【朗読】忠弥恋日記 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。昭和13年、34歳の作品、講談雑誌に掲載されました。今回の忠弥恋日記の主人公、丸橋忠弥はとにかく短気で真っ直ぐな性格。「女なんぞ」と言いながらも、お富美のことで心が揺れ、無茶な行動に出るのが見どころ。片桐安房守の屋敷へ単身乗り込む場面は、まるで時代劇のヒーローのようでワクワクします。
忠弥恋日記 山本周五郎 あらすじ
江戸の槍術指南・丸橋忠弥は、武士の誇りに生き、女色を嫌うと言い続けていた。だが、日々道場の世話をしてくれる娘・お富美の姿が、いつしか心の奥底に刻まれていたことに気づかぬまま、ただひたすら武芸に励んでいました。
ある日忠弥は、お富美が片桐安房守の屋敷に奉公に出されると知ります。しかしそれは単なる奉公ではなく、彼女が殿の愛妾にされる運命にあることを知った忠弥は、激しい怒りとともに、たった一人で大名屋敷へと一人乗り込んでいきます。
主な登場人物
丸橋 忠弥(まるばし ちゅうや)
主人公。出羽国山形の郷士の出身で、宝蔵院流槍術の達人。江戸に出て道場を開くが、粗忽で性急な性格から「せかちば(性急坊)」とあだ名される。女色を嫌うと公言していたが、道場を手伝うお富美に無意識のうちに惹かれていた。お富美を救うため片桐安房守の屋敷へ単身乗り込み、彼女と結ばれる。
お富美(おとみ)
近所の商家「金満津屋」の娘。忠弥の道場で台所仕事を手伝っていた。美しく慎ましいが、忠弥への一途な想いを秘めている。片桐安房守の屋敷に奉公に出されるが、実は殿の妾にされる運命だったと知り、助けを求める。忠弥と結婚するも、五年足らずで病死する。
兼松 又四郎(かねまつ またしろう)
旗本五千石の武士で、宝蔵院流の槍の名手。武勇に優れるが風流を解し、絵の才能もある。忠弥とは槍を交えて互いを認め合い、親友となる。忠弥の戦いを助けるべく、自家の宝である「権現様拝領の鉢巻」を貸し、その結果、忠弥の突入が成功する。
宝蔵院 胤舜(ほうぞういん いんしゅん)
宝蔵院流槍術の師範で、当代随一の槍の名手。かつて忠弥に槍術を指南した師であり、彼の成長を見守る。兼松又四郎と通じて忠弥の力を試し、結果的に彼の運命を導くことになる。
金満津屋 伝五郎(きんまんつや でんごろう)
お富美の父で、江戸で名の知れた商人。忠弥の人柄を見込み、娘を道場に手伝いに出していたが、お富美を片桐安房守の屋敷に奉公に出すことになる。実は彼自身、お富美の忠弥への想いを理解していた。
三百屋 米吉(さんびゃくや よねきち)
江戸で悪口の代弁や口利きを商売にする男。片桐安房守の屋敷の悪評を広める仕事を引き受け、忠弥と関わる。お調子者だが、人情があり、忠弥にお富美の危機を知らせる。
進藤 鬼源太(しんどう おにげんた)
片桐安房守の家臣で、三十人力と称される巨漢の武士。忠弥の乱入に立ちはだかるが、一槍で倒されてしまう。
片桐 安房守(かたぎり あわのかみ)
十一万石の大名で、幕府の旗本。お富美を屋敷に迎え、側女にしようとするが、忠弥の襲撃により失敗し、結局泣き寝入りすることになる。
杉原(すぎはら)
片桐安房守の用人。お富美を見初めて奉公を持ちかけ、彼女を主君の妾に仕立てようとする黒幕的存在。
多助(たすけ)
忠弥の老僕(召使い)。故郷の山形から忠弥に従って江戸へ来た。忠弥が荒れてゆく様子を見守りつつも、深い理解と憐れみの眼差しを向ける。
松三(まつぞう)
金満津屋の若い者。お富美の危機を忠弥に伝えるため、彼女の手紙を持ち出して助けを求める。忠弥と共に片桐屋敷に乗り込む。