという道楽もなかったから。ある日、お梅のはからいで仲直りした二人は、日本橋で呉服商の主人に箱根まで通し駕籠で行ってほしいと頼まれる。駄賃は五両!あやしいと思いながらも出発する二人だった。

かん太
魚金のお梅が中次に作った「海苔かか」美味しそうでした!鰹節をかき、海苔をあぶって揉み、その二つを混ぜて醤油をかけた。もう一つは「かきたま」小鍋にだし汁を沸かしながらネギを刻み、卵の白身を椀で溶いて作るんだそう。料理の描写ってめずらしいね。
アリア
二人が仲直りした後で魚金に行ったとき、お梅が客の注文をとってたね。「ねぎまに鯖の塩焼きでご飯」って。おいしそうだなーと思ったよ。
最後のオチは曽我兄弟の名前がヒントだよ!兄・曽我十郎祐成と、弟・曽我五郎時致で五郎・十郎だね!

秋の駕籠 主な登場人物

中次・・・二十七歳。色が浅黒く、いなせな顔立ちでうけくちの唇の片方を少しゆがめて少し煙ったい眼をするクセがある。こうすると苦みばしった好い男ぶりに見える。

六助・・・二十七歳。四十歳くらいに見える。固太りで毛深くて脂性。太い眉毛や大きな目鼻のまわりにいつも脂が浮いている。顔の下半分は髭で埋もれている。胸毛は熊のよう。

お梅・・・十八歳、顔立ちも体つきもきりっとしている。背丈は五尺そこそこ、色の白いきめの細かな肌で、面長の顔に目が大きく眉毛がやや尻下がり。左の唇の下にほくろがあり、匂やかな色気があふれている。

おそめ・およの・・・「魚金」の小女。十五歳。おそめは器量よし。およのはつねに上品にふるまおうと努力している。

金助・・・四十五歳、一膳めしと居酒を兼ねた縄のれん「魚金」の主人。気のいい情にもろい性分。

山城屋五十平・・・江戸日本橋で呉服商を営む大店の主人。

 

秋の駕籠 覚え書き

二百二十日(にひゃくはつか)・・・立春から数えて220日目。農家の厄日。

情合(じょうあい)・・・思いやりや愛情。

妬心(としん)・・・嫉妬心。

いなせ・・・男気があり粋で心意気のあること。

生木(なまき)・・・切ったばかりで乾燥していない木。

雲助(くもすけ)・・・客をとろうと蜘蛛のように巣を張っている無宿者の駕籠かき。

雷獣(らいじゅう)・・・雷と共に地上に降りてくる想像上の動物。

銀流し(ぎんながし)・・・見かけはよくても質の悪い物。

 

 

秋風不帰(しゅうふうふき)山本周五郎

【朗読】秋風不帰 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「秋風不帰」です。(講談雑誌)主人公 狩谷夏雄は、二十二歳の春から兵法修行の旅に出ていた。それから五年、できるだけ山間僻地を廻って隠れた剣人を尋ね、剣法を職業としない人のみが持っている純粋なものだけを学んできた。彼は幼い頃から武芸が好きで既に十歳の頃から藩の進武館に入り、十九歳で筆頭の札を掲げるほど才分に恵まれていた。今彼は、五年の修行を終えて信濃国西条の城下町に帰ってきたところだった。帰郷の感動でいっぱいな胸は父を思い、兄を思い、友の誰彼を思い胸を熱くしながらもう家の見える角まで歩いて来た時、突然後ろから「狩谷氏」ではないかと声をかけられ、不用意に振り返った面上へ意外にいきなりぱっと抜き打ちを掛けられた。

秋風不帰 主な登場人物

狩谷夏雄・・・二十七歳。五年の兵法修行から帰郷するといきなり抜き打ちに合い、さらに身ごしらえをした武士十二三人が討手としてくる。

お高・・・十七歳。馬子の姿をする娘。元狩谷家の下郎嘉右衛門の娘、帰郷していきなり抜き打ちにあった夏雄を助ける。

狩谷与右衛門・・・夏雄の父。西条家の槍奉行三百二十石。

狩谷伊兵衛・・・夏雄の兄。実直一方の男で早くからお側に上がり、二十歳から御書院番として役料五十石を貰っていた。

嘉右衛門・・・狩谷家の下郎。夏雄が幼い時、外出時によくついてきた。

若林善之助・・・夏雄の幼い頃からの友人、納戸役。

町子・・・夏雄の許嫁者。

七沢吉郎兵衛・・・夏雄の友人。

小野儀兵衛・・・筆頭国家老。

小野欣弥・・・小野儀兵衛の二男。

秋風不帰 覚え書き

慢心(まんしん)・・・おごり高ぶっていること。

挟殺(きょうさつ)・・・挟み撃ちにすること。

鼻梁(びりょう)・・・眉間から鼻先まで。

助勢(じょせい)・・・力を添えて援助すること。

放れ馬(はなれうま)・・・綱から離れて走り回る馬。

繭干し場(まゆほしば)

動顛(どうてん)・・・非常に驚いて平静を失うこと。

放し討ち(はなしうち)・・・戦って討ち取るということ。

処断(しょだん)・・・裁いてはっきり結論をだすこと。

一節切(ひとよぎり)・・・節が一つだけある尺八の前身の笛。竹製

瞑目(めいもく)・・・目を閉じること。

夜講(やこう)・・・夜になって行われる講義。

実否(じっぴ)・・・事実か事実でないか。

莫逆(ばくぎゃく)・・・非常に親しい仲。

鉢の木・・・謡曲、零落の身の佐野源左衛門常世は、大雪の夜に旅僧に身をついやした北条時頼を泊めて、

秘蔵の鉢の木を焚いてもてなし、いざ鎌倉のときの決意を語る。後日それが報いられて旧領の回復と鉢の木にちなむ三領地を与えられた。

 

 

 

 

立春なみだ橋 山本周五郎

【朗読】立春なみだ橋 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「立春なみだ橋」です。(昭和15年)仕事を抛りだして博奕場へ出入りする大工の新吉は、ある日、博奕場で岡っ引き島屋仁右衛門に捕らえられます。幼い頃から新吉をよく知る島屋仁右衛門は、新吉を諭し、今度だけは見逃す代わりに、目の不自由な老女の家でした息子の身代わりになるよう条件を出します。老女の息子となり、足を洗って素っ堅気の職人に戻った新吉と、そんな彼の世話をしながら彼を見守る島屋仁右衛門の娘お仲。(生きている源八/新潮文庫)

立春なみだ橋 主な登場人物

新吉・・・腕は大工仲間で何人と指を折られるくらいの大工。仕事を抛りだして博奕場へ出入りする。

新吉のおふくろ・・・27歳の時、夫に死なれて死ぬまで後家を通して新吉を育てた。新吉を心配し島屋仁右衛門に相談していた。三年前に死んだ。

お仲・・・島屋仁右衛門の娘。十八歳、下ぶくれの愛くるしい顔立ちで、上目使いに人を見る目がなんとも云えぬ色気を持っている。

島屋仁右衛門・・・五十一歳、岡っ引きではあるが人気のいい男。世間の評判も、敵同志の悪る仲間にも好かれていて、彼が捕り親になった捕物に血をみた例がないとまで云われていた。

お兼・・・息子が十三の年にぐれて家出し、十二年音沙汰がない。亭主も死んで、息子を探しながら諸国を回ったが、いつか目を泣き潰して江戸へかえってきた。

辰次・・・「無手の辰」という、二十五六だが喧嘩兇状で何度も牢入りしている。瘦せ型の青白い顔にきゅっと唇をへし曲げた凄みのある若者。

伝五郎・・・向こう傷のある色の浅黒い男。一目で堅気者でないと分かる遊び人。

佐助・・・なりの小さい顎の尖った貧相な男。一目で堅気者でないと分かる遊び人。

立春なみだ橋 覚え書き

開帳(かいちょう)・・・賭博の座を開くこと。

危急(ききゅう)・・・危険・災難がさし迫っていること。

めくらめっぽう・・・少しも見当がつかないで、でたらめに事をすること。また、そのさま。

目端のきく(めはしのきく)・・・機転がきく。その場、その場に応じて、よく才知が働く。

栄耀(えいよう)・・・大いに栄えて、はぶりのよいこと。

小やみ・・・雨や雪などがしばらくの間降りやむこと。

二上がり(にあがり)・・・三味線の調弦法のひとつ。

音締め(ねじめ)・・・三味線・琴などの弦を締めて、恩寵を整えること。

嫋嫋(じょうじょう)・・・長くしなやかなさま。

真人間(まにんげん)・・・まじめで正しい生き方をしている人間。

仲人(ちゅうにん)・・・争いなどの仲裁をする人。仲裁人。

気随気儘(きずいきまま)・・・勝手きままにふるまうこと。また、そのさま。

娘師(むすめし)・・・土蔵やぶり。白くぬってあることから盗賊の隠語で土蔵のこと。

 

 

 

 

 

笠折半九郎 山本周五郎 

【朗読】笠折半九郎 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「笠折半九郎」(昭和16年)です。この作品は、世間の評判、つまらない感情のささくれや行き違い、思い過ごしなどに振り回される主人公・半九郎と小次郎の友情と、彼らが二十年仕える主君頼宣との信頼の厚い主従関係が描かれています。

笠折半九郎 主な登場人物

笠折半九郎・・・紀伊家の中小姓、二十七歳。西丸角櫓の番之頭を兼任し、食録三百石、生一本で直情径行、武骨物。一徹で強情。

畔田(くろだ)小次郎・・・紀伊家の中小姓、二十五歳。食録二百五十石、沈着な理性に強い性格で、気質では兄格。

徳川頼宣・・・藩士を大切に思う紀伊藩主。

笠折半九郎のあらすじ (※ネタバレを含みます)

半九郎と小次郎は互いに無二の友人として相許していた。また、早くから主君頼宣に仕えて二人とも別々の意味で深く愛されていた。半九郎と小次郎の喧嘩がどう始まったかよく分からないが、些細なことで口論になり、時のはずみで半九郎は食い下がり、翌朝、二人は果し合いをすることとなった。時間が経つと、半九郎は自分の怒り方が度を越していることに気付き、どう考えても果し合いをするほどの問題ではない感じがはっきりしてきた。しかしまたすぐ新しい怒りがこみあげてきた。どれほど親しい間柄でも云ってよいことと悪いことがある。その夜、半九郎は宵のうちに寝た。すると誰かが雨戸をけたたましく叩く音がした。それは小次郎だった。彼はお城が火事になったことを知らせにきたのであった。

かん太
お城の火事を知らせてくれた小次郎に感動する半九郎。十七人の番士と身命を賭して角櫓と宝物を守るんだ。翌々日、頼宣が帰城して、防火の労をねぎらい、それぞれに恩賞の沙汰をする。しかし半九郎には何の言葉もなかったんだ・・・・

笠折半九郎 覚え書き

直情径行(ちょくじょうけいこう)・・・自分の感情のままを言動に表すこと。また、そのさま。

弾奏(だんそう)・・・弦楽器を演奏すること。

面色(めんしょく)・・・顔色。

後事(こうじ)・・・あとの事。将来の事。また特に死んだあとのこと。

私かに(ひそかに)・・・人に知られないように物事をするさま。

遊芸(ゆうげい)・・・遊び・楽しみのためにする芸事。

光暈(こううん)・・・輝いている者の周囲に見える、淡い色のかさ。

定紋(じょうもん)・・・家々で決まっている正式の紋。また、個人が決まって用いる紋。

旱天(かんてん)・・・久しく降雨がなく日照りが続くこと。また、その空。

劈く(つんざく)・・・勢いよく突き破る。つよく突き破る。

屹然(きつぜん)・・・山などが高くそびえ立つさま。

荘厳(そうごん)・・・重々しさがあって立派なこと。

大磐石(だいばんじゃく)・・・物事の基礎がしっかり据わっていて揺るぎのないこと。

鬢髪(びんぱつ)・・・鬢の部分の髪。

遠島(えんとう)・・・江戸時代の刑罰の一。追放より重い死罪より軽い島流し。

妄念(もうねん)・・・迷いの心。誤った思いから生じる執念。

本復(ほんぷく)・・・病気が全快すること。

所労(しょろう)・・・疲れ。病気。

穏当(おんとう)・・・おだやかで無理のないこと。また、そのさま。

讒訴(ざんそ)・・・他人をおとしいれようとして、事実を曲げて言いつけること。

憤激(ふんげき)・・・はげしくいきどおること。ひどく怒ること。

正味(しょうみ)・・・余分なものを取り除いた、物の本当の中身。

自儘(じまま)・・・周囲の事情など考えずに、自分の思うままに物事をすること。また、そのさま。

賞美(しょうび)・・・ほめたたえること。

 

 

 

米の武士道 山本周五郎

【朗読】米の武士道 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「米の武士道」昭和17年、講談雑誌に掲載されました。甲府城の若き郡代、料治新兵衛が赴任してきてから約四年になる。彼はまだ若く、二十五歳になったばかりだったが、果断と明敏な手腕を存分にふるい、たちまち郡内の治績を素晴らしく上げた。しかもその治法がすべて官に薄く、郡民に厚く、第一に農村の繁栄を土台としていたから、郡民たちは彼を名郡代として心から信頼していたのだった。時勢は徳川慶喜が大政を奉還し、天下は御一新のよろこびを迎えたと思う間もなく、鳥羽伏見の戦が起こって慶喜は追捕使を受ける身上となり、諸代諸侯は徳川家のために鉾をとって起つという評判が飛んだ。料治新兵衛はある日、石和の代官所から抜き身の槍を持った足軽十人、大八車二十輌を引いて村々の百姓の倉を開けて持ち米を全てお取り上げに回っていた。