【朗読】水の下の石 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「水の下の石」(昭和19年)です。(深川安楽亭/新潮文庫)ゆるされた時日はあと一日しかないのだ。どんな犠牲をはらってもあと一日のうちに攻め落とさなくてはならぬ。だがはたしてそれが可能だろうか?問題はただひとつ、あのめぐらした濠だ。あの濠さえ突破できればあとに困難はない!今夜しかるべき者を五六人、橋桁づたいに潜入させて、矢倉、城館へ火をかけさせる。そして合体した兵たちが集めた板を桁へうちかけて一斉に斬りこむ。決死隊に選ばれた大七は、一緒に連れていく者の中に「加行小弥太」を選んだ。その名を聞いた旗がしらは眉をひそめた。
水の下の石 主な登場人物
加行 小弥太・・・二十二歳。大七と幼友達。足軽の子。幼い頃から挙措が鈍重で、言葉つきもはきとしない。すばらしく張り出た顎を持っていて「あご」という綽名をつけられたが、それがいつか「能無し」という意味に通ずるほど凡々たる存在だった。
安部大七・・・二十四歳。小弥太の幼友達。足軽の子。積極的な性質で、ぐんぐん前へ出ることを好む。たびたびの戦陣で功名を立て、長篠で格別の手柄があったので十人がしらに挙げられた。
水の下の石 覚え書き
如法暗夜(にょほうあんや)・・・本当の暗闇のこと。真っ暗な状態のこと。
泥濘(でいねい)・・・道などのぬかっているところ。ぬかるみ。
歩度(ほど)・・・歩く速度や歩幅の程度。
謀者(ちょうじゃ)・・・敵の内情などをひそかに探る者。スパイ。
霖雨(りんう)・・・何日も降り続く雨。
暁闇(ぎょうあん)・・・夜明け前、月がなくあたりが暗いこと。
痛痒(つうよう)・・・精神的、肉体的な苦痛や、物質的な損害。さしさわり。
向背(きょうはい)・・・背きあうこと。仲たがい。
遅疑(ちぎ)・・・疑い迷って、すぐに決断しないこと。
初更(しょこう)・・・およそ現在の午後7時または8時から二時間をいう。
僥倖(ぎょうこう)・・・思いがけない幸い、偶然に得る幸運。
不退転(ふたいてん)・・・信念を持ち、何事にも屈しないこと。