癒しの朗読屋へようこそ 主に朗読作品の解説を書いています

記事を50音順で表示

NO IMAGE
目次

日日平安 山本周五郎

【朗読】日日平安 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「日日平安」です。この作品は昭和29年サンデー毎日に掲載されました。尾羽打ち枯らした姿の浪人、菅田平野が腹を空かせて切腹の真似をしているところへ通りかかった井坂十郎太と、共に藩の内紛にかかわっていく話です。菅田平野は、特に強いわけでも頭がいいわけでもないのに軍師となり知恵を絞って大活躍します。やがて菅田平野は初めは仕官のために「この蔓は放さないぞ。」と思っていたのに・・・

 

日日平安 主な登場人物

菅田平野(すがたひらの)・・・名前も苗字のような男。二十九歳。北越浪人。放浪に疲れ、わずか一食の銭を得るために切腹のまねをしている。十郎太と出会い、彼にひと騒動おこさせ手柄を立てさせ、自分もついでに仕官しようと奮闘する。

井坂十郎太・・・二十六歳。陸田精兵衛の甥。一人娘の千鳥の婿養子に入る予定。城下で同志を集めて奸臣誅殺しようとしている。

陸田精兵衛・・・城代家老。「日日時事みな平安なり。」が口癖。

千鳥・・・十七歳。陸田精兵衛の娘。十郎太の許嫁者。背丈が高く躰は成熟しているが、目鼻立ちのおおらかな丸顔やのびやかな身ごなし、甘えた言葉つきで子供っぽく見える。

黒藤源太夫・・・五十二歳、次席家老。

仲島弥五郎・・・四十五歳、留守役上席。

前林久之進・・・五十歳、国許用人。

こいそ・・・千鳥の侍女。十八歳、小柄で目鼻立ちのちまちましたはしこそうな顔。

日日平安  覚え書き

憤懣(ふんまん)・・・怒りを発散できずにイライラしていること。

紙入(かみいれ)・・・鼻紙や紙幣を入れるもの。

業腹(ごうはら)・・・非常に腹がたつこと。

苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)・・・情け容赦なく税金などを取り立てること。

五風十雨(ごふうじゅうう)・・・世の中が安泰であること。

日日平安(にちにちへいあん)・・・なんの心配もなく平穏無事なこと。

露見(ろけん)・・・秘密や悪事がばれること。

奸物(かんぶつ)・・・悪知恵のはたらく心のひねくれた人。

首魁(しゅかい)・・・悪事や謀反の首謀者。かしら。

粛清(しゅくせい)・・・厳しく取り締まって整え清めること。

逆手(ぎゃくて)・・・予想されるのとは反対に応じること。

諸兄(しょけい)・・・男性が多くの男性を親しみや敬意をこめていう。

誅殺(ちゅうさつ)・・・罪を咎めて殺すこと。

汗顔(かんがん)・・・顔に汗をかくほど恥ずかしいこと。

 

 

日本婦道記 墨丸 山本周五郎

【朗読】日本婦道記 墨丸 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作 日本婦道記より墨丸です。この作品は昭和20年婦人倶楽部に掲載されました。お石は五歳の時、みなしごとして鈴木家へ引き取られた。その時、平之丞は11歳、ずいぶん色の黒いみっともない子だと思った。お石ははきはきして立ち居もきちんとして、明るいまっすぐな性質に恵まれていた。色が黒いので平之丞の友達からは「お黒どの」とか「鳥丸」などと呼ばれていたが、平之丞はある時哀れになり、「黒いから墨丸がいい」と云い出し、それ以来少年たちは「墨丸」と呼ぶようになった。お石が十三歳になった年、平之丞の大切にしている翡翠の文鎮を貸してくれという。お石が思いつめた顔をしているのを見て平之丞は苦笑して「失くしてはいけないぞ」と云いながら取ってやった。お石は鈴木家に滞在する琴の名手、検校に師事して琴を習い始める。検校はお石は恵まれた才能を持つと云って絶賞した。そのころから平之丞はお石を見なおすようになり、だんだん心を惹かれるようになる。そしてそれがもっとも自然であり望ましくもあると信じたから鈴木家の嫁にと母に頼んだのだった。

かん太
お石は話があったとき、考えてみようともせずに断るんだ。そして琴で身を立てたいからと断って家を出ていくんだ。
アリア
お石のひとすじな心と、愛する人のために自分の幸福を捨てて、どんなおもいだったんだろうと思いました。でも平之丞と再会できてよかったよ!

日本婦道記 墨丸 主な登場人物

お石(墨丸)・・・5歳の時鈴木家へ引き取られる。琴も和学も才能があり、見かけも大きくなるにつれ肌は小麦色に、艶々と健康なまるみを帯びて髪もいつか赤みがとれ背丈も高くなった。下女に代わって風呂場を掃除したり、釜戸の火を焚いたり、薪を作ったり、料理は特に巧みで、粗末な材料からどんな高価なものかと思わせるようなものをよく拵えた。

平之丞・・・お石が来た時11歳だった。お石がいなくなってはじめてお石の存在の大きさに気づく。二十七歳で友人松井六弥の妹そでと結婚する。

鈴木宗兵衛・・・平之丞の父。吟味役。お石が誰の子か誰にも伝えないまま死ぬ。日記にも書かれておらず、証拠は何もなかった。

松井六弥・・・平之丞の友人。妹そでが平之丞と結婚する。

小出小十郎・・・お石の父。浪人者だったが、島原の陣でめざましくはたらき、前藩主忠善に見いだされて篤く用いられた。しかし、一徹な奉公ぶりで諫言をずばずば云い、忠義の怒りに触れて生涯蟄居となり、その日のうちに切腹して死んだ。

日本婦道記 墨丸 覚え書き

古雅(こが)・・・古風で優雅なこと。またそのさま。

文箱(ふばこ)・・・書状などを入れておく手箱。

琅玕(ろうかん)・・・翡翠の中でも最高級品のこと。

貶られる(そしられる)・・・けなす、おとしめる。

雪白(せっぱく)・・雪のように白いこと。

観桜(かんおう)・・・桜の花を観賞すること。

機微(きび)・・・表面だけでは知ることのできない、微妙な趣や事情。

御胤(おたね)

廉直(れんちょく)・・・心が清らかで私欲がなく、正直なこと。

無比(むひ)・・・ほかに比べるもののないこと。

諫言(かんげん)・・・目上の人の過失などを指摘して忠告すること。

重科(じゅうか)・・・重い罪科。重罪。

直諫(じきかん)・・・遠慮することなく率直に目上の人をいさめること。

嘆賞(たんしょう)・・・すぐれたものとして感じ入ること。

条理(じょうり)・・・物事の筋道。

惘然(もうぜん)・・・呆然と同じ。

述懐(じゅっかい)・・・思いを述べること。

讒訴(ざんそ)・・・他人をおとしいれようとして事実を曲げて言いつけること。

鞠問(きくもん)・・・罪を問いただすこと。

卒爾(そつじ)・・・だしぬけに。突然に。

蕭々(しょうしょう)・・・ものさびしい。

蒼茫(そうぼう)・・・見渡す限り青々として広いさま。

 

 

日本婦道記 小指 山本周五郎

【朗読】日本婦道記 小指 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「日本婦道記」より小指です。この作品は昭和21年講談雑誌に掲載されました。山瀬平三郎は極めておっとりとした気質で、川越藩秋元家の小姓組で書物番を勤めていました。平三郎には放心癖があって、(平三郎は十八歳で書物番を命ぜられてから始まったと信じているが)失敗というほどではないが時々顔を赤くする場合があります。袴の前後ろが分からなくなったり、出仕の支度で紙入れの代わりに旅を懐中したり、扇子を忘れて文鎮をもっていったりする例がいくらもありました。父の新五兵衛はそれをおおらかに笑っていましたが、母のなお女には心痛の種で、自分の愛していた小間使の八重を彼に附けることに定めたのでした。それから八重は平三郎の着替えの世話や、持ち物の心配や、寝床の面倒など身の回りのすべての世話をしました。平三郎は父の友人に勧められた縁談を承知した後で、出仕の支度で八重を見た時、自分の本当の気持ちに気が付くのでした。

日本婦道記 小指 主な登場人物

山瀬平三郎・・・小姓組書物番。父の友人からの縁談を承知したあとで八重に対する自分の気持ちに気付き、八重に結婚を申し込む。

八重・・・平三郎の母なお女に愛され、放心癖のある平三郎の身の回りの世話を五年間している。

山瀬新五兵衛・・・藩の中老。平三郎の父。挙措の静かな温厚一方の人。かつて怒ったり荒い声を立てたことはない。

なお女・・・平三郎の母。

日本婦道記 小指 覚え書き

式日(しきじつ)・・・儀式を執り行う日。

白扇(はくせん)・・・模様などのない白地のままの扇。

嬌態(きょうたい)・・・女性の媚を含んだなまめかしいふるまいや態度。

常着(つねぎ)・・・家にいて日常着る服。

挙措(きょそ)・・・立ち振る舞い。

放心(ほうしん)・・・心を奪われたりして魂が抜けたようにぼんやりすること。

心痛(しんつう)・・・心配して深く思い苦しむこと。

いなや・・・承知か不承知かということ。

病歿(びょうぼつ)

朴訥(ぼくとつ)・・・かざりけがなく口数がすくないこと。

柔和(にゅうわ)・・・性質や態度がものやわらかであること。

 

 

日本婦道記 春三たび 山本周五郎

【朗読】日本婦道記 春三たび 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「日本婦道記」より「春三たび」です。この作品は昭和18年婦人倶楽部に掲載されました。十七歳で和地へ嫁して三十日に足らない伊緒は、ある日、夫の伝四郎に天草の征討軍に加わることを知らされる。伝四郎は、自分が討ち死をしたら、もしまだ身ごもっていなかったら離別して実家へ帰れと云った。伊緒はみめかたちの美しい生まれつきで、早くから縁談が起こったが、容貌で望まれるものは、やがて容貌で疎んじられると云って父の八郎右衛門は頭を振り続けた。父の勧めで嫁した和地家は貧しく、御恩田を耕して細々と暮らしていた。父は伊緒を栄達させようとはしなかった。安楽な生涯をとも望まなかった。まことの道に沿っておのれの力で積み上げてゆく人生を与えてくれようとしたのだ。乱を平定して将兵が凱旋しても伝四郎は帰ってこなかった。戦場から逃げたと噂が絶えなかった。兄や玄蕃が進めたが、伊緒は実家へは帰らず、和地家を守った。それから三年・・・

日本婦道記 春三たび 主な登場人物

伊緒・・・伝四郎の妻。十七歳、みめかたちの美しい、まことの道を進む女。

伝四郎・・・戸田大垣藩の二十石徒士。天草征討軍に加わり行方不明となるが、戦場から逃げたと噂が立つ。

郁之助・・・伊緒よりひとつ年下の義弟。病弱で衰弱していく。

日本婦道記 春三たび 覚え書き

伊緒の父が遺してくれた「大空を 照りゆく月し 清ければ 雲隠せども 光なけくに」・・・大空を渡る月は、清らかに照るので、雲が隠してもその光は消えないのです。古今和歌集より

 

 

日本婦道記 箭竹 山本周五郎

【朗読】日本婦道記 箭竹 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「日本婦道記」より箭竹です。この作品は、昭和17年婦人倶楽部に掲載されました。将軍家光に世子が生まれた祝儀として、水野けんもつ忠善は久能山東照宮に石の鳥居を奉納することとなり、茅野百記はその事務頭として久能山に出張していた。百記はその出張先で私の争いで刃傷に及び、勤役中の不始末を申し訳なく思って切腹した。知らせを聞いた百記の妻みよは、召使たちにその旨を伝えて家内の始末をし、領内追放となって二歳の息子、安之助を連れて土地を去った。みよはその時から二十年、良人の遺志を継いで、微塵もゆるがぬ一心を貫きとおして良人の仕残した奉公をつぐない、安之助を育てるのだった。

日本婦道記 箭竹 主な登場人物

みよ・・・水野けんもつ忠善の家臣、茅野百記の妻。水野家の移封について行きながら安之助を育てる。

茅野百記・・・書院番、出張先で刃傷に及び切腹する。

安之助・・・百記とみよの子

六兵衛・・・茅野家の下僕。領内追放となったみよの世話をする。農家が自分のために作る丈夫な草鞋の作り方をみよに教える。

熊造・・・髭だらけで目が鋭い男。昔は海道を馬を曳いて往来した暴れ者だったが、今は伝馬問屋の主人でみよの長屋の主人。困っている人には身を剥いでも面倒をみている。

水野けんもつ忠善・・・岡崎藩主。

徳川家綱・・・十九歳、家光の闊達な気性をうけてうまれ、父に似てなかなか峻厳なところがおおかった。みよのつくった大願の文字のある弓に気付き、どこの誰が作ったものか調べさせる。

 日本婦道記 箭竹 覚え書き

筈巻(はずまき)・・・弓の矢筈の下の糸を巻いて固めたところ。

大願(たいがん)・・・大きなことを成し遂げようという願い。

闊達(かったつ)・・・広く物事にこだわらない様子。

峻厳(しゅんげん)・・・非常にきびしいこと。

不興(ふきょう)・・・機嫌がわるいこと。

精選(せいせん)・・・多くの中から良い物をよりすぐること。

粗忽(そこつ)・・・軽はずみなこと。

生害(しょうがい)・・・自害。

主従は三世(しゅじゅうはさんぜ)・・・現在、過去、未来にもわたる深い因縁があるものだということ。

安閑(あんかん)・・・のんびりとして静かなさま。

野風呂(のぶろ)・・・露天風呂。

難儀(なんぎ)・・・苦しみ悩むこと。

畷道(なわてみち)・・・田の間の道、まっすぐに長い道。

壮烈(そうれつ)・・・勇ましくて立派なこと。

 

 

 

 

日本婦道記 糸車 山本周五郎

【朗読】日本婦道記 糸車 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「日本婦道記 糸車」(昭和19年)です。今年十九になるお高は、松代藩につかえる今は病気で寝付いている父と幼い弟を抱えて、苦しい家計を支えるため、こまごました家事のいとまをぬすんで、松代藩の大切な産物、木綿糸をせっせと繰っては生計の足しにしていました。ある夜、父に呼ばれたお高は彼女の実の母親が思い病気にかかり、お高に一目会いたいので松本に来てくれるように云っていることを知ります。重い病に伏している産みの母のひとめ会いたいという言葉に強く宗を打たれたお高は、あとにもゆくさきにも落ち着かぬ気持ちで松代をたつのでした。家族とは何か、幸せとは何かを問う心温まるストーリーです。

日本婦道記 糸車 主な登場人物

お高・・・十九歳。父が倒れて以来、その看護や弟の世話、そして細々した家事のいとまを偸んで、せっせと木綿糸を繰っては生計の足しにしている。最近はその木綿糸を褒められることも多く、少しでもよい仕事をしようとつとめているお高にとってそれは何よりの喜びだった。

依田啓七郎・・・お高の父。松代藩につかえる五石二人扶持の軽いさむらい。温厚な人。二年前に卒中を病んで今は勤めをひき、寝たり起きたりしている。妻は松之助が三つの年に亡くなった。

松之助・・・お高の弟。十歳。名義だけ家督を継いでいるが、まだ元服もしていないのでお扶持は半分しかさがらない。

西村金太夫・お梶・・・お高の実の両親。はじめ身分が軽くたいへん困窮していたときにお高を依田へやったが、今は出世をしたのでお高を引き取りたいと考えている。

保之丞・・・西村の弟。まだ前髪だちで、お高の来ることに興味をもってお高に話しかけたり眺めたりする。

日本婦道記 糸車 覚え書き

魚籠(びく)…魚釣りの時に、魚をいれておく籠。

目笊(めざる)…編み目の粗いざる。

会所(かいしょ)…江戸時代に種々の目的をもって人の集会をしたところ。

家督(かとく)…相続すべき家の跡目。あとつぎ。

元服(げんぷく)…奈良時代以降、日本で成人を示すものとして行われた儀式。

扶持(ふち)…助ける意から転じて、武士が米などを給して家来、奉公人を置くこと。

素読(そどく)…意味の解釈を加えず、本の文字を読み上げること。

糸繰り(いとくり)…繭や綿花から糸を取り、より合わせること。またそれをする人。

行燈(あんどん)…照明器具の一つ。蝋燭や油脂をを燃料とした炎を光源とする。

小謡(こうたい)…謡曲中の短い一節を、謡うために特に抜き出したもの。

丹青(たんせい)…色彩

火桶(ひおけ)…木で作った丸い火鉢。

絢爛(けんらん)…華やかで美しいさま。

篤実(とくじつ)…情が深く誠実なこと。

情誼(じょうぎ)…人と付き合う上での人情や誠意。

 

 

日本婦道記より 桃の井戸 山本周五郎

【朗読】日本婦道記より 桃の井戸 山本周五郎 読み手アリア

 

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「日本婦道記」より桃の井戸です。この作品は昭和19年文藝春秋に掲載されました。旧題は「琴女おぼえ書」でした。主人公・琴の和歌の師匠、長橋のおばあさまが八十七歳で亡くなられたところから始まります。琴は、孫でも血縁でもないけれど、師匠をおばあさまと呼び、しばしば桃の井戸のある隠居所へ訪ねて行ってはお知恵を借りたりお訓を受けていた。長橋のおばあさまのかたみに、琴があったことのあらましを書き綴る回想で描かれています。

日本婦道記より 桃の井戸 主な登場人物

琴・・・保持忠太夫の娘。三人兄がある末っ子。みめかたちが美しくないと気づいているため、十六歳で始めた才能のある和歌で身を立てようと思っている。母が病気で亡くなったため、何事も長橋のおばあさまに相談するようになる。

大人(うし)・・・琴が江戸にいたころの和歌の師匠。

長橋千鶴・・・江戸から国許へ移ってからの和歌の師匠。藩の医家の家柄。

萩原直弥・・・琴の良人。御側勘定役、息子が二人あるが、妻に死なれてしっかり子育てのできるのちぞえを探していた。

日本婦道記 桃の井戸 覚え書き

長命(ちょうめい)・・・長生き。

奥義抄(おうぎしょう)・・・平安後期の歌学書。

休聞抄(きゅうもんしょう)・・・源氏物語の注釈書。

相聞(そうもん)・・・互いに相手の様子を尋ねること。

良人(りょうにん)・・・夫。

病葉(わくらば)・・・病気や虫のために変色した葉。

左義長(さぎちょう)・・・小正月に行われる火祭りの行事。

粗朶(そだ)・・・切り取った木の枝。

 

 

 

日本婦道記より 障子 山本周五郎

【朗読】日本婦道記より 障子 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、日本婦道記より障子です。この作品は昭和18年、婦人倶楽部に掲載されました。山本周五郎40歳の作品です。

日本婦道記 障子 主な登場人物

かの子・・・藤田虎之助(東湖)の妹。女塾を開いて家計を助けている。女塾であいまあいまに尊王の道、攘夷の心がまえを説いている。

久木直二郎・・・水戸藩士。虎之助の門人。かの子に直接求婚する。

藤田虎之助・・・水戸藩士。尊王攘夷運動を推進している。

里子・・・虎之助の妻。かの子の兄嫁。

梅子・・・かの子、虎之助の母。

日本婦道記 障子 覚え書き

粉骨(ふんこつ)・・・力の限り努力すること。

幽谷(ゆうこく)・・・奥深い静かな谷。

遁辞(とんじ)・・・言い逃れの言葉。

卑近(ひきん)・・・身近でありふれていること。

指紙(さしがみ)・・・江戸時代に役所から個人を呼び出す召喚状。

依怙(えこ)・・・不公平、ひいきにすること。

幽囚(ゆうしゅう)・・・捕らえられて閉じ込められること。

外夷(がいい)・・・外国や外国人をいやしめて使う語。

困苦(こんく)・・・困り苦しむこと。

 

 

 

晩秋 山本周五郎

【朗読】晩秋 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「晩秋」(昭和20年/講談雑誌)です。進藤主計は冷酷な人間として定評があった。岡崎藩主、水野忠善の用人として、20年近く藩政の実権を握っていたが、常に専断、頑迷、暴戻などと云われ、ことに最近は領内の寺院に対する圧迫と年貢の重課で非常な怨嗟の的になっていた。都留の父は勘定奉行所に勤めていたが、主計の重税政策をみかねてしばしば上申書を呈出し、その肯かれざるを怒って城中にこれを刺そうとした。しかし不幸にも邪魔が入って失敗し、切腹を命ぜられて死んだのである。その後、十三歳の都留と母親は密かに老職の中村惣兵衛に引き取られた。母は二年前に病死し、十五歳になった都留は、いつかは父の遺志を果たそうと固く心に誓っていた。そんな都留に惣兵衛は、老職の水野外記の家に江戸からお上の御不審のかかっている進藤主計がお預けになってやってくる為、都留に身の回りの世話をするようにと云う。

 

晩秋 主な登場人物

都留・・・父の仇を討つために、母の遺愛の懐剣を懐に忍ばせて進藤主計の世話をする。お預かりの身の主計の日常を見ることで、少しずつ主計の執った藩政を理解する。

進藤主計・・・水野忠義の用人、小柄で痩せた髪もほとんど灰色で、朽葉色の顔は皺が多くたるんで、頬のあたりに醜い老年性のしみがある。着物も袴も粗末で、全体がいかにもみすぼらしく貧しい農家の老翁という感じ。

水野外記・・・老職。「岡崎の柱石」と呼ばれる。中年の背の高い武士。無理に引き結んでいるような口つきに特徴のある、頬骨の尖った冷たい感じの男。別墅に主計を預かる。

中村惣兵衛・・・都留と母親を預かる。

鈴木主馬・・・目付役。国許で俊敏の名の高い人。

晩秋 覚え書き

端近(はしぢか)・・・家の中で出入口に近いところ。

私曲(しきょく)・・・不正な手段で自分の利益をはかること。

別墅(べっしょ)・・・別荘。

塵芥(じんかい)・・・ごみとあくた。

咳(しわぶき)・・・せき。

遺愛(いあい)・・・死んだ人が生前に愛用していたもの。

朽葉色(くちばいろ)・・・枯れた落葉のような色。

老翁(ろうおう)・・・年老いた男。

夜を日に継ぐ(よをひにつぐ)・・・昼夜を問わずに

奸譎(かんけつ)・・・よこしまで心の偽りが多い。

佞臣(ねいしん)・・・口先巧でへつらう家臣。

専断(せんだん)・・・自分だけの考えで物事を決定する。

頑迷(がんめい)・・・かたくなで物の道理のわからない。

暴戻(ぼうれい)・・・荒々しく道理に反する行為をする。

怨嗟(えんさ)・・・うらみ嘆くこと。

秕政(ひせい)・・・悪政。殻ばかりで実がない。

然なり(しかなり)・・・そうである。

壟断(ろうだん)・・・いやしい人間が利益や権利を独占すること。

行蔵(こうぞう)・・・進んで世に出て手腕をふるうこと。

糾明(きゅうめい)・・・罪や不正を糾問し、真相を明らかにすること。

剔抉(てっけつ)・・・えぐり出すこと。

可憐誅求(かれんちゅうきゅう)・・・情け容赦なく税金を取り立てること。