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彦左衛門外記1 山本周五郎 

【連載朗読】彦左衛門外記1 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「彦左衛門外記1」です。この作品は、昭和34年から連載されました。朗読は連載10回で完結する予定です。どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

彦左衛門外記 主な登場人物

五橋数馬(いつはし)・・・内藤弥九郎の子。末っ子の三男坊で十六歳の時、五橋家の養子になった。

内藤弥九郎・お弓・・・三千石の旗本。数馬の父親、母親。

五橋三郎太郎左衛門・・・五十二歳。数馬の養父。七百石の旗本で、子がなく、妻女に死なれたのでにわかに養子縁組を決めた。

ちづか姫・・・奥平美作守信昌の三女。

早苗・・・十五歳、ちづか姫の侍女。

大久保彦左衛門・・・数馬の大叔父。

彦左衛門外記 あらすじ(※ネタバレを含みます)

五橋数馬は、内藤弥九郎の子で、末っ子の三男、十六歳のとき五橋家七百石の養子となった。幼い頃から野心を抱き、五歳の頃から十二三歳頃までは多く「妻」に関する野心を持っていた。十三歳の後期になると、熱心に武芸に励み、戦場生き残りの老人たちを訪ね廻り、戦記や功名話を克明に筆記した。その中に、大叔父の大久保彦左衛門もいたが、彼の戦記は勇ましいものではなく「みじめでなげかわしく、人間の勇気をへし挫くもの」だった。彼の野心は今、「天下に名をとどろかせよう」ということだった。二十四歳になると、武芸仕合を出世のきっかけにしようと思いたち、浪人たちと野試合をして、勝つと賞金をてに入れた。そして大田原弾馬と試合する日、試合を見にきていた奥平美作守の三女ちづか姫に一目惚れし、何とか彼女に近づこうとするのであった。

彦左衛門外記 覚え書き

四民(しみん)・・・士農工商の四つの身分の人々。あらゆる階層の人。

へし挫く(へしくじく)・・・一気に奪い去る。

ひき・・・縁故、つて、頼り。

狡猾(こうかつ)・・・悪賢いさま。

悪罵(あくば)・・・ひどくののしること。

掛値なしに(かけね)・・・誇張なしに。

高札(こうさつ)・・・人通りの多いところに掲げる札。

仕儀(しぎ)・・・事のなりゆき。

鉄扇(てっせん)・・・鉄で骨を作った扇。

被衣(かつぎ)・・・身分の高い女性が、外出の際、顔を隠すために被った衣。

八双(はっそう)・・・剣などの構えのひとつ。

 

 

彦左衛門外記2 山本周五郎 

【朗読】彦左衛門外記 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「彦左衛門外記2」です。数馬が一目惚れした奥平家の三女ちづか姫に会うために、毎晩こっそり奥平家に忍び込みます。そこで・・・

彦左衛門外記 主な登場人物

五橋数馬(いつはし)・・・七百石の旗本だが、奥平家十一万石の三女ちづか姫に一目惚れする。

ちづか・・・奥平家の三女。数馬の気持ちを色々試す。

いつき・・・奥平家の長女。二十八歳。六尺ゆたかな筋骨逞しい、あたかも力士のような体つきの女性で声も力士のようだ。

こずえ・・・奥平家の次女。「乙姫のこずえ」と早苗が紹介した、棒柱に頭と手足をつけて衣装を着せたような姿。

ながお・・・奥平家の四女。牛のように肥えている。

みゆき・・・奥平家の五女。十四歳。信じられないほどのっぽ。数馬のようなちびは嫌い。

早苗・・・ちづかの侍女。十五歳。

彦左衛門外記2 あらすじ(※ネタバレを含みます)

数馬は采女ヶ原の野試合を見物に来ていた奥平美作守の三女ちづか姫に一目惚れし、小舟を雇って美作邸裏に行き、石垣をよじ登って屋敷の裏庭へ忍び込んだ。植え込みの中から声をかけたのは、ちづか姫の侍女、早苗であった。年若い侍女に「ひめぎみと約束がある。」と、ここに連れてきてもらうように云う。気温が冷えた晩春三月の十二時近く、ようやく早苗が姫を案内してきた。ちづか姫は、単純なものより複雑なもの、安易なものより困難の伴うもの、安穏な状態より胸のどきどきする状態、などというほうが好ましいと云い、「錦木塚」の故事にならい、ちづか姫の気が済むまで、数馬に錦木の枝を挿しに通ってほしいと云う。数馬は九十余日、毎晩奥平邸へ通いつづけるのであった。

彦左衛門外記2 覚え書き

禍福は糾える縄のごとし(かふくはあざなえるなわのごとし)・・・わざわいが福になり、福がわざわいのもとになったりして、この世の幸不幸は、縄をより合わせたように表裏をなすものであるの意。

晩夏(ばんか)・・・陰暦では4月から6月までが夏。

虜囚(とりこ)・・・とらわれた人。

幸先(さいさき)・・・よいことが起こる前兆。

毒気(どくけ)・・・毒の成分。毒を含んだ気。

稀代(きだい)・・・世にもまれなこと。めったに見られないこと。

愚昧(ぐまい)・・・おろかで道理に暗いこと。また、そのさま。

色消し(いろけし)・・・風情を消すこと。興趣をそぐこと。

祝着(しゅうちゃく)・・・喜び祝うこと。うれしく思うこと。

棒柱(ぼうばしら)

熱鉄(ねってつ)・・・熱した、また、高温で溶けた鉄。

忿怒(ふんぬ)・・・ひどく怒ること。

糧秣(りょうまつ)・・・兵士の食糧と軍馬のまぐさ。

兵站(へいたん)・・・戦闘部隊の後方にあって、人員・兵器・食料などの前送・補給にあたり、また、後方連絡線の確保にあたる活動機能。

面罵(めんば)・・・面と向かってののしること。

即物的(そくぶつてき)・・・物質的なことや、金銭的なことを優先して考えるさま。

照覧(しょうらん)・・・明らかに見ること。はっきり見ること。

後学(こうがく)・・・将来、自分のためになる知識や学問。

神君(しんくん)・・・偉大な功績のあった高徳の君主に対する敬称。徳川家康の死後の敬称。

後胤(こういん)・・・子孫。

一死奉公(いっしほうこう)・・・命を捨てた奉公。

詐称(さしょう)・・・氏名・住所・職業などをいつわっていうこと。

 

 

 

 

 

彦左衛門外記3 山本周五郎

【連載朗読】彦左衛門外記3 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「彦左衛門外記」朗読三回目です。前回の復習ですよー!連載朗読で恋が実った数馬。しかし、ちづか姫の結婚の第一条件は「身分のつり合いがとれること。」でした。しかしちづか姫、求婚までは「深草ノ少将とか、錦木の千束とか、単純なものより複雑なものとか、錦木は現に数馬が90日も実行したし、優にやさしい物語的性格だったのに・・・。結婚を承諾したとたんに、「旗本ではお禄高はどのくらいでございますか?」ときたもんです。このちづか姫の変わりように数馬はがっくりし、女性の頭の機構はどんな具合にできているのであるかと思うのでした。身分のつり合いをとるためにどうしたらいいか・・。(連載朗読3回目はこの辺りから)大叔父の彦左衛門は、少年時代から戦塵の中で育ち戦歴はあります。しかし、大叔父の口述した戦歴はあまりにかんばしくない。雑兵でも顔を赤らめ、閉口して頭を掻きたくなるようなひどいものだった。数馬はその戦記を書き直し、直せないところはひん曲げ、第一級の戦歴をでっちあげ、そして彦左衛門の体内に眠っているもの、頭の中の記憶の幕に隠れているものを揺すぶり起こし、自尊心と慷慨心をかきたてるのだ!!!

彦左衛門外記3 新しい登場人物

水野十郎左衛門成之・・・十七歳。旗本白柄組の頭領。流行の町人侠客、町奴に対抗した旗本奴。背丈は数馬より一寸くらいは高く、肩幅の広い、骨太の、美貌の前髪、大振袖の熨斗目に色変わりの派手な袴を履いている。数馬は、奥平家の侍女、早苗も声を弾ませていた江戸市中に知られた水野を見て少なからずがっかりする。(こんな前髪立ち大振袖の若造だったとは・・・)しかし数馬は、自分の計画に十郎左衛門をうまく利用することを思いつきます。

水野十郎左衛門成之はWikipediaにくわしく記事があったので、そちらをどうぞ。画像もお借りしました。

Okuni with cross dressed as a samurai.jpgMizuno Jurozaemon-Ichikawa Sadanji I-Kunichika Toyohara.jpeg

彦左衛門外記3 覚え書き

言葉のあや・・・直接的な表現ではなく、飾った表現を使うことで、何通りもの捕らえ方ができるような巧みな表現。

妙案(みょうあん)・・・非常によい考え。すばらしい思いつき。

目算(もくさん)・・・こうなるだろうという予測や、それにもとづいた計画。

勲功(くんこう)・・・国家や君主に尽くした功績。また、その功績に対する褒美。

没我(ぼつが)・・・物事に熱中して我を忘れること。無私無欲になること。

慷慨(こうがい)・・・世間の悪しき風潮や社会の不正などを、怒り嘆くこと。

膂力(りょりょく)・・・筋肉の力。また腕力。

問罪(もんざい)・・・罪を問いただすこと。

譴責(けんせき)・・・しかり責めること。不正や過失などを厳しくとがめること。

鎌髭(かまひげ)・・・鼻の下から左右へ、鎌の形にはね上げたヒゲ。

遺訓(いくん)・・・故人の残した教え。

陣鉦(じんがね)・・・軍勢の身体や合図のために鳴らした鐘や銅鑼。

双手(もろて)・・・両手。

青史(せいし)・・・歴史書。

寛濶(かんかつ)・・・気持ちがおおらかでゆったりしていること。

大籬(おおまがき)・・・江戸吉原で最も格式の高い遊女屋。

 

 

 

 

彦左衛門外記4 山本周五郎

【朗読】彦左衛門外記4 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「彦左衛門外記4」です。数馬は水野十郎左衛門をかもにして三十余日、彼をめぐって次々と事が起こった。第一は「ご意見番の墨付」の問題で白柄組の糾問を受けたが、数馬は十八人の白柄組をあっさり言いくるめ、煽動された十郎左衛門はすっかり彦左衛門に惚れ込み、仲間も共にしきりに本所まいりを始めたのであった。第二は同じく「ご意見番の墨付」のことで大伯父に大喝をくらったが、数馬はすばやく伯父の鋭鋒を脇へそらすことに成功し、帰るときには機嫌よく呼びかけられたくらいだった。次に数馬は奥平邸で危うく屋敷の者に捉まりそうになり、狼狽して逃げ出したため足首を捻挫してしまった。また、養父の三郎太郎左衛門が十五歳の千貝と再婚することになり、数馬に年若い継母ができたのであった。

かん太
季節はもう九月、晩秋になって、数馬は奥平家の庭で、寒くなったら姫とどこで逢うか?雪の中で愛の語らいもできないだろう・・と呟いたとき、燈籠のすぐ向こうで密談する三人位の声を聞くんだ。誰が何の相談をしているのだろう・・・妙に気がかりだった。
アリア
ちづか姫とは、奥殿の中で逢うことになったよ。しかし早苗の案内で屋敷から出るときに、あの力士のように逞しい いつき姫にばったり遭遇するんだ!数馬は早苗のうしろに隠れ、全身をちぢめて小さくなるんだ。運よく、いつき姫は夜盲症で見つかる心配はなかったんだ。
かん太
養父と再婚した多賀井千貝さんが新登場したよ。千貝は、極めて純粋に数馬の母親としてのつとめを自覚し、母として彼を躾け、教育してやろうと考えるんだ。継子いじめじゃないんだよ!

彦左衛門外記4 新しい登場人物

多賀井千貝・・・十五歳、養父の三郎太郎左衛門の再婚相手。小柄だが、今に肥えてみせるぞと宣言しているような体付きで、すでにその胸や腰には前触れの肉が付き始めているし、しもぶくれのたっぷりした頬や、厚いしっかりとした唇や、力のこもった眼光なあどには、人を圧伏する気構えが十分に備わっている。数馬を絶え間なしに呼びつけ、用を命じたり小言を云ったり訓戒を垂れたりする。

アリア
数馬は身長170㎝強くらいで、体重は60キロ。(五尺七寸、十五貫六百)スラっとした体形だね。この頃の人にしては大きいかもね。アリアも身長172㎝だよ!数馬に勝った~~~かな!
かん太
千貝(数馬の継母)はね、150㎝弱くらいで、体重は45キロ弱だよ。(四尺九寸あまり、固太りで十一、二貫くらい)標準的な感じがするね。いつき姫はどうなんだろ・・?

彦左衛門外記4 覚え書き

仮宅(かりたく)・・・しばらく住む家、仮の住まい。

引手茶屋(ひきてぢゃや)・・・遊郭で、客を遊女屋に案内する茶屋。

好学の士(こうがくのし)・・・学問が好きで、それに熱心なひと。

煽動(せんどう)・・・気持ちをあおり、ある行動を起こすようにしむけること。

慷慨(こうがい)・・・世間の悪しき風潮や社会の不正などを、怒り嘆くこと。

無頼(ぶらい)・・・正業につかず、無法な行いをすること。また、そのさまやsのような人。

作興(さっこう)・・・ふるいおこすこと。盛んにすること。さこう。

驕慢(きょうまん)・・・おごり高ぶって人を見下し、勝手なことをすること。

俗塵(ぞくじん)・・・浮世のちり。俗世間のわずらわしい事柄。

直諫(ちょっかん)・・・下位の者が相手の地位・権力に遠慮することなく率直にいさめること。

花押(かおう)・・・署名の代わりに使用される記号・符号のこと。

世情人心(せじょうじんしん)・・・世俗の考え、俗人の心。

古人(こじん)・・・いにしえびと。昔の世の人。こじん。

多事多端(たじたたん)・・・仕事が多くて大変忙しいさま。

大喝(だいかつ)・・・大きな声でしかりつけること。また、その声。

糾問(きゅうもん)・・・罪や不正を厳しく問いただすこと。

煩瑣(はんさ)・・・こまごまとしてわずらわしいこと。

鋭鋒(えいほう)・・・言葉や文章による鋭い攻撃。

圧伏(あっぷく)・・・力で押さえつけて服従させること。

おぼこ・・・まだ世慣れていないこと。また、そのさまや、そういう人。

諄々と(じゅんじゅんと)・・・じっくり教え諭すこと。丁寧。

悍馬(かんば)・・・気が荒く、制御しにき馬。あばれ馬。

食傷(しょくしょう)・・・同じことに何度も接し、飽き飽きして厭になること。

巴御前(ともえごぜん)・・・源義仲の側室。武勇を持って知られ、常に義仲に従ってしばしば戦功を立てた。

夜盲症(とりめ)・・・薄暗くなると物が見えにくくなる症状。ビタミンA欠乏など。

残菊(ざんぎく)・・・晩秋、初冬まで咲き残っている菊の花。

老耄(ろうもう)・・・おいぼれること。また、その人。

 

 

 

 

 

 

 

彦左衛門外記5 山本周五郎

【朗読】彦左衛門外記 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、「彦左衛門外記5」です。いよいよ「家康公墨付」の偽作を彦左衛門が手に取ります。季節は菊も終わりの冬、数馬は麻裃を着け、預かっていた古文書類の包みを持って厳粛な姿勢で伯父を訪ねる。彦左衛門が数馬の偽作墨付きを見る間、数馬は体中の毛穴が五たび開いたり閉じたりするのを感じた。彦左衛門は、「墨付は確かに東照公のお筆だが、まったく覚えがない。」と云う。数馬は彦左衛門を「天下の御意見番」にするため、話をつぎつぎと巧妙に進めていく。「私はあなたがあなた自身になってほしい。そのあなたを包んでいる嘘の皮衣をはぎ取って本来の彦左衛門、天下の大久保彦左衛門に立ち返ってもらいたい!。」

彦左衛門外記 覚え書き

そら咳(そらぜき)

嘲弄(ちょうろう)・・・あざけり、からかうこと。

達眼(たつがん)・・・物事の深奥を見通す眼力。

棒杭(ぼうぐい)・・・棒状の木の杭。

隠棲(いんせい)・・・俗世間を逃れて静かに住むこと。

皮衣(かわぎぬ)・・・毛皮で作った衣。

異同(いどう)・・・異なっているところ。相違。違い。

些少(さしょう)・・・数量や程度がわずかなこと。また、そのさま。

首級(しるし)・・・討取った敵の首。

泥田(どろた)・・・泥深い水田。

一揖(いちゆう)・・・軽くおじぎをすること。一礼。

猿面冠者(さるめんかんじゃ)・・・猿に似た顔の若者。特に、豊臣秀吉の若い時のあだな。

古武士(こぶし)・・・風格が備わり、剛直で信義を重んじる武士。

韜晦(とうかい)・・・自分の本心や才能・地位などを包み隠すこと。

改易(かいえき)・・・江戸時代においては、大名や旗本の所領、家禄、屋敷の没収、士分の剥奪を意味した。

ざんげん・・・事実を曲げたり、ありもしない事柄を作りあげたりして、その人を目上の人に悪く云うこと。

煩悶(はんもん)・・・いろいろ悩み苦しむこと。苦しみもだえること。

直諌(ちょっかん)・・・遠慮なく率直に、目上の人をいさめること。

歯齦(しぎん)・・・はぐき、歯肉。

がんにん・・・請願または訴願するひと。祈祷する人。

頓死(とんし)・・・突然死ぬこと。

呻吟(しんぎん)・・・苦しんでうめくこと。

 

 

 

 

彦左衛門外記6 山本周五郎

【連載朗読】彦左衛門外記6 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、連載朗読「彦左衛門外記6」です。

彦左衛門外記6 新しい登場人物

倉持善助・・・奥平家の家臣。数馬に力を貸すことになる。

藤井嘉門・・・奥平家の家臣。穴の開いた鐘を叩くような声の持ち主。

彦左衛門外記6 覚え書き

折助(おりすけ)・・・武家で使われた下男の総称。

端下(はした)・・・水仕事や雑役を担当する身分の低い女性の使用人。

常夜灯(じょうやとう)・・・夜通し点けておく灯火。

下郎(げろう)・・・男をののしっていう語。

出奔(しゅっぽん)・・・逃げ出して行方をくらますこと。

かどわかし・・・暴力やだまして連れ去ること。誘拐。

当て身(あてみ)・・・ひじ・拳・足先などで相手の急所を打ったり突いたりすること。

ふなあし・・・船のすすむこと。また、その速さ。

亭(ちん)・・・眺望や休息のために庭園内に設けた小さい建物。

狡猾(こうかつ)・・・悪賢いこと。

臍を噛む(ほぞをかむ)・・・後悔する。

譴責(けんせき)・・・しかり責めること。不正や過失を厳しくとがめること。

奸物(かんぶつ)・・・悪知恵をはたらく心のひねくれた人間。

義をみてせざるは・・・(義を見てせざるは勇無きなり)人として当然行うべきことと知りながら、行わないのは勇気がないからである。

方寸(ほうすん)・・・胸の中、心、昔は心臓の大きさが約三センチ四方と考えられていたことによる。

 

 

 

彦左衛門外記7 山本周五郎

【連載朗読】彦左衛門外記7 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「彦左衛門外記7」です。数馬は驚いた。伯父は全く人が変わった。湯上りで赤らんだ顔には皴も見えず、贅肉のない体や顎のあたりはよく引き締まって、膏を塗ったように艶光がしていた。こんなことがあるだろうか。人間が僅かな間に、こんなにも変貌するなどということがあり得るであろうか。

彦左衛門外記7 新しい登場人物と復習

奥平大膳大夫(美作守とも)・・・ちづか姫の父。宇都宮十一万石の領主。

お屋形(丹波さま)・・・大膳大夫の叔父。

奥平弥五郎・・・大膳大夫の三番目の弟。ちづか姫の叔父。

ちづか・・・奥平家の三女。数馬の婚約者。

いつき・・・奥平家の長女。二十八歳。六尺ゆたかな筋骨逞しい、あたかも力士のような体つきの女性で声も力士のようだ。

こずえ・・・奥平家の次女。「乙姫のこずえ」と早苗が紹介した、棒柱に頭と手足をつけて衣装を着せたような姿。

ながお・・・奥平家の四女。牛のように肥えている。

みゆき・・・奥平家の五女。十四歳。信じられないほどのっぽ。数馬のようなちびは嫌い。

早苗・・・ちづかの侍女。十五歳。

彦左衛門外記7 覚え書き

感奮興起(かんぷんこうき)・・・心に感じて奮い立ち、勢いが盛んになること。

譴責(けんせき)・・・しかり責めること。

職制(しょくせい)・・・職場での職務の分担に関する制度。

双肌(もろはだ)・・・両方の肩の肌。上半身。

肉瘤(にくりゅう)・・・盛り上がった逞しい筋肉。

田楽刺し(でんがくざし)・・・田楽豆腐のように、槍などで真ん中を刺し貫くこと。

相貌(そうぼう)・・・顔かたち。容貌。

赤備え(あかぞなえ)・・・すべての将兵の武具を赤色にした軍勢。

かんらからから・・・豪傑などの高らかに笑う声を表す語。

こわっぱ・・・子ども、若者をののしっていう語で若造といった意味。

上長(じょうちょう)・・・年齢・地位が上であること。また、その人。

字義(じぎ)・・・漢字の意味。文字の意味。

勇壮(ゆうそう)・・・いさましく元気なこと。

諸家(しょか)・・・多くの家、多くの家門。

目算(もくさん)・・・目で見て数量の見当をつけたり、大体の計算をすること。

追廻し(おいまわし)・・・強制的に仕事などをさせること。掃除や使い走りをする召使など。

遠国(えんごく)・・・遠い国、都から遠く離れた国。

発頭人(ほっとうにん)・・・先に立って物事を企てた人。張本人。

 

 

御意討ち秘伝 山本周五郎

【朗読】御意討ち秘伝 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒やしの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「御意討ち秘伝」です。この作品は、昭和12年34歳の作品です。藤次郎の恋によく似てますが終わり方が違っています。どうぞその違いをお楽しみください。

御意討ち秘伝 主な登場人物

高松絃次郎・・・温厚で控えめな性格の武士。深江に心を寄せていたので彼女の頼みを聞いてしまう。

藤枝清三郎・・・絃次郎と共に道場の「三羽烏」と呼ばれていた。酒に溺れてしまう。

深江・・・絃次郎と藤枝の師匠、貝原次郎左衛門の娘二十歳。藤枝をずっと前から愛している。

文枝・・・深江の妹で18歳。派手ではないが、思慮深く、温かい心を持つ。

貝塚次郎左衛門・・・小田原藩で道場を構える剣術の名手。深江と文枝の父親。総試合で勝った者に深江を目合わせることを決める。

堀越市松・・・三羽烏の一人。酒癖が悪く破門になる。魔剣の市松と呼ばれた。

倉本孫市・・・絃次郎の友人。

御意討ち秘伝 あらすじ

物語の中心は、剣術道場の心優しく穏やかな武士、高松絃次郎と、その師匠の娘である深江、そして深江の心を掴んだもう一人の武士、藤枝清三郎の複雑な関係です。師匠の長女、深江は酒癖が悪く、心が乱れがちな藤枝を愛し、彼を立派な武士に戻したいと願っています。そのため彼女は絃次郎に、明日の試合でわざと藤枝に負けて彼を勝たせてほしいと懇願します。しかし武士として誇り高き絃次郎はこれを断り、自分の信念を貫こうとします。試合では藤枝が勝利し、深江と結ばれますが、その後も藤枝は立ち直ることなく再び堕落します。最終的に藤枝は、三羽烏の一人で破門になった堀越市松に斬られて命を落としますが、実際には藤枝の名誉を守るために・・・・・という話です。物語は絃次郎の深い義理と愛情、そして彼の心を密かに見守り続けた深江の妹の文江の愛情がぴったり合ういい話です。

アリアの感想と備忘録

剣術道場の若い武士たちの人間模様と感情の揺れ動きが繊細に描かれていて、特に「武士道の誇り」と「人間としての弱さや愛情」が交錯するところに心を動かされました。特に絃次郎の誠実で温厚で控えめで誇り高き性質というのは正に武士らしい武士でとても好ましいです。自己犠牲を払っても藤枝の名誉を守ることを選んだ武士の誇りと人間としての優しさのバランスが絃次郎の魅力ですね。物語の最後に描かれていた深江の妹、文江と絃次郎の新たな関係で、絃次郎も新たな道を歩み始めることになります。この結末が、物語全体の緊張感や悲劇的な展開の中で、一つの希望や救いを感じさせました。

忠弥恋日記 山本周五郎

【朗読】忠弥恋日記 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。昭和13年、34歳の作品、講談雑誌に掲載されました。今回の忠弥恋日記の主人公、丸橋忠弥はとにかく短気で真っ直ぐな性格。「女なんぞ」と言いながらも、お富美のことで心が揺れ、無茶な行動に出るのが見どころ。片桐安房守の屋敷へ単身乗り込む場面は、まるで時代劇のヒーローのようでワクワクします。

忠弥恋日記 山本周五郎 あらすじ

江戸の槍術指南・丸橋忠弥は、武士の誇りに生き、女色を嫌うと言い続けていた。だが、日々道場の世話をしてくれる娘・お富美の姿が、いつしか心の奥底に刻まれていたことに気づかぬまま、ただひたすら武芸に励んでいました。

ある日忠弥は、お富美が片桐安房守の屋敷に奉公に出されると知ります。しかしそれは単なる奉公ではなく、彼女が殿の愛妾にされる運命にあることを知った忠弥は、激しい怒りとともに、たった一人で大名屋敷へと一人乗り込んでいきます。

主な登場人物

丸橋 忠弥(まるばし ちゅうや)

主人公。出羽国山形の郷士の出身で、宝蔵院流槍術の達人。江戸に出て道場を開くが、粗忽で性急な性格から「せかちば(性急坊)」とあだ名される。女色を嫌うと公言していたが、道場を手伝うお富美に無意識のうちに惹かれていた。お富美を救うため片桐安房守の屋敷へ単身乗り込み、彼女と結ばれる。

お富美(おとみ)

近所の商家「金満津屋」の娘。忠弥の道場で台所仕事を手伝っていた。美しく慎ましいが、忠弥への一途な想いを秘めている。片桐安房守の屋敷に奉公に出されるが、実は殿の妾にされる運命だったと知り、助けを求める。忠弥と結婚するも、五年足らずで病死する。

兼松 又四郎(かねまつ またしろう)

旗本五千石の武士で、宝蔵院流の槍の名手。武勇に優れるが風流を解し、絵の才能もある。忠弥とは槍を交えて互いを認め合い、親友となる。忠弥の戦いを助けるべく、自家の宝である「権現様拝領の鉢巻」を貸し、その結果、忠弥の突入が成功する。

宝蔵院 胤舜(ほうぞういん いんしゅん)

宝蔵院流槍術の師範で、当代随一の槍の名手。かつて忠弥に槍術を指南した師であり、彼の成長を見守る。兼松又四郎と通じて忠弥の力を試し、結果的に彼の運命を導くことになる。

金満津屋 伝五郎(きんまんつや でんごろう)

お富美の父で、江戸で名の知れた商人。忠弥の人柄を見込み、娘を道場に手伝いに出していたが、お富美を片桐安房守の屋敷に奉公に出すことになる。実は彼自身、お富美の忠弥への想いを理解していた。

三百屋 米吉(さんびゃくや よねきち)

江戸で悪口の代弁や口利きを商売にする男。片桐安房守の屋敷の悪評を広める仕事を引き受け、忠弥と関わる。お調子者だが、人情があり、忠弥にお富美の危機を知らせる。

進藤 鬼源太(しんどう おにげんた)

片桐安房守の家臣で、三十人力と称される巨漢の武士。忠弥の乱入に立ちはだかるが、一槍で倒されてしまう。

片桐 安房守(かたぎり あわのかみ)

十一万石の大名で、幕府の旗本。お富美を屋敷に迎え、側女にしようとするが、忠弥の襲撃により失敗し、結局泣き寝入りすることになる。

杉原(すぎはら)

片桐安房守の用人。お富美を見初めて奉公を持ちかけ、彼女を主君の妾に仕立てようとする黒幕的存在。

多助(たすけ)

忠弥の老僕(召使い)。故郷の山形から忠弥に従って江戸へ来た。忠弥が荒れてゆく様子を見守りつつも、深い理解と憐れみの眼差しを向ける。

松三(まつぞう)

金満津屋の若い者。お富美の危機を忠弥に伝えるため、彼女の手紙を持ち出して助けを求める。忠弥と共に片桐屋敷に乗り込む。

怒らぬ慶之助 山本周五郎

【朗読】怒らぬ慶之助 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「怒らぬ慶之助」です。この作品は昭和10年冨士増刊号に掲載されました。昭和21年に講談雑誌に掲載され備前名弓伝の祖形のようです。新潮文庫の「怒らぬ慶之助」には「怒る新一郎」もあって、読み比べが面白かったです。「怒らぬ慶之助」は、へその緒切って以来、まだ一度も怒ったことがなく寡黙で無愛想でむっつり。一方「怒る新一郎」は癇癪持ちで腹の虫が随時随所暴れ出して、ついに江戸詰をしくじってしまい国許へ返されてしまう、と主人公の性格が反対ですね。冨士=キングなので家族みんなが楽しめる登場人物が好ましいです。

怒らぬ慶之助 主な登場人物

御堂慶之助・・・薩摩守家久の家臣、三百石の小身。十七歳で家督する。弓術に達し二十五歳で藩の師範格に補せられる。

鬼鞍庄兵衛・・・慶之助の叔父。後見人。

伊能源八郎・・・梶派の剣で屈指の勇名がある。美しい端麗な容姿を持つ二十五歳。江戸で家久は召し抱えた新参の小身。

梢・・・庄兵衛の娘。十九歳。慶之助と幼馴染でずいぶんわがままを云いあって育った仲。

かね・・・庄兵衛の妻。梢の母。婿にするなら慶之助と密かに心を決めている。

怒らぬ慶之助 覚え書き

諌死(かんし)・・・死んでいさめること。

老杉(ろうさん)・・・長い年月を経た杉の木。

飛耳長目(ひじちょうもく)・・・観察が鋭く深いこと。

斃死(へいし)・・・のたれ死ぬこと。

埒(らち)・・・馬場の周囲にめぐらした柵。

端麗(たんれい)・・・姿形が整って美しいこと。

疎音(そいん)・・・長い間便りをしないこと。

手斧(ちょうな)

弱法師(よろぼうし)・・・よろよろ歩く法師。