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暴風雨の中(あらしのなか) 山本周五郎

暴風雨の中(あらしのなか)山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「暴風雨の中」(昭和27年/週刊朝日増刊号)です。烈風と豪雨が荒れ狂い、氾濫した隅田川の水が家の床を浸し、なお強い勢いで増水しつつあった。その家の二階の六帖に三之助は寝ころんでいた。彼は疲れ切って虚脱しているようだった。何もかも、身も心も投げ出したという風に見えた。

かん太
貧しく辛い苦しく生まれついた三之助と、彼を捕らえにきた岡っ引きの貧しさに対する考えが全く違う。それぞれの理屈がよく描かれてます。
アリア
この話は一場面ものだよ。暴風雨の様子が細かく描かれているので迫力があります!

暴風雨の中 主な登場人物

三之助・・・ごく貧しい漁師の家に生まれ、六歳の時父が死ぬ。名の知られた悪童だったが十二歳の年に職人になるのだといって茅場町の「指金」へ弟子入りするが半年でとびだし、両国橋の「船辰」という船宿へころげこみ、船宿の船頭ではいい腕だが、喧嘩と博奕と女でいりがやまず、とうとう人をあやめてしまう。

佐平・・・武井屋の岡っ引き。三十五六の小柄な男。柄は小さいが骨太でがっちりしている。唇は厚く、角ばったまるい顔の中で小さな眼がするどく光る。その眼は粘り強くどんなことにもめげない光を帯びている。三之助を追ってきた。

おしげ・・・大きな船宿「船七」の娘。かたちのいいうりざね顔の濃い眉で、小麦色の肌で器量もかなり際立っている。三之助とは古い馴染みで、やくざな三之助にじつを尽くしていた。

仁兵衛・・・強欲な油屋。鬼のような家主で、貧乏人に法外な高利貸しをする。

暴風雨の中 覚え書き

烈風(れっぷう)・・・きわめて激しい風。

虚脱(きょだつ)・・・気力・体力ともに失せてぼんやりと何も手につかない様子。

砂礫(されき)・・・砂と小石。

斜交い(はすかい)・・・ななめ。

近火(ちかび)・・・近所の火事。

攣縮(れんしゅく)・・・ひきつって縮まること。

 

 

月の松山 山本周五郎

【朗読】月の松山 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「月の松山」です。この作品は、昭和29年キングに掲載されました。51歳の作品です。主人公の宗城孝也は、医者の花崗道円に不治の病と余命宣告を受けます。彼は死の恐怖に直面しながらも、自らの運命に立ち向かおうとします。生きる意味や人との絆を感じさせられた作品です。最後までどうぞお聴きください。

月の松山 主な登場人物

宗城孝也(むねきこうや)・・・茂庭道場の代師範。重い病に侵されながらもそれを隠し、自分の大切な人を護るために行動する。もともと浪人の子で江戸に育つが孤児となり、茂庭家に預けられる。

花崗道円(みかげどうえん)・・・孝也の主治医。彼に治癒が不可能な病気の診断を下し、余命宣告する。

西秋泰二郎・・・茂庭道場の古参の門人。孝也の態度の変化に悩む桂の相談に乗る。

茂庭掃部介信高(かもんのすけ)・・・茂庭家は古くから兵法をもって北条氏に仕え、代々掃部介を許されていた。農耕の傍ら鞍馬古流を教えている。今は寝たきりの病身。桂と孝也が一緒になることを望んでいる。

月の松山 あらすじ

宗城孝也は、医者の花崗道円から彼の病が治癒不可能で、最長でも一年、早ければ百日という厳しい余命宣告を受ける。その宣告に衝撃をうけ、茫然自失のまま医者の屋敷を後にする孝也。彼は自身の死を覚悟し、日々の生活の中で周囲に気づかれないように振る舞おうと努める。しかし身体的な変化や痛みによって次第に限界が訪れる。婚約者である桂への態度もそっけなく冷淡になり、理由の分からない桂は、ただ不安と悲しみを感じるようになるが、やがて西秋泰二郎に孝也のことを相談するようになる。門人であり友人の西秋泰二郎に今までにない厳しい指導と冷淡な態度で、孝也は周囲に不安を引き起こす。病状は進行し、道場での稽古もままならなくなった彼は・・

月の松山 アリアの感想と備忘録

熊の子に向かって「お前は逃げることができるんだぞ、しかし俺は確実に捉まってしまった、どんなことをしても断ち切ることのできない鎖に」という孝也が苦悶の衝動と叩く姿など、心情の変化や葛藤が丁寧に描かれていました。茂庭家に預けられてからずっと好きだった桂を遠ざけていく姿など、本当のことは最後まで打ち明けずいるなんてどんなに辛かったでしょうか。

末っ子 山本周五郎

【朗読】末っ子 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「末っ子」(昭和32年)です。彼に対する一族の評から始まります。これはインタビュー形式になっていて面白いです。話の途中にもこの形が何度か出てきます。主人公の小出平五は五人兄妹の末っ子、三男坊の部屋住みです。婿養子に行って悲惨な目に遭っている周囲の人達を見て、平五は幼い頃から危機感を持ち「金を貯めよう!」と行動します。

末っ子 主な登場人物

小出平吾・・・二十四歳 三男の部屋住み。骨董に興味があり、家から独立するために秘かに金を貯めている。

小出玄蕃(木挽町)・・・平吾の父。七千二百石の旗本。骨董好き。親族の中心に収まりたいと思っている。毎年、正月六日に親族の人たちが小出へ集まって来る。

いつ女・・・平吾の母親。実家は平河町。森内膳が

小出敬二郎・・・三十二歳、長兄。平吾を末っ子で三文安い甘ったれと思っている。

木下杢之助(神谷町)・・・二十八歳、次兄。二十二歳の時、木の下へ養子にいった。平吾と不仲。

土方よね・市之丞(薬師小路)・・・土方(ひじかた)へ嫁した長姉。以前、平吾に土方の親類に婿縁組の話を持ってきたが平吾が断る。市之丞はそのことを怒っている。

米良くに・平左衛門(榎木坂)・・・平吾の二番目の姉。いつも平吾の味方をしてくれ、金を預けている。姉のくにの良人。平吾の一番の理解者。

新庄主殿・・・玄蕃の弟。三十三歳まで部屋住みでいたが、

 

 

 

松風の門 山本周五郎

【朗読】松風の門 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「松風の門」(昭和15年)です。藩主宗利が十歳の頃、お相手として殿中に召し出された少年たちの中に一つ年下の池藤小次郎がいた。彼は神童と云われた俊才で、学問にも武芸にもずばぬけた能力を持ち、ほとんど一家中の注目の的になっていた。宗利は小次郎を嫉んでいた、領主としての自分よりも遥かに多く人々の尊敬と嘆賞を集めている彼が憎かった。それでいながら宗利は最も多く彼を相手に選んだ。江戸邸に移る前年の夏、宗利は小次郎に剣術の相手を命じた。巧みに鋭鋒を避けて逃げ回る小次郎に宗利は法もなく打ち掛かっていったが、避けきれず向かっていった小次郎の竹刀の先が宗利の右目を突いてしまう。

松風の門 主な登場人物

池藤八郎兵衛(小次郎)・・・父は郡奉行。学問にも武芸にも秀でた神童だったが、宗利が江戸へ去ってからようすが変わり、利口さも挙措動作も次第に鈍くなり、一家中からあれほど注目されていた才能も影が薄くなって、やがて家中の人々から忘れられていった。

伊達大膳大夫宗利・・・伊予の国宇和島の藩主。二十六年ぶりに帰国する。少年の頃、右目の視力を失っている。

朽木大学・・・五十九歳、宗利の傅で宗利が家督すると共に参政となった。

うめ・・・八郎兵衛の妻。八十島治右衛門の娘。

八十島治右衛門・・・郡奉行。八郎兵衛の亡父と親しかった人で、親たちによって長女のうめと八郎兵衛は許嫁の約を結んでいた。

松風の門 覚え書き

窟(いわや)・・・岩壁に自然とできた洞穴。

緋羅紗(ひらしゃ)・・・厚地の毛織物。

静座(せいざ)・・・心を落ち着けて静かに座ること。

半跏(はんか)・・・片足を他の足のももの上に組んで座る。

白雨(はくう)・・・明るい空から降る雨。にわか雨。

暗鬱(あんうつ)・・・気持ちが暗くふさぎこんでいること。

傅(ふ)・・・教育係。

参政(さんせい)・・・政治に参与する職。

鋭鋒(えいほう)・・・鋭い矛先。

恩典(おんてん)・・・ありがたい処置。情けある取り計らい。

面謁(めんえつ)・・・藩主に会うこと。

反別(たんべつ)・・・田を一反ずつ分けること。

古法(こほう)・・・昔の方法。

面壁九年(めんぺきくねん)・・・達磨が無言のまま九年も壁に面して座禅し、悟りを開いたという故事。

夫婦は二世(ふうふはにせ)・・・夫婦の関係は、現世だけでなく来世にも続くということ。

騒擾(そうじょう)・・・集団で騒ぎを起こし、社会の秩序を乱すこと。

好餌(こうじ)・・・よいえさ。

怨嗟(えんさ)・・・うらみ嘆くこと。

蕭々と(しょうしょうと)・・・ものさびしい。

 

 

 

 

 

 

枕を三度たたいた 山本周五郎

【朗読】枕を三度たたいた 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「枕を三度たたいた」です。この作品は、昭和32年54歳の作品です。アリアは子供の頃からずっと枕を3回叩いて寝ています。それはいい夢が見られるって信じているからです。そんなおまじないみたいな題名ですが、最後までハラハラ仕立ての作品で楽しく読みました。主人公の林之助が、軍用金三千両をわずかな供だけで国許から運んでくる話です。林之助が政治に関わりたくないと言うところと、世評で人を判断しないところが一見無能に見せているところが一貫してよかったです。サスペンス調なので、本当はどうなのか?どうなの?なんて感じでぐいぐい引き込まれました。皆さんも是非最後までお聞きになってください。

枕を三度たたいた 主な登場人物

塚本林之助・・・25歳。勘定奉行書役支配。国許から軍用金を運ぶ役に任ぜられる。

さわ・・・林之助の妻。又四郎の妹。

小林主水・・・25歳。国許の林之助の親友。

加島東吾・・・26歳。書院番。

 

 

柘榴 山本周五郎

【朗読】柘榴 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「柘榴」です。昭和23年、周五郎氏45歳の作品です。17歳で結婚がどんなものかわからないまま松室の家へ嫁した真沙は、夫の昌蔵の自分への愛情を理解することができなかった。昌蔵もまた妻を幸せにするのは家名と金に不自由のない生活だと思って間違いを犯すのでした。

柘榴 主な登場人物

真沙・・・実家は代々の物がしら格上席で、武家の厳しい躾を受けて育つ。若さゆえか夫の愛情を理解できず、不幸な結婚生活を送る。

松室昌蔵・・・真沙の夫。家系が没落し、自らの不遇を恥じながらも真沙を幸せにしようと努力する。しかしその野心が災いして失敗する。

戸沢数右衛門・・・真沙と昌蔵の仲人。真沙の結婚生活が破綻した後も彼女を助ける。

菊江・・・戸沢数右衛門の末娘。真沙が数右衛門の家に世話になっていた時に親しくなった。

昌蔵の母・・・真沙に女としてのつとめについて話すが病死する。

井沼玄蕃・・・真沙の父。お槍奉行を勤める堅苦しい人。

柘榴 あらすじ

十七歳で松室へ嫁してきた真沙は、若さゆえか昌蔵の愛情を理解することができず、結婚生活は次第に苦痛に満ちたものとなっていきました。昌蔵は家名を再興することが真沙を幸せにすることだと信じて努力しますが、無理な野心が災いして破滅の道を歩んでしまいます。彼は失敗し自ら姿をくらまします。多額の公金費消で断罪の罪となることが定まった昌蔵の妻として、本来なら妻の真沙にもお咎めがなければならないが、戸沢数右衛門の奔走で国許お構いになり色々な事情から生涯独身と決めたものが多く、そこには独立して生きる者の張りと自覚があったから、松室での生活に比べれば遥かに気楽でもあり、のびのびと解放された気持ちでいることができた。しかし心の底には、かつての結婚生活への後悔が残り続けます。晩年、田舎の静かな生活に身を置いた彼女は、老僕、伊助との交流を通じて過去の自分の若さと無理解を思い返し、昌蔵の愛情の深さに気づくようになります。

柘榴 アリアの感想と備忘録

幼い真沙が嫁いだ当初の、結婚という現実に直面し、自分の心が追いつかずに昌蔵との間に溝ができてしまう様子がとてもリアルに描かれていて心が痛みました。昌蔵は不器用ながらも真沙を心から愛していて、彼女を幸せにしようと必死でしたが、その愛情が逆に重荷となってしまうところが二人のすれ違いをさらに悲しく感じさせました。特に昌蔵が柘榴の実を真沙の躯に例える場面は、彼の愛が強すぎるあまり、真沙に恐怖を拒絶を感じさせるという象徴的で印象的な場面でした。しかし年を重ねた真沙が、徐々に過去を振り返って、若い頃には理解できなかった昌蔵の気持ちに気づいていく姿には、なんとも言えない切なさと少しの救いを感じました。伊助が昌蔵だったのかもしれないという謎は残ったけれども、最後の彼の言葉で、まさには十分な慰めになったのではないかと思います。人生には後になって気づくことや、過去を悔やむことが色々ありますが、どれをどう受け入れて生きていくかが大切だと、この話を読んで改めて考えさせられました。静かながら深い余韻を残す作品で、心にじんわりと響きました。

柳橋物語 山本周五郎

【長編朗読】柳橋物語 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「柳橋物語」(昭和21年)です。主人公おせんは研屋を営む祖父と二人でつましく暮らしています。おせんは幼い頃、隣に住んでいた大工の頭梁杉田屋で可愛がられます。おせんは病身の母が寝たり起きたりの鬱陶しく沈んだ家よりも、一日じゅう杉田屋で遊び暮らすことが多かった。そしておせの母が亡くなったが九つ頃、幸太と庄吉と知り合った。二人は杉田屋の徒弟であり、ライバルであり、どちらもおせんを好いていたのでした。おせんはある日庄吉に突然呼び出され、「明日から上方に行くが、自分が帰ってくるまで待っていてくれ」と告白されます。「待っているわ」と自分では何をいうのかほとんどわからずに答えるおせんに庄吉は、「幸太もおせんちゃんを欲しがっているから自分がいなくなれば幸太が云い寄ってくるだろう。でもおせんちゃんはおれを待っていてくれるんだよな。」と念を押して江戸から去るのでした。その後おせんは庄吉との約束を守って、杉田屋からきた幸太との縁談も断り、祖父のところへ通ってくる幸太にも来ないでくれと冷たく云うのでした。そんな折、おせんの祖父は卒中で倒れてしまうのでした。はじめは見舞客も多かったが段々少なくなり近所の人もあまり顔を見せなくなった。そのころから幸太がしばしば見舞いに来はじめ、中風に効く薬や食べ物を持ってきては薬を飲ませたり、額の濡れ手ぬぐいを絞りなおしたり、時には足をさすってくれたりした。しかしおせんは切羽詰まった苦しい場合につけ込まれてはならないと、ここでも幸太を拒絶するのでした。やがておせんは病床の層の面倒をみながら足袋のこはぜかがりで稼ぎ始めた。祖父もぼつぼつ起きはじめたが、左半身は不自由で舌のもつれもとれなかった。薬も祈祷も効果がなかった。そして十一月二十九日の夜、江戸に大火事が発生した。病身の祖父を抱えて火から逃げることもならず、途方にくれるおせんの前に幸太が現れる。(前篇より)

かん太
祖父を背に負って火から逃げ、おせんと祖父を命がけで守る幸太。それでもおせんは気付かない・・・。庄吉との約束で盲目になってるんだよ。恋に恋しているおせん・・・
アリア
次々と不幸が襲ってくる不運な運命のおせんを助ける江戸の見知らぬ人々。温かい人情にほっとしたよ。

柳橋物語 主な登場人物

おせん・・・十七歳~。九つで母を、十二で父を亡くして祖父の源六と暮らす。幼い頃は杉田屋でよく遊び暮らしたが、十三四歳から家事や祖父の使い走りなどをし、祖父が病床についてからは足袋のこはぜかがりをする。やがて松造の手助けで八百屋を始める。

源六・・・六十七歳。おせんの祖父。研屋。

幸太郎・・・おせんが大火事のとき拾った子。

幸太・・・おせんと幼馴染。杉田屋の巳之吉の遠い親戚すじにあたる。十三の春から徒弟に入りのちに養子となる。口のききかたもすることもはしっこい少年だった。おせんを想っているが拒絶される。

庄吉・・・おせんと幼馴染。両親も兄妹もない不仕合せな身の上で幸太の半年後に杉田屋へ入る。ごくおとなしい性分で背丈も低くひ弱そうな感じ。おせんと夫婦約束をして上方へ稼ぎに行く。

杉田屋・・・巳之吉・お蝶夫妻は子供がなく、おせんを可愛がり養女にと望むが断られる。幸太との縁談も断わられる。

勘十・お常・・・元煎餅屋で大火の後藁屋を始める。大火で記憶のない、赤子を抱えたおせんを助けて面倒をみてくれる。

松造・・・お常の兄。お常が死ぬ前までおせんの面倒をみていたことを引き継いで親身に世話をしてくれる。無愛想。

おもん・・・おせんの針仲間で親友。大火から身を持ち崩す。

友助夫妻・・・勘十の友人。妻に幸太郎が乳をもらう。人が良く何かと面倒をみてくれるが、ある時から態度が変わる。

栁橋物語 覚え書き

かもじ屋・・・地髪が短くて結えないときに足す添え髪を作って売るところ。髢

荷足(にたり)・・・船底に積む思い荷物。

下風(かふう)・・・ほかの支配を受ける低い地位。

諸式(しょしき)・・・物価。

惘然(ぼうぜん)・・・気抜けしてぼんやりすること。

徒弟(とてい)・・・親方の家に住み込んで技術を学ぶ少年、

訥々(とつとつ)・・・口ごもりながらつっかえながら云う。

酷薄(こくはく)・・・残酷で薄情なこと。

仮藉(かしゃく)・・・許すこと、見守ること。

風霜(ふうそう)・・・世の中の厳しい苦難や試練。

妾宅(しょうたく)・・・めかけを住まわせる家。

慄然(りつぜん)・・・恐れおののくさま。

荷葉飯(かようめし)・・・蓮の葉で巻いたモチ米を蒸した飯。

後架(こうか)・・・便所。

定命(じょうみょう)・・・前世の因縁によってきまる寿命。

逼塞(ひっそく)・・・落ちぶれて世間から離れてひっそり暮らすこと。

疱瘡(ほうそう)・・・天然痘。

朴直(ぼくちょく)・・・かざりけがなく正直なこと。

賃餅(ちんもち)・・・賃銭をとって餅をつくこと。

気ぶっせい・・・気づまりな感じ。

野分(のわき)・・・秋から冬にかけて吹く暴風。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桑の木物語 山本周五郎

【朗読】桑の木物語 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「桑の木物語」です。この作品は、昭和24年キングに掲載されました。体の虚弱な若殿信太郎正篤と、学友に上がった悠二郎との友情物語です。自由奔放に育った悠二郎と遊びながら段々身体が丈夫になっていく。悠二郎の育ち方が丁寧に書かれていて面白いです。桑の実を二人で食べる場面、毎年屋敷に二本ずつ桑の木を植え続ける正篤、いつまでも心に残る作品です。

桑の木物語 主な登場人物

土井悠二郎・・・双子に生まれる。武家では双子は嫌うので、生まれてすぐに舟宿に里子に出されて自由奔放に育つ。5歳で近所じゅうのガキ大将になる。7歳で生家に戻され若殿のご学友にあげられる。

信太郎正篤・・・六万三千石の藩主。体が虚弱で動作ものろくさして舌っ足らずなぼうっとしていたが、悠二郎に連れられて遊ぶうちに段々丈夫になっていく。

土井勘右衛門(虚木老)・・・老職。悠二郎の祖父。かなりの道楽者。老年まで吉原や深川でよく遊び、酒も強く俗曲にも通じて俳諧にも凝っていた。悠二郎を舟仙に預け、当人がよければ船頭にでもなるがいいと云った自由主義者。舟仙には悠二郎を大事に扱わず、たいていな悪戯は叱らず野放しに育てるよう厳命する。

土井忠左衛門・・・悠二郎の実父。物堅い性分で、留守役という社交的な勤めにいながら酒も多くはたしなまず、たった一つ金魚を飼うという趣味の他、碁将棋も知らないという風だった。

おみつ・・・舟仙の仙吉とおつねの娘。悠二郎と四つ違い。

新泉小太郎・・・優等生、悠二郎と一緒にご学友にあがる。

原精一郎・・・悠二郎と一緒にご学友にあがった「くいしんぼう」

桑の木物語 覚え書き

致仕(ちし)・・・官職を退くこと。

無埒(むらち)・・・めちゃくちゃ。

奇矯(ききょう)・・・言動が普通ではないこと。

無為(むい)・・・何もしない。

中興(ちゅうこう)・・・いったん衰えた物事や状態を再び盛り返すこと。

豪放磊落(ごうほうらいらく)・・・度量が広くて大胆で小事にこだわらないこと。

強飯(こわめし)・・・おこわ

代赭色(たいしゃいろ)・・・褐色を帯びた黄色または赤色。

滔々(とうとう)・・・みなぎりあふれる。

返報(へんぽう)・・・人がしてくれたことに対して報いること。

嘆賞(たんしょう)・・・すぐれたものとして感じ入ること。

展墓(てんぼ)・・・墓参り。

靖献遺言(せいけんいげん)・・・江戸前期の思想書。

日鑑(にっかん)・・・主に寺院などの日記。

浅黄裏(あさぎうら)・・・遊里で江戸勤番に出てきた野暮で武骨な田舎侍をあざけって呼んだ言葉。

深間(ふかま)・・・男女が別れられないほどの深い仲になること。

 

 

 

 

梅月夜 山本周五郎 

【朗読】梅月夜 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「梅月夜」(昭和16年)です。若いうちから古武士型の謹直家である高沖千之助は、弛廃した寛政気風の連中からひどく煙たがられていた。そんな彼に起こる四日間の出来事が描かれています。

梅月夜 主な登場人物

高沖千之助・・・駿河の国、田中藩の馬廻り番頭で三百石を取り、国家老成田別所の娘、菊枝と婚約している。

井波太吉郎・・・千之助の朋友。千之助をいつも助ける。

宮松金五郎・・・父の敵を討つために妹・松代と共に田中藩へやってくる。

松代・・・金五郎の妹。言葉の端々、挙措動作に云いようのない情の密さと温かいゆたかな感じが溢れる。

成田銀之丞・・・軽率な質で、幾度か酒の上の喧嘩沙汰があり江戸詰になっていた。冬の初め、酔って喧嘩し金五郎の父を斬った。

菊枝・・・十八歳で冷たい陶器のような美しさを持つ。千之助の婚約者。兄おもい。

原久馬・・・成田別所の甥。銀之丞の隣に住む。槍と小太刀の名人。

梅月夜のあらすじ(※ネタバレを含みます)

高沖千之助は客間で井波太吉郎と婚約者の話をしていると突然、庭前に白刃を手に青い顔をした若侍が、親の敵を討ちもらし、助勢の人数に追い詰められ、匿ってほしいと逃げ込んできた。彼の父を酔って売った喧嘩で無法に斬り伏せたのは、国家老・成田別所の二男、銀之丞だった。この仇討は尋常のことでは難しいと金之助は思った。相手が国家老の子であるため、家中の者はみんな遠慮するであろうし、彼は助勢の者を二人斬っている。彼を守るためには主君の上意を乞う他に手立てはなかった。

かん太
金五郎が逃げ込んだときに牡丹雪が舞う場面があるよ!灯点し過ぎのころ、客間の小窓の障子にときおりさらさらと舞いかかる音が聞こえるんだ。しんと空気の冷えた感じがよかった。
アリア
今回の植物は、菖蒲と梅でした!菖蒲は、千之助が端午の節句に招かれた時、菊枝が庭の池畔で花を切っているのを見かけます。梅は、木賃宿に松代を訪ねていったとき、鼻のつかえそうな中庭に一本の老梅がふくらんだ蕾をつけてます。また千之助が立ち退いた見禰山の宗洞寺の庭にも梅の老木が出てきます。それぞれの花が二人の女性をよく表していると思いました。

梅月夜 覚え書き

一紙半銭(いっしはんせん)・・・ごくわずかなもの。特に仏家で寄進の額のわずかなことにいう。

池畔(ちはん)・・・池のほとり。池のはた。

眉宇(びう)・・・眉を目の軒と見立てていう眉のあたり。

古武士(こぶし)・・・剛毅実直な昔の武士。風格が備わり、剛直で信義を重んじる武士。

勤直(きんちょく)・・・慎み深くて正直なこと。

弛廃(しはい)・・・ゆるみすたれること。行われなくなること。

助勢(じょせい)・・・力を添えて援助すること。また、その人。

理非(りひ)・・・道理にかなっていることと外れていること。

狼藉物(ろうぜきもの)・・・乱暴をはたらくもの。

浅傷(あさで)・・・軽い傷。

意趣(いしゅ)・・・恨みを含むこと。また、人を恨む気持ち。

歴々(ありあり)

亀鑑(きかん)・・・行動や判断の基準となるもの。手本。

慚愧(ざんき)・・・自分の見苦しさや過ちを反省して心に深く恥じること。

木賃宿(きちんやど)・・・粗末な安宿。

些少(さしょう)・・・数量や程度がわずかなこと。

 

 

 

 

 

梅雨の出来事 山本周五郎  

梅雨の出来事 山本周五郎 読み手 アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「梅雨の出来事」です。この作品は、昭和27年に雑誌に掲載されましたが、前編が見つかっていません。後編だけでも楽しめますが、前編も読みたかったです。

梅雨の出来事 主な登場人物

堀保之助・・・山牢から逃げた囚人に二度も遭遇する。女性に付文などもらうモテ男。普請奉行。

しの・・・保之助の妻、子どももないため自分に自信がもてない。モテる良人に嫉妬している。

坂井又兵衛・・・保之助の友人。町奉行で山牢から囚人が逃げた件で総指揮者をしている。

源八郎・・・しのの兄。

島田内記・・・暴慢で凶暴な重職

梅雨の出来事のあらすじ(※ネタバレ含みます)

保之助は一人の怪しい人間を見かけた。黒装束に白い頭巾という忍び姿で、武家屋敷を窺おうとしていた。声を掛けるといきなり斬り込んできた。躱しようもなく保之助は大泥溝にとび込んだ。背中から斬られ、雨合羽と着物が大きく切れた。そしてそのまま坂井又兵衛の家に行った。その晩は坂井家で集まりがあった。皆にわけを聞かれ、ことのあらましを話した。するとそこへ若い家士が走って来て、又兵衛に何か変事が起こったことを伝えた。又兵衛は立って行ったがすぐ戻って来て、「山牢の囚人が逃げた。おそらく保之助が見かけた男だろう。」と云った。城下町は脅えあがっていた。夕方になると家々は戸を閉め、店を閉めた。どの辻にも警戒の侍たちが5人一組で絶えず町中を回って歩いた。保之助も毎夜、夕餉の後で三時間ぐらいずつ出かけた。組下の者たちの労をねぎらうというが、妻のしのは、それだけだとは思わなかった。雪辱のために自分で破獄者を捕まえるつもりか、もしくは三舟亭へ行ってほの字に逢うのかもしれないと思った。以前、保之助がほの字に五通の付文をもらったこと、保之助は捨ててしまえというが、しのは捨てるまえにあけて読む癖がついていた。最近しのは、躰が不調でヒステリーを起こすので、「ちのみち」にかかったと思っていた。その夜、又兵衛のもとに同心が走り込んできた。「曲者を島田内記が斬伏せた」と云うのだ。又兵衛は思った。島田内記が破獄者を斬ったとすれば、彼の暴慢を増長させ、手柄を振りかざし、それを兇暴の縦に使うにちがいない。又兵衛はすぐに現場へ走っていった。

かん太
梅雨の出来事なので、ずっと雨が降っています。雨合羽や笠、高下駄も雨を盛り上げます!事件解決と共に暦の梅雨があけ、にわかに夏らしい夏が始まります。芙蓉が咲き、縁側で蚊遣りをたいて団扇を使い、スッキリと話は終わります。

梅雨の出来事 覚え書き

泥溝(どぶ)

変事(へんじ)・・・普通でない出来事、思いがけない事件。

破獄(はごく)・・・囚人が牢獄を破って脱走すること。

無頼漢(ぶらいかん)・・・ならずもの。ごろつき

搦手(からめて)・・・城や砦の裏門。陣地などの後ろ側。

暴慢(ぼうまん)・・・荒々しく自分勝手なこと。また、そのさま。

兇暴(きょうぼう)・・・性質が残忍で非常にらんぼうなこと。