【朗読】虚空遍歴 山本周五郎 連載第2回 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は山本周五郎作「虚空遍歴」連載第2回です。主人公の冲也と一緒に暮らすばあやのお幸と、友人の生田が登場します。冲也と生田のやり取りから互いの異なる性格や価値観が浮き彫りになっていて興味深いです。
虚空遍歴1の1 主な登場人物
中藤 冲也・・・常磐津小松太夫、呼び名はただ冲也。旗本の二男だが武家を捨てて芸の道に生きる。体つきは逞しく、筋肉の引き締まっていて動作も極めて敏捷で柔軟。力のこもった一文字なりの唇と色の白い頬に髭の剃り跡が青い。
生田半二郎・・・冲也と同じ旗本出身で冲也の幼友達。女性問題で常磐津を破門される。冲也を一度ぶん殴ってやりたいと言う。
お幸・・・新石町に冲也と暮らすばあや。
常磐津文字太夫・・・常磐津の大師匠。住吉町。
十三蔵(伊佐太夫)・・・常磐津の師匠。文字太夫の弟子。
虚空遍歴1の1 あらすじ
冲也は朝風呂から上がって、陽の当たる縁側に腰をかけて髭剃りを始める。ばあやのお幸は、彼に風邪をひかないよう注意し、朝早くから生田が来ていることを伝える。酒を飲んでいた生田は冲也に住吉町の大師匠と呼ばれる文字太夫に破門されたこと、それは十三蔵の中傷によるもので、生田は十三蔵を殴ったこと、そして冲也が十三蔵を助けたことを非難する。十三蔵は去年の都座の「桂川」で常磐津が出語りを勤めた時、常磐津の一派から出た富本ぶしを出語りに使わせようと働きかけた。この企みは大師匠に対する裏切りであるから文字太夫は怒って十三蔵を破門にしたのだった。
ばあやのお幸が酒を持ってくると、二人は暗い客間で重い空気の中話を続ける。生田は十三蔵への怒りと、自分を破門に追い込んだ出来事を語りながら冲也への忠告を繰り返す。昼夜はその忠告を冷静に受け流し、彼の言葉に穏やかに答えるのだった。そして冲也は部屋を出る。
虚空遍歴1の1 アリアの感想と備忘録
冲也の落ち着いた冷静な態度に余裕を感じました。後に出てくるのですが、八千石の旗本の二男坊らしさというところでしょうか。それに対して生田の心の中には大きな不満や怒りが渦巻いてそれがそのまま態度や言葉に出ています。二人は苦しみや不満をそのままぶつけることができる関係なのですね。生田が先終わった沈丁花を見つめる姿がそのまま彼と重なってよかったです。
出語り・・・義太夫、常磐津、清元などの浄瑠璃が、観客に姿を見せて演奏すること。