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上野介正信 山本周五郎

【朗読】上野介正信 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。昭和23年(1948年)45歳のときに執筆され、小説新潮に掲載された時代小説です。孤独に生きる庭番・茂助と、質素倹約を貫く殿さま・堀田正信。武士の本分を重んじるあまり、周囲から浮いてしまう二人だが、静かに心を通わせていく。しかし、ある出来事をきっかけに茂助は屋敷を追われ、やがて殿さまの身にも波乱が訪れる。信念と誇りを賭けたその生き様を、茂助は最後まで見届けようとするが――。

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上野介正信 あらすじ

無口で人付き合いを避け、ひっそりと暮らす庭番の茂助。堀田家の庭で果樹を育てる彼は、武士たちから「爺さん」と呼ばれ、孤独に生きていた。しかし、そんな彼の静かな日々に、殿さまである堀田正信がしばしば訪れるようになる。倹約と質素を貫き、正義を信じる正信は、家臣たちに疎まれながらも、茂助には心を許し、己の想いを語った。

ある日、茂助は突然屋敷を追われる。理由も知らされぬまま、彼は生家へ戻るが、心は殿さまの孤独を思い続けた。そんなある日、正信が幕府に逆らい、城に立てこもったという報せが届く。だが、戦うことなく降伏した正信は「発狂」とされ、領地を奪われ、遠くへ流される。茂助は絶望しながらも、淡路島に幽閉された殿さまに会うため旅立つ。そして「御好物の干柿を持ってあがりました、――殿さま、茂助でござります」そう語りかける茂助の声は、静寂の中に消えていった。

上野介正信 主な登場人物

茂助(もすけ)

・堀田家の庭番として果樹畑の世話をしていた男。
・無口で人付き合いを避け、孤独に生きる。
・殿さま(堀田正信)から信頼を得て、心の内を打ち明けられる。
・屋敷を追われた後も正信のことを思い続け、最期の地・淡路島へ旅立つ。

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堀田正信(ほった まさのぶ)

・佐倉藩(十二万石)の領主で、「上野介」と称される。
・倹約と質素を貫き、武士の本分を重んじるが、家臣や周囲から疎まれる。
・幕府の政治に疑問を持ち、諫言をした末に幕府に反逆するも、家臣の説得により降伏。
・幕府から「発狂」とみなされ、各地を転々とした末、淡路島で幽閉され、自害する。

茂助の家族

市兵衛(いちべえ) … 茂助の甥で、植木職の家を継いでいる。茂助を気にかける。
お直(おなお) … 茂助の兄嫁。長年家を守り続ける。
茂助の兄(源助) … すでに亡くなっている。
お菊(おきく) … 茂助の元妻。職人と不義を働き、茂助に捨てられる。

堀田家の関係者

家臣たち … 正信の厳しい倹約生活に不満を抱き、陰口を叩く。
国家老 … 佐倉城で正信を説得し、城門を開かせず、謹慎させることで謀反を未然に防ぐ。
組頭(くみがしら) … 茂助を屋敷から追い出した人物。「出る杭は打たれる」と忠告する。

幕府・他藩の関係者

酒井空印(さかい くういん) … 正信の外祖父。幕府の重臣であり、彼の影響力が強い。
伊豆守松平信綱(まつだいら のぶつな) … 幕府の重鎮。正信の反逆を「発狂」と処理することを決定する。
脇坂淡路守(わきさか あわじのかみ) … 幕府の命で正信を預かる大名。
松平阿波守(まつだいら あわのかみ) … 正信の預かり先を管理する大名。

淡路島での関係者

中老の侍 … 正信の最後を茂助に伝えた人物。
番士(ばんし) … 正信の謫居を管理する兵。茂助を中老の侍へ取り次ぐ。

総括
孤独な庭番・茂助と、孤高の殿さま・堀田正信の交流を中心に、堀田家の家臣たちや幕府の権力者が物語の背景を形作る。茂助の家族も彼の孤独な生き方に関わりながら、最後には正信の悲劇的な運命が茂助の人生に深い影を落とす。

 

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