【朗読】 千代紙行燈 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「千代紙行燈」(昭和14年)周五郎先生36歳の作品です。同年だけで、「奇縁無双」「峠の子守唄」「違う平八郎」「粗忽評判記」「金作行状記」等など書かれています。
千代紙行燈 主な登場人物
奈美・・・十八歳。病める緋牡丹といった美しさ。江戸表日本橋小伝馬町の呉服商、松田屋の主人。身体が弱く父母を亡くして悲しい身の上。
そで・・・奈美のばあや。
佐伯助次郎(若様金三)・・・播州浪人。旅の道中さらわれそうになった奈美とそでを助ける。
喜右衛門・・・松田屋の支配人。うわべは実直だが、腹はよくない男。
痕権(痕の権兵衛)・・・高頬に刀痕のある男。かみそりのような眼をしている。
千代紙行燈のあらすじ (※ネタバレを含みます)
藤沢の宿から江ノ島に向かって歩いてた奈美とばあやのそでは、突然後ろから走ってきた若侍に、宿で彼の金子を盗み去った者と間違われる。すぐに誤解は解けたが奈美は若侍にひと眼の恋をした。・・・しかしすぐに若侍は走り去ってしまった。一夜経って旅の帰りの道中、身代金目的に痕の権兵衛にさらわれそうになる奈美とばあやのそでは、偶然、先日の若侍に危ないところを助けられる。若侍は播州浪人の佐伯助次郎といい、江戸の身寄りの者を訪ねていく途中だった。助次郎はそでの勧めで奈美の住む橋場の寮の離家に立ち寄ることになった。そこは千坪の敷地に贅を凝らした母屋と茶室風の離室が建っていた。滞在して七日目、助次郎は奈美の琴の音に足を止めた。それは「千鳥の曲」であった。亡くなった母代わりの姉がよく弾いていた曲である。助次郎はこの曲を聴くと気の優しかった姉を思い出す癖がついていた。奈美は、助次郎の姉の話を聞き、自分の悲しい身の上に重ね、涙するのであった。そこへ、そでがやって来て奈美の哀れな身の上を語った。松田屋の主人は五年前に死んだ。店は京の松田屋の系統で、京の方を本店と呼んでいた。ひと頃は、本店の二男辰之助を奈美の婿に迎える話もあった。しかし、支配人の喜右衛門がうわべは実直に装いながら店の勢力を自分の手に握り、本店と手を切るように謀っていた。奈美と辰之助の縁談も自然と消滅したのだった。さらに喜右衛門は自分の倅を奈美の婿にと計りはじめていた。話を聞いた助次郎は、「長者番付に載っている大家でも裏にはこんな悲劇がある」と深くため息をついた。
千代紙行燈 覚え書き
従類(じゅうるい)・・・一族、家来の総称のこと。
人品(じんぴん)・・・人としての品格。特に身なり、顔立ち、態度などを通じて感じられるその人の品位。
辻斬り(つじぎり)・・・武士が刀剣の切れ味や自分の腕を試すために往来で人を斬ったこと。
追剥ぎ(おいはぎ)・・・通行の人をおびやかして衣類や持ち物などを奪うこと。
恰幅(かっぷく)・・・肉付きや押し出しから見た、からだの恰好や姿。
理非(りひ)・・・道理にかなっていることと外れていること。
詠歎(えいたん)・・・物事に深く感動すること。
野面(のづら)・・・野のおもて、野原。
荒涼(こうりょう)・・・荒れ果ててものさびしいこと。また、そのさま。
妙筆(みょうひつ)・・・非常にすぐれた筆跡。また、その書画や文章。