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乱刃ふたり蔵人 山本周五郎

【朗読】乱刃ふたり蔵人 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回の作品、乱刃ふたり蔵人は、昭和11年新少年に掲載されました。

 

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乱刃ふたり蔵人 山本周五郎 あらすじ

厳しい霜の朝、薩摩の片隅に暮らす土岐家。亡き夫の遺志を胸に、後妻のお弓は、まだ若き義子・蔵人を立派な武士に育て上げようと、密かに神に祈りを捧げていた。小雪という娘もまた、蔵人の許婚として彼の行く末を案じ、祈りに加わる。

しかし蔵人は、武芸や戦を忌み嫌い、継母に対して深い誤解と不信を抱いていた。「戦場に送り出して死なせ、甥に家を継がせるつもりだ」と。恐れから逃げたい一心で、自らの留守役という命を甘んじて受け入れようとする。

それを察したお弓は、命を賭けてでも蔵人を男にする覚悟を見せ、自ら嘆願して出陣の許可を取りつけるのでした。

乱刃ふたり蔵人 山本周五郎 主な登場人物

土岐 蔵人(とき くらんど)
物語の主人公。18歳の若武者。心優しく、武芸や戦を嫌う性格。父を早くに亡くし、継母・お弓に育てられるが、その愛情を理解できず、長らく誤解と反発の念を抱いていた。

お弓(おゆみ)
蔵人の継母。故・十郎兵衛の後妻。気丈で強い女性でありながら、蔵人のために夜明け前から神社に通い続け、祈願を捧げていた。蔵人に代わって戦場に赴く覚悟を持つ深い愛情の持ち主。

山内 小雪(やまのうち こゆき)
蔵人の許嫁。武家の娘で聡明かつ心優しく、蔵人とお弓の間に立って真実を伝える。

土岐 十郎兵衛(とき じゅうろうべえ)
蔵人の実父。島津家きっての勇士として名を馳せた人物。死に際に「蔵人を立派な武士にせよ」とお弓に託す。

朝岡 三之丞(あさおか さんのじょう)
蔵人の友人。朗らかで快活な青年。白松城攻めの報せを伝える。

菅谷 菊之助(すがや きくのすけ)
お弓の甥。蔵人と同年齢。

アリアの備忘録

お弓は継母でありながら、実の子以上に蔵人を愛し、育てようと心を砕きます。祈り続けた社の階段に残る「手の跡」は、目に見えぬ愛情が年月をかけて石をも穿つことを象徴しています。蔵人は継母の愛を疑い、卑劣な誤解さえ抱きますが、それでもお弓は最後まで彼を信じ、戦場に身を投じます。

作者は血縁に頼らぬ「育ての母の愛」を通じて、人の心の美しさや深さを伝えたかったのでしょう。いい話でした。

 

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