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さぶ2 山本周五郎

【連載朗読】さぶ2 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「さぶ2」です。(二の一~二の五)二人が小料理屋「すみよし」に行ったのは、二た月後の四月だった。そこで二人は、若い女中に「あたしのこと覚えてない」と聞かれる。彼女は五年前に、両国橋のところで傘をさしていけといった子だった。名はおのぶ。二人は休みの日には「すみよし」へ通うようになったが、さぶはすっかりおのぶが好きになったようで、なんとか口実をつくっては手土産を買ってゆくが、自分では渡せず、栄二に頼んで渡すのが例になっていた。もちろんおのぶもそれに感づいていた。「すみよし」を出てから堀っ端のところでさぶは急に立ち止まり、

かん太
「おら、思うんだが・・・」さぶは糊作りしかできない自分のゆく先に望みがもてないことをみじめな弱々しい声で栄二に話すのだった。
アリア
そんなさぶに栄二は、「もしおれが自分の店を持つようになったら、おめえといっしょに仕事をしようと思うんだ。二人で一緒に住み、おめえの仕込んだ糊でおれが表具でも経師でも立派な仕事をして見せる。お互いにいつか女房をもらうだろう、そして子供もできるだろうが、それからも二人は離れやしねえ。いつまでも二人でいっしょにやっていって、芳古堂に負けねえ江戸一番の店に仕上げるんだ。」おめえはどう思う、おれとやるのはいやか。と云うんだ。
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さぶ2 主な登場人物

おのぶ・・・小料理屋「すみよし」の女中。十八歳。五年前に二人に会ったことがある。

おみつ・・・十九歳。「芳古堂」の娘。嫁にいった。あまり器量よしではなく、家にいる時分から人の好き嫌いが激しくて職人たちのあらさがしをしたり、ありもしないことを親に告げ口をするというふうだった。嫁にいっても不平が多く、しばしば実家に帰ってはみんなに当たりちらすのだった。

和助・・・「芳古堂」の兄弟子。五月に浅草の東仲町に「香和堂」という自分の店を持ち、十五歳の小僧、半次をもらっていった。

さぶ2 覚え書き

へちまもねえ・・・糸瓜の皮とも思わない、つまらないものとも思わない。少しも気にかけない。

追従(ついしょう)・・・他人の気に入るような言動をすること。

地廻り(じまわり)・・・盛り場をなわばりとしてぶらぶらするならず者。やくざ。

糊の仕込み・・・さぶの糊の仕込みの様子をちょっと。五升樽くらいの桶に、小麦粉をよく水で練り上げて袋に入れて揉むと白い水が出る、それを沈殿させて壺にいれて日陰の土に壺の半分を埋めて貯える。そして二年から三年ねかせる。

かん太
後戻りする話ばかりするさぶに栄二は、「おめえはいつも気持ちを支えてくれる大事な友達なんだ。おめえはみんなにぐずやぬけてるなどとも云われながら、辛抱強く、黙って、石についた苔みてえに、しっかりと自分の仕事にとりついてきた、おらあその姿を見るたびに、これが本当の職人根性ってもんだって自分に云いきかせたもんだ。」って励ますんだ。
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