【朗読】あなたも私も1 久生十蘭 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、久生十蘭作「あなたも私も1」です。1954年10月~1955年3月まで毎日新聞夕刊に連載された彼の代表作である長編小説です。久生十蘭はパリでレンズ工学を二年、演劇を二年学んだ経歴を持っています。その作品は多彩なジャンルにわたり、「小説の魔術師」「多面体作家」と呼ばれています。「あなたも私も」は主人公、三流モデルの水上サト子とその周りの人間模様を生き生きと描きながら、お金、原子力というテーマに集約されていきます。登場人物が多めですので、各回ごとに相関図をまとめていきたいと思います。
あなたも私も1 クラゲの海・月の光で 読み手アリア
夏は終わったが、まだ秋ではない。その間ぐらいの季節・・・沖波が立ち、海はクラゲの花園になっている。渚に犬がいる。子どもがいる。猟師が大きな魚籃をかついで、波打ちぎわを歩いている。秋波のうちかえす鎌倉の海は、房州あたりの鰯くさい漁村の風景と、すこしもちがわない。(本文出だしより。)
再相関図水上サト子・・・三流のファッションモデル。夏の終わり鎌倉の叔母の家に遊びに行く。
由良ふみ子・・・サト子の叔母。アメリカに行って連絡もないサト子の祖父の別荘に、自分の持ち家のような顔をして居座っている。
愛一郎・・・すごい美青年。二人の警官の前で、サト子の庭から海に飛び込み、溺れて死ぬ真似をする。
私服警官・中村吉右衛門・・・久慈の家に入った空き巣を探してサト子の庭にやってくる。飛び込んで溺死したとみられる青年を探す。
久慈の家・・・元・神月の家→帝銀の沢村さんの家→久慈の家
坂田青年・・・荻窪で清浄野菜を牛車で売る。サト子と顔見知り。
身なりのいい中年の紳士・・・青年を探し回るサト子に久慈の家はどこかと道を尋ねる。
あなたも私も1 覚え書き
魚籃(ぎょらん)・・・魚を入れるかご。びく。
切通し(きりどおし)・・・山・丘などを切り開いて通した道路。
土用波(どようなみ)・・・夏の土用のころ、海岸に打ち寄せる大波。はるか沖合にある台風の影響によるうねりがやってきたもの。
稗搗節(ひえつきぶし)・・・宮崎県の民謡。
底意(そこい)・・・心の奥に潜む考え。
地境(じざかい)・・・所有者などの異なる土地と土地の境界。
地虫(じむし)・・・コガネムシ科の昆虫の幼虫の総称。