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お美津簪 山本周五郎

【朗読】お美津簪 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒やしの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「お美津簪」です。この作品は昭和12年キング増刊号に掲載されました。三十四歳の作品です。下町もので運命に翻弄される若者、正吉の悲劇的な人生を描いています。純愛と裏切り、懺悔、後悔、そして運命の皮肉が織りなす悲哀の一幕です。最後までお楽しみください。

お美津簪 主な登場人物

正吉・・・長崎から十二歳の時に筑紫屋茂兵衛の店に奉公にきた若者。気質もよく人品も優れているうえ、人並み以上の敏才だったので、主人に目をかけられていたが・・・

お美津・・・筑紫屋茂兵衛の次女。正吉と恋に落ちる。

お紋・・・筑紫屋の裏に住んでいた薗八節の師匠。裏ではいかがわしい商売をしている。正吉を狙っていた。

筑紫屋茂兵衛・・・正吉の父親とは友人。江戸でも有数の唐物商。正吉を見込んで長女の婿にして跡取りにしようと考えていた。

辰次郎・・・イタチの辰次郎と呼ばれる無頼者。いかさま賭博を正吉に持ちかける

お美津簪 あらすじ

正吉はかつて、長崎から江戸に出て奉公していた頃、唐物商の筑紫屋茂兵衛の次女であるお美津と密かに恋を育んでいました。しかしそれは、茂兵衛の長女の婿にと考えていたこととは違ったため、彼ら二人は厳しい罰を受けます。やがて正吉は自暴自棄になり、悪女お紋に騙され、罪の道に堕ちていきます。全てが狂い始めた正吉の人生は、労咳という不治の病と共に暗く閉ざされてしまいました。

ある日、正吉は夢の中でお美津との懐かしいひと時を追憶します。目覚めた後も、お美津への想いが胸を締め付け、過去の失った日々に胸を痛めます。しかし彼の現実は厳しく、逃げ場のない泥沼のような生活が続きます。そんな中、長崎にいる母親に会うために、最後の力を振り絞り、故郷へ帰ることを固く決心するのでした。

津簪 アリアの感想と備忘録

出だしの土蔵の場面は、映画のワンシーンのように鮮やかに描かれていて、とても引き込まれました。筑紫屋茂兵衛は長女と正吉を結婚させて正吉に跡を継がせるつもりだったのに、恋に落ちたのは妹のお美津と正吉なのですが、姉娘が一度も登場しなかったのが残念でした。でも正吉の行動や心の変化がとてもリアルに描かれていて、罪悪感、後悔、希望など色々な感情が入り混じって伝わってきました。真人間に戻りたいと願いながらもなかなか抜け出せない様子には、もどかしさと同時に、どこか共感する部分もありました。どんなに堕ちても希望を捨ててない正吉の姿に、何かしらの救いが見えた気がします。真人間になろうと、自分を取り戻そうとする姿は、時代を越えって心に響くものがありますね。

 

 

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