【朗読】壱両千両 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「壱両千両」(昭和23年)です。世間はひどい不景気だ。一昨年から不作凶作が続いて春先から施粥のお救い小屋に人々が列をなしている。下町人の生活が活き活きと描かれています。
壱両千両 主な登場人物
杉田千之助・・・庄内藩の勘定方に勤めていたが、藩の頽廃不正についていけず、奉行の渡辺仁右衛門と衝突して退身した。
池野源十郎・・・池野道場の主。竹刀は持たず、稽古は千之助に任せ、刀剣売買の中次ぎに奔走。ぬけ商売の用心棒に手を染めようとする。
およね・・・十九歳、同じ長屋の六兵衛の孫。大根河岸の料理茶屋「八百梅」で働いている。
六兵衛・・・およねの祖父。元飾職。現在は痛風で寝込んでいる。千之助は彼と話すと気持ちが晴れる。
富三(富兵衛)・・・同じ長屋の建具職。博奕好き。千之助にお金を借りて富岡八幡の千両富くじを買う。
熊五郎・とら・・・千之助の隣りに住む魚屋夫婦。となりから聞こえてくる二人の会議が千之助の癒し。
渡辺仁右衛門・・・元庄内の勘定奉行。現在は江戸詰めで勘定奉行。不正な金をばら撒いて味方を増やしていた。
壱両千両 あらすじ(※ネタバレを含みます)
千之助の家は庄内の家臣で、千之助は勘定方に勤めていたが、不徳と無恥に汚れた役所内部の頽廃不正についてゆけず、奉行の渡辺仁右衛門と衝突して退身した。浪人して江戸へ出て三年。食い詰めて池野道場の師範として勤めたが、世間はひどい不景気で一昨年から不作凶作が続き、春先から施粥のお救い小屋に人々が列をなしている。内職も奪い合いで、手間賃も話にならない安さ、日雇い人足も棒手振りも同業が多く、共食いの形だった。
壱両千両 覚え書き
虚名(きょめい)・・・実力以上の評判や名声。
足許に火がつく・・・危険が近づくこと。
不徳(ふとく)・・・人の行うべき道に反すること。
無恥(むち)・・・恥を恥と思わないこと。また、そのさま。
頽廃(たいはい)・・・衰えてすたれること。くずれ荒れること。
闇討ち(やみうち)・・・闇にまぎれて人を襲うこと。不意を襲うこと。
施粥(せがゆ)
老獪(ろうかい)・・・いろいろの経験を積んでいて悪賢いこと。
汚吏奸商(おりかんしょう)・・・汚職、不正する役人と不正な手段を用いて利益を得ようとする悪賢い商人。
悄然(しょうぜん)・・・元気がなくうちしおれているさま。
小股の切れ上がった・・・女性のすらりとして粋なさま。きりりとして小粋な婦人。
廂間(ひあわい)・・・建て込んだ家の間のひさしとひさしが接するような狭いところ。
双肌(もろはだ)・・・衣の上半身を全部脱いで、両肌を現す。
嬶(かかあ)
誹謗(ひぼう)・・・人を悪く云うこと。
箆棒(べらぼう)・・・程度がひどいこと。はなはだしいこと。
孑孑(ぼうふら)
蹉跌(さてつ)・・・物事がうまく進まずしくじること。
海月(くらげ)
頓痴奇(とんちき)・・・人をののしる言葉。とんま。
柘榴口(ざくろぐち)・・・江戸時代の浴場で、洗い場から湯舟への出入口。湯が冷めないようにからだを屈めて出入りした狭い入口。
暗紅(あんこう)・・・黒みがかった赤い色。黒ずんだ紅色。
回米(かいまい)・・・江戸時代、米の回送のこと。