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なんの花か薫る 山本周五郎

【朗読】なんの花か薫る 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「なんの花か薫る」(昭和31年)岡場所ものです。若い侍が泥酔して人を斬って追われ、お新のところへ飛び込んできます。お新は彼を危ないところから助け、それから若侍はお新のところへ通ってくるようになります。「客に惚れるな。」と口癖のように云ってた菊次姐さんが「あの人あんたに夢中よ。」「あんたをお嫁さんにもらうんですって。」と云ってから段々少しづつお新もその気になっていきます。話が進むにつれて「もしかしたら・・・いえそんなことあるわけないじゃないの・・・でもひょっとして・・。」と読んでいる私たちも主人公お新と共にハラハラドキドキしていきます。(大炊介始末/新潮文庫)

かん太
菊次姐さん、「あの人あんたに夢中よ。」なんてそんなこと言っちゃダメですよー!と叫びたくなりました。そして、ある出来事をきっかけに半信半疑だったお新の気持ちが一気に燃え上がるんだよ!嗚呼・・!
アリア
房之介は三日に一度きちんと訪ねてくるんだ。店が暇な時は、お新の部屋にみんなを呼んで茶菓子を買ったり、てんや物をとったりして誰とでも話した。しかし彼は決して泊まらないし、お新の躰にも触れなかったんだ。
かん太
お新は、房之介がまだ女を知らないとわかったとたんから、にわかに彼が遠くなるように感じるんだ。ぐんぐん遠くはるかに遠くなるように。そして暗い不安な感じにおそわれるんだ。
アリア
房之介と岡場所の女たちの温度差がよく描かれています。だからといって安易に「嫁にもらう。」などと云うのはねぇ。
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なんの花か薫る 主な登場人物

お新・・・岡場所の女、十八歳。やくざな父とおとなしいだけの母、病身の妹のために生活に困り、十六で身を売った。しかし丑の年の大火で家族は死んだ。

江口房之介・・・二十二歳。藤堂和泉守の家中で江口家の一人息子。初心なおぼっちゃん。細い躰つきで背丈もあまり高くない。泥酔して喧嘩騒ぎを起こし、鳶の者を二人斬って勘当され、叔父の家に預けられている。喧嘩騒ぎの時に岡場所へ逃げ込んで、お新に助けられる。

菊次・・・岡場所で一番年嵩の二十八歳。十四で身を売られてからずっと男で苦労した。いつもつまらない男に引っ掛かり、裸になるまで貢いだ。しっかりした性分で、ここで唯一読み書きができ、芸事も縫針もできる。「客に惚れるな。」が口癖。店がひまで、皆にせがまれると曽我物語を読んでやる。自分の葬式代だけたまればよいといってあくせくしない。

おみの・・・岡場所の主婦。菊次と前からの友達で新吉原の小格子でいっしょだった。

みどり・・・岡場所の女。十九歳。男が好きだからこのしょうばいにはいったといばっている。あのことに人と違った癖がある。

吉野・・・岡場所の女。二十歳。里にやってある子供がいる。

千弥・・・岡場所の女。二十歳。母親とぐれた兄を背負っている。正月近くにくら替えをする。

おせき・・・岡場所の女。二十二歳。千弥と入れ替わりに入った。器量も悪くないし、底抜けに人がいい。

何の花か薫る 覚え書き

とっつき・・・いちばん手前。

年嵩(としかさ)・・・年齢がほかの人より多いこと。

尋常(じんじょう)・・・特別でなく、普通であること。

地回り(じまわり)・・・やくざ

いい面の皮(いいつらのかわ)・・・割に合わないことに出会ったときに、自嘲したり、同情したりしていう語。

大身(たいしん)・・・身分が高いこと。位が高く禄の多いこと。

痴話喧嘩(ちわげんか)・・・痴話からおこるたわいない喧嘩。

不首尾(ふしゅび)・・・最後がうまくいかないこと。また、そのさま。

内祝言(ないしゅうげん)・・・内々に祝言すること。

 

 

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