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壱両千両 山本周五郎

【朗読】壱両千両 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「壱両千両」(昭和23年)です。世間はひどい不景気だ。一昨年から不作凶作が続いて春先から施粥のお救い小屋に人々が列をなしている。下町人の生活が活き活きと描かれています。

壱両千両 主な登場人物

杉田千之助・・・庄内藩の勘定方に勤めていたが、藩の頽廃不正についていけず、奉行の渡辺仁右衛門と衝突して退身した。

池野源十郎・・・池野道場の主。竹刀は持たず、稽古は千之助に任せ、刀剣売買の中次ぎに奔走。ぬけ商売の用心棒に手を染めようとする。

およね・・・十九歳、同じ長屋の六兵衛の孫。大根河岸の料理茶屋「八百梅」で働いている。

六兵衛・・・およねの祖父。元飾職。現在は痛風で寝込んでいる。千之助は彼と話すと気持ちが晴れる。

富三(富兵衛)・・・同じ長屋の建具職。博奕好き。千之助にお金を借りて富岡八幡の千両富くじを買う。

熊五郎・とら・・・千之助の隣りに住む魚屋夫婦。となりから聞こえてくる二人の会議が千之助の癒し。

渡辺仁右衛門・・・元庄内の勘定奉行。現在は江戸詰めで勘定奉行。不正な金をばら撒いて味方を増やしていた。

壱両千両 あらすじ(※ネタバレを含みます)

千之助の家は庄内の家臣で、千之助は勘定方に勤めていたが、不徳と無恥に汚れた役所内部の頽廃不正についてゆけず、奉行の渡辺仁右衛門と衝突して退身した。浪人して江戸へ出て三年。食い詰めて池野道場の師範として勤めたが、世間はひどい不景気で一昨年から不作凶作が続き、春先から施粥のお救い小屋に人々が列をなしている。内職も奪い合いで、手間賃も話にならない安さ、日雇い人足も棒手振りも同業が多く、共食いの形だった。

壱両千両 覚え書き

虚名(きょめい)・・・実力以上の評判や名声。

足許に火がつく・・・危険が近づくこと。

不徳(ふとく)・・・人の行うべき道に反すること。

無恥(むち)・・・恥を恥と思わないこと。また、そのさま。

頽廃(たいはい)・・・衰えてすたれること。くずれ荒れること。

闇討ち(やみうち)・・・闇にまぎれて人を襲うこと。不意を襲うこと。

施粥(せがゆ)

老獪(ろうかい)・・・いろいろの経験を積んでいて悪賢いこと。

汚吏奸商(おりかんしょう)・・・汚職、不正する役人と不正な手段を用いて利益を得ようとする悪賢い商人。

悄然(しょうぜん)・・・元気がなくうちしおれているさま。

小股の切れ上がった・・・女性のすらりとして粋なさま。きりりとして小粋な婦人。

廂間(ひあわい)・・・建て込んだ家の間のひさしとひさしが接するような狭いところ。

双肌(もろはだ)・・・衣の上半身を全部脱いで、両肌を現す。

嬶(かかあ)

誹謗(ひぼう)・・・人を悪く云うこと。

箆棒(べらぼう)・・・程度がひどいこと。はなはだしいこと。

孑孑(ぼうふら)

蹉跌(さてつ)・・・物事がうまく進まずしくじること。

海月(くらげ)

頓痴奇(とんちき)・・・人をののしる言葉。とんま。

柘榴口(ざくろぐち)・・・江戸時代の浴場で、洗い場から湯舟への出入口。湯が冷めないようにからだを屈めて出入りした狭い入口。

暗紅(あんこう)・・・黒みがかった赤い色。黒ずんだ紅色。

回米(かいまい)・・・江戸時代、米の回送のこと。

 

 

壺(つぼ) 山本周五郎 

【朗読】壺(つぼ) 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「壺」(昭和19年・旧題は鍬とり剣法)です。刀法を学んで武士になりたいという望みを持つ百姓の三男七郎次が、荒木又右衛門に出会い、自分の生きる道をいのちがけで掴むまでの話です。(ひとごろし/新潮文庫)

壺(つぼ) 主な登場人物

荒木又右衛門(木村外記)・・・朋友の復讐にきた武士三人に斬られそうになる宿の下男・七郎次を助ける。

七郎次(瘤七)・・・百姓の三男だが、刀法を学んで武士になりたいと強く願っている。又右衛門の家で下男として働く。

おぬい・・・七郎次の許嫁。彼を元通りまじめな百姓にしよう、おさむらいに成るという考えをやめさせようと瘤七の世話を続ける。

壺(つぼ)のあらすじ (※ネタバレを含みます)

又右衛門は立ち止まって手を上げ、草地の真ん中に立っている高い一本杉を指さした。「あれに杉木がある。日が出て日が沈むまで、杉木はその影を地に落とす。その影の移るところを掘ってみろ。何処かから壺が一つ出てくるはずだ。わが道の極意は一巻の書にしてその壺に封じてある。掘り当てたらその秘巻はお前のものだ。」・・・よしやってみよう。ここにおれの運をひらく鍵がある。七郎次はあ一日中鍬を手に取り息をつこうともしなかった。

かん太
七郎次(瘤七)は壺を掘りあてることができるかな?何を見つけるだろう?お楽しみに。

壺(つぼ) 覚え書き

山川(さんせん)・・・山と川。またそれらを包括した大地。

探勝(たんしょう)・・・景勝の地を訪ねて、その風景を楽しむこと。

秀歌(しゅうか)・・・すぐれた和歌。

根問い(ねどい)・・・根本まで問いただすこと。

愛相(あいそ)・・・人当たりのよいさま。他人によい感じを与えるような態度。

霏々(ひひ)・・・雪や雨が絶え間なく降るさま。

朋友(ほうゆう)・・・「朋」は同門の友、「友」は同志の友。友達。

耀く(かがやく)

庇護(ひご)・・・かばって守ること。

渦紋(かもん)・・・うずまき形の模様。

森閑(しんかん)・・・物音一つせず、静まりかえっているさま。

ふり濺ぐ(ふりそそぐ)

千斤(せんきん)

極意(ごくい)・・・学問や技芸などで核心となる大切な事柄。奥義。

軽輩(けいはい)・・・地位・身分の低い者。

奇矯(ききょう)・・・言動が普通と違っていること。また、そのさま。

温気(うんき)・・・暑さ、特に蒸し暑さ。

徒(いたずら)・・・実を結ばずむなしいさま。無益なさま。

土塊(つちくれ)・・・土のかたまり。また土のこと。

常住坐臥(じょうじゅうざが)・・・座っているときも横になっているときも、いつも。また普段。

一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)・・・こまかなひとつひとつの動作や行動。

威儀(いぎ)・・・いかめしく重々しい動作。立ち振る舞いに威厳を示す作法。

家常茶飯(かじょうさはん)・・・ありふれた事柄。日常茶飯。

刹那(せつな)・・・きわめて短い時間。

妄執(もうしゅう)・・・迷いによる執着。

大喝(だいかつ)・・・大きな声でしかりつけること。

艱難(かんなん)・・・困難に出会って苦しみ悩むこと。また、そのさま。

栄達(えいたつ)・・・出世すること。高い地位、身分を得ること。

名利(みょうり)・・・名誉と利益。またそれを求めようとする気持ち。

 

 

 

夏草戦記 山本周五郎 読み手アリア

【朗読】夏草戦記 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「夏草戦記」(昭和18年3月)です。慶長五年(1600年)6月のある日の昏れがたに、岩代のくに白河郡の東をはしる山峡のけわしい道を越えてきた一隊百二十余人の見知らぬ武者たちが、竹置(たけぬき)という小さな谷あいの部落へ入って野営した。この武者たちは、侍大将小谷弥兵衛が伊達政宗にさずけられた特別の任務を強行するため、本軍に先行して間道を進み、敵の白石城を攻撃するあしばを確保しようと白河の旧関のあたりから山道へと分け入っていた。季節は夏、道は険しかった。しかも夜になって野営すると、どこから忍び寄ってくるのか不意に敵の夜襲を受けるのだった。三瀬新九郎は、この隊が白石へ強行することは隠密で、伊達の本家でも知っている者は少なく、しかも山峡の知られざる間道をゆくのだから、よし敵が探り当てたにせよ、かくまで正確に宿営地を襲うことは尋常では不可能だと不審に思った。そこで幼い頃からの友人、戸田源七とともに「内通者」がいないか隊士たちを密かに監視するようになった。

夏草戦記 主な登場人物

三瀬新九郎・・・まじめなよごれのない顔つきで、口の重そうな、いかにも北国人らしい厚みのある人柄が温かく印象に残る人。野武士に襲われていた初という娘とその父を助ける。相良隊の尖隊士で内通者を探る。

戸田源七・・・新九郎と古い友人。新九郎より一つ年上だが、新九郎の人柄に敬服して兄事している。二人で内通者を探っている。無口な性質。

相良勘兵衛・・・小谷隊の副将。岩代の田村の庄の出身。顎骨の張った眉の濃い、唇をいつもへの字なりに引き結んだ頑固そうな男。何か気に入らないことがあると、ぺっぺっと唾を吐き散らす癖がある。

小谷弥兵衛・・・伊達政宗の侍大将。「松川菱の差物」とさえいえば名の通るもののふ。ことに先駆けを戦うのに巧者だった。新九郎に目をかける。

吉岡小六・・・小谷隊の副将。

初・・・小谷隊の後を追ってくる娘。野武士に襲われているところを新九郎に助けられる。

夏草戦記 覚え書き

馬印(うまじるし)・・・大将の乗馬の側に立てる目印。

旗指物(はたさしもの)・・・戦場で用いられた旗、飾り物。所属や任務の目印。

腰兵糧(こしびょうろう)・・・腰につけて携える食料。

立ち番(たちばん)・・・一定の場所に立って、警戒、監視をするもの。

先鋒隊(せんぽうたい)・・・戦闘で部隊の先頭に立って進むもの。

がんどう提灯(がんどうちょうちん)・・・正面のみを照らす、持ち主を照らさない強盗(がんどう)の提灯。

誰何(すいか)・・・相手が誰か分からない時に、呼びかけて問いただすこと。

険阻(けんそ)・・・地勢のけわしいさま。

間道(かんどう)・・・抜け道、近道。

詠嘆(えいたん)・・・物事に深く感動すること。

切通し(きりどおし)・・・山や丘などを部分的に削って作った道。

 

 

 

 

 

夕靄の中 山本周五郎

【朗読】夕靄の中 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「夕靄の中」(昭和27年)。半七が江戸へ入ってから男が後ろをつけてくる。その男はふところ手をして、ゆっくりと落ち着いた歩きぶりだった。半七はその男から脱走するために墓地に入るが、やはり男はつけてくる。眠たそうな目でこっちの背中を見つめながら、迷いも焦りもない足どりでつけてくる。だんだん追い詰められていく半七は、墓地である老女に声をかけられます。(おさん/新潮文庫)

夕靄の中 主な登場人物

半七(繁二郎)・・・仕立て職人からぐれて、橋場の七兵衛の一人娘、おつやと想いあって末の約束をしたが金次に横取りされる。

おつや・・・博奕打の一人娘。半七と二人で逃げようとしたが、見つかって取り巻かれる。

金次・・・橋場一家の代貸。おつやと結婚する。

老女(おかね)・・・二十六歳で死んだおいねの母親。

おいね・・・病気で二十六歳で死んだ越後屋の女中。

男・・・半七をつけまわす、友達の機屋が半七を好きで、間違いがないように急飛脚をよこしたため半七を追っていた。

夕靄の中 覚え書き

老練(ろうれん)・・・多く経験を積んで、物事に慣れ、巧みであること。また、そのさま。

茣蓙(ござ)

恰も(あたかも)・・・あるものがほかによく似ていることを表す。まさしく、ちょうど。

代貸(だいがし)・・・組織のナンバー2。賭場の一切の責任者で取り仕切る。

 

 

夜の辛夷(こぶし) 山本周五郎 

【朗読】夜の辛夷(こぶし) 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「夜の辛夷(こぶし)」(昭和30年)です。(おさん/新潮文庫)何度も舞台化されTVドラマ化された山本周五郎の人気作品です。権現前の岡場所「吉野」の女お滝とその客・元吉の出会いと別れ、12月から辛夷の花が咲く頃までの数か月の話です。切ない純愛もの。

夜の辛夷(こぶし) 主な登場人物

お滝・・・悪い男に騙され岡場所に身を沈めた子持ちの二十四歳。凶状持ちの客を岡っ引きに密告して金を貰っている。

元吉・・・二十七歳、職人らしい恰好だが、権現前の岡場所に来る人柄に見えない、金離れのいいお滝の馴染み客。

根岸の政次・・・岡っ引き。お滝の話から元吉が「匕首の元」だとつきとめる。

ともえとお若・・・岡場所「吉野」の妓。凶状持ちの客を政次に密告して金を貰っているお滝を非難する。

夜の辛夷(こぶし)のあらすじ(※ネタバレを含みます)

十二月十八日 夜十一時過ぎ、初めて元吉がお滝の客になる。翌日また元吉は「吉野」に来る。お滝はお若と激しい口論になる。

かん太
お若は、「岡場所の妓も凶状持ちも同じ日陰者、どっちも世間から爪はじきされている人間じゃないの、そうとわかっても庇ってやるのが人情ってもんだ。」ってお滝にあてつけて非難するんだ。
アリア
お滝はそんなお若に「ぺてんにかけられたり、盗まれたりして泣いている人間が世間にはうんといるんだ、そういう人たちのためにだって凶状持ちだとみたら指してやる。これからだって遠慮なく指してやるよ。」って云うんだ

馴染みになる客ではないと思った元吉はお滝のその予想が外れて金ばなれのいい馴染み客となった。そのうち彼は自分の身の上をお滝にきかれるままに話す。年が明けて岡っ引きの政次が来たとき、元吉を見かけた政次が「大工って柄じゃねえぜ。」と云ったことから、お滝は元吉の身の上を政次に話すのだった。

夜の辛夷(こぶし)覚え書き

ぞめき・・・遊郭や夜店などをひやかしながら歩くこと。また、ひやかし客。

権現(ごんげん)・・・仏・菩薩が人々を救うため、仮の姿をとって現れた日本の神。

癇性(かんしょう)・・・ちょっとした刺激にもすぐ怒る性質。激しやすい気質。

声色(こわいろ)・・・声の調子。他人、特に役者や有名人のせりふ回しや声を真似ること。

凶状(きょうじょう)・・・凶悪な罪を犯した事実。罪状。

唐変木(とうへんぼく)・・・気の利かない人物、物分かりの悪い人物をののしっていう語。

訴人(そにん)・・・訴えでること。

おだ・・・勝手に気炎をあげること。おだをあげる。

手金(てがね)・・・手元にある金。所持金。

百方(ひゃっぽう)・・・すべての方面。あらゆる手段。

夜目(よめ)・・・夜、暗い中で物を見ること。

匕首(あいくち)・・・つばのない短刀。あいくち。

御用聞き(ごようきき)・・・江戸時代の目明しの俗称。岡っ引き。

 

 

 

 

大炊介始末(おおいのすけしまつ)山本周五郎

【朗読】大炊介始末(おおいのすけしまつ)山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「大炊介始末」(昭和30年)です。大炊介高央(おおいのすけたかなか)は、藩主となるための勉強にかかっていた。父の相模守の溺愛にもかかわらず、彼の明朗率直であり、勤勉で思いやりが深く、いかにも好ましい性質と、健康と明晰な頭脳とは、少しもそこなわれることはなく、ますますその長所を伸ばしていくようだった。しかし、それは十八歳の秋までで、それからの彼はすっかり変わってしまった。

大炊介始末(おおいのすけしまつ) 主な登場人物

大炊介高央(おおいのすけたかなか)(幼名:法師丸・菊二郎)・・・藩家の中興になるだろうと期待されていたが、十八歳の秋、侍臣の吉岡進ノ介を手打ちにして以来、性質がすっかり変わってしまう。酒を飲んでは乱行し、狂態は増悪するばかりだった。

相模守高茂(さがみのかみたかもち)・・・大炊介の父。幼い頃から大炊介を溺愛する。彼の乱行に絶望し、悲しみ嘆き、落胆した。

征木兵衛(まさきひょうえ)(幼名:小三郎)・・・江戸から大炊介の命をちぢめるために来た。子供時分、若殿の学友に上がり、誰よりも大炊介に好かれていた。

広岡主殿・・・八百七十石の筆頭家老。江戸から来た兵衛を丁重にもてなす。

みぎわ・・・主殿の娘。兵衛の許嫁者。

内田十右衛門・・・五十七歳。兵衛の祖父の代からの征木家の家僕。

吉岡進之介・・・二十一歳の時、芝浜の中屋敷で大炊介に手打ちにされる。

大炊介始末 覚え書き

鍾愛(しょうあい)・・・たいそう好きこのむこと。

進境(しんきょう)・・・進歩・上達の度合い。

中興(ちゅうこう)・・・いったん衰えた物事や状態を、再び盛んにすること。

逆意(ぎゃくい)・・・謀反を起こそうという心。逆心。

宥恕(ゆうじょ)・・・寛大な心で罪を許すこと。

乱酔(らんすい)・・・正体がなくなるほど酒に酔うこと。

狂態(きょうたい)・・・正気とは思われないふるまいや態度。

増悪(ぞうあく)・・・病状などがさらに悪化すること。

侍臣(じしん)・・・君主の側に仕える家来。

諫言(かんげん)・・・目上の人の過失などを指摘して忠告すること。

謹直(きんちょく)・・・つつしみ深くて正直なこと。

知友(ちゆう)・・・互いに理解しあっている友。

冠木門(かぶきもん)・・・冠木をわたした屋根のない門。

﨟たけた(ろうたけた)・・・女性が美しくて気品があること。

久闊(きゅうかつ)・・・久しぶりの挨拶をすること。

膝行(しっこう)・・・神前や貴人の前などでひざまずき、膝頭をついて身体すること。

呻吟(しんぎん)・・・苦しんでうめくこと。

贖罪(しょくざい)・・・金や品物を出して罪のつぐないをすること。

勘気(かんき)・・・主君・主人・父親などの怒りに触れ、とがめを受けること。

 

 

 

 

 

 

 

大納言狐 山本周五郎

【朗読】大納言狐 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「大納言狐」(昭和29年)です。(つゆのひぬま/新潮文庫)に掲載されています。こちらの作品は昭和5年に書かれた戯曲「大納言狐」より後に書かれています。(夜明けの辻/新潮文庫)戯曲「大納言狐」をより発展させたような面白い平安朝ものです。周五郎作品で平安朝ものといえば「もののけ」が浮かぶのですが、どちらもクスッと笑える作品です。「大納言狐」も風刺が効いてうまいなーと唸りました!しかし、ちょっと度外れな悪態が多く書かれており、朗読しながら閉口しました。(汗)悪口・悪態はできるだけサラッと抑揚をつけないように読んでおりますので大目にみてください。文中に※※※で書かれた部分にはピー音を作成して挿入しました。

大納言狐 主な登場人物

私・・・京育ちで、出世のためなら心ならぬ恋までもする五位蔵人。利用価値のないものと付きあっている暇はない。打算で紀ノ友雄の出家を止めに向かうが、彼が金の鉱山持ちと知り、彼の友と名のって彼について行く。

紀ノ友雄・・・奥の国出身、父親が墾田を寄付した代償で大学寮へ入る。金の鉱山持ち。左少将の姫に恋して二年、やっと艶書を送るが・・・。

左少将の姫・・・紀ノ友雄が二年前から恋焦がれて、やっと艶書を送った姫。艶書を受け取った彼女のとった行動が・・・・。

ひじり・・・摂津の大峰山で奇特な修行によって、夜ごと草庵のほとりに奇跡をあらわす上人。

堀川の資兼・・・検非違使の別当。美食と酒のために肥満し、はちきれそうな顔の大きな鼻は赤く、口ひげは両端が垂れているので威厳はない。ひじりの徳をしたって出家する。

六郎次・・・若い猟師。

大納言狐 覚え書き

女御(にょうご)・・・後宮に入り、天皇の寝所に侍した行為の女官。

上臈(じょうろう)・・・地位・身分の高い人。

遣戸(やりど)・・・鴨居と敷居の溝に沿って開閉する引き戸の板戸。

艶書(えんぞ)・・・恋文。

官途(かんと)・・・官史の職。または地位。

権門(けんもん)・・・官位が高く権力、勢力のある家。また、その家の人。

閨閥(けいばつ)・・・妻の親類を中心に結ばれている勢力。

阿諛(あゆ)・・・顔色を見て、相手の気に入るようにふるまうこと。

大臣(おとど)

翻意(ほんい)・・・決意をひるがえすこと。

退嬰(たいえい)・・・しりごみして、ひきこもること。進んで新しいことに取り組もうとする意欲に欠けること。

興廃(こうはい)・・・盛んになること。すたれること。

顕現(けんげん)・・・はっきり姿を現すこと。はっきりした形で現れること。

行厨(こうちゅう)・・・弁当。

傀儡子(くぐつし)・・・人形使い。諸国を回った漂白芸人。

蒙昧(もうまい)・・・暗いこと。知識が不十分で道理に暗いこと。

精進潔斎(しょうじんけっさい)・・・肉食を絶ち、行いを慎んで身を清めること。

稀代(きたい)・・・世にもまれなこと。めったに見られないこと。

裂帛(れっぱく)・・・帛(きぬ)を引き裂く音。

落飾(らくしょく)・・・高貴な人が髪を剃り落として仏門に入ること。

劫罰(ごうばつ)・・・地獄の苦しみを味わわせる罰。

尊信(そんしん)・・・尊び信頼すること。

 

 

 

 

夫婦の朝 山本周五郎

【朗読】夫婦の朝 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「夫婦の朝」です。この作品は、昭和16年婦人倶楽部に掲載されました。(扇野/新潮文庫)主人公のお由美は、加納家へ嫁してきて足掛け三年、苦労を知らぬ明るい気質で、夫に愛され、幸せに溢れる生活を送っていた。夫の三右衛門は口数が少なく、濃い一文字眉と、髭の剃り跡の青い角ばった顎はちょっと近づき難いほどだったが、表情や言葉には温かな底の深いものを感じさせた。ある日、お由美が婢のよねを連れて浅草寺へ詣でた帰りに寄った掛け茶屋で、茶汲み女がそばへ寄ってきて小さな紙片を差し出した。お由美は何の気もなく受け取ったが、その紙片には「新五郎」という署名が書かれていた。お由美は懸命に驚愕を抑えながら素早くその紙片を丸めた。

かん太
婦人雑誌にふさわしい、優しく大きな愛に包まれる若妻・・という印象の話です。
アリア
「扇野」に収録されている話は女性にとって甘い甘い話が多いかもね。

夫婦の朝 主な登場人物

お由美・・・二十三歳。絖のように白く引き締まった肌、黒い大きな瞳を持つ。良人の静かな愛情にしっかりと包まれているのを知って、「由美は仕合せ者よ。」と折に触れては心からそう呟くのだった。

加納三右衛門・・・二十八歳。食禄は五百石足らずだが、佐竹家でも名門の家柄。父が勘定奉行だったので、三右衛門は二十歳の時に江戸詰の留守役を命ぜられ、今では筆頭の席に就いている。

沼部新五郎・・・元秋田藩士。お由美の兄と友達で、一時は家族のように行き来していた。お由美は美貌で才子の新五郎に乙女心の恋心を燃え立たせたことがあった。

夫婦の朝 覚え書き

木偶(でく)・・・あやつり人形。

不審かる(いぶかる)・・・怪しくおもうこと。

衆評(しゅうひょう)・・・世間一般の人たちの批評。評判。

信(たより)

退っ引きならぬ(のっぴき)・・・引き下がったり撤退したりできない様子。

縄目(なわめ)・・・敵などにつかまって縄で縛られること。

破落戸(ごろつき)・・・一定の住所、職業を持たず、あちこちをうろついて人の弱点につけこんでゆすったり嫌がらせをする悪者。

執持(とりもち)・・・しっかりととらえて忘れないこと。

水掛け論(みずかあけろん)・・・両者が互いに自説にこだわって、いつまでも争うこと。

慄然(りつぜん)・・・恐れおののくさま。。恐ろしさにぞっとすること。

蹌踉(そうろう)・・・足元がしっかりせず、よろめくこと。

徒に(いたずらに)・・・無駄に。成果を伴わないさま。

覿面(てきめん)・・・まのあたり。

艱難(かんなん)・・・困難に出会って苦しみ悩むこと。

 

 

 

 

奇縁無双 山本周五郎

【朗読】奇縁無双 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「奇縁無双」です。この作品は昭和14年婦人倶楽部に掲載されました。36歳の作品です。じゃじゃ馬な万姫と栗栖伊兵衛の愛情物語です。椿説女嫌いの祖型でしょうか、しかし十九歳の我儘娘が一夜の出来事でガラリと女らしく変化するところは好感が持てました。(椿説女嫌いの方はゆう女が少し年上でしたね)周五郎作品にもたびたび出て来ますが平手で女性の頬を打つというのは憎らしいー!最後はハッピーエンドでした。

奇縁無双 主な登場人物

栗栖伊兵衛・・・飯田藩近習番、三百石。父は亡く、母と妹の二瀬と三人暮らし。生一本で偏屈、無口。

万姫・・・堀大和守の五女。とびぬけて美しい器量をもつ男勝りな姫。十九歳。薙刀と小太刀はすぐれた腕を持ち、乗馬は殊に抜群。

吉沢幾四郎・・・伊兵衛と幼い頃からの友人、妹の二瀬といつか結婚するものと決まっている。

堀大和守親長・・・飯田藩主、万姫に対する愛情は格別で、そばを放すのが惜しさに家臣へ嫁入らせようと考えている。

奇縁無双 覚え書き

下郎(げろう)・・・人を罵る時につかう言葉。

太宰春台(だざいしゅんだい)・・・江戸中期の儒学者。

剛毅(ごうき)・・・意思が固くて強く、くじけないこと。

事跡(じせき)・・・物事が行われたあと。

追従者(ついしょうもの)・・・人におもねるもの。ごますりを云う人

 

 

女は同じ物語 山本周五郎

【朗読】女は同じ物語 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「女は同じ物語」(昭和30年/講談倶楽部)です。女嫌いの城代家老の息子、梶広一郎は二十六歳。父の竜右衛門は日ごろから彼に、「どんな娘でも結婚してしまえば同じようなものだ」と女性観を述べている。女は嫌いだと言い張る広一郎に母さわは、「きれいな侍女でもつけておけば女に興味をもつようになるかもしれない」と侍女をつけるのだった。はじめは渋い顔をしてそっぽを向いていた広一郎だったが、ひと月後には紀伊の躰つきを好ましく思い、白く美しい肌の美しさに惹きつけられ、その声のやわらかさと澄んでいること、器量よしであることに気が付いた。三か月後には広一郎と紀伊は話をするようになった。二人とも話すときには顔が赤くなるのを抑えられなかった。そして四か月目のある夜、広一郎は紀伊がひどく沈んだ様子をしているのに気づくのだった。

 

女は同じ物語 主な登場人物

梶 広一郎・・・藩の文庫に十五石で勤めている。二十六歳になるが女嫌いで許嫁者がいながら結婚しない。見かねた母親が若い侍女を付けられる。

梶 竜右衛門・・・二千百三十石の城代家老。四十七歳の広一郎の父親。「どんな娘でも結婚すれば同じようなものだ」と広一郎に諭す。

さわ・・・四十七歳。毎年、梶家の奥の召使を城下の富裕な商家とか近郷の大地主の娘の中から七人選び、その中から広一郎の侍女を選ぶ。

紀伊(よの)・・・城下の呉服屋「茗荷屋」の娘で広一郎の侍女。

安永つな・・・広一郎の幼馴染で許嫁者。

佐野要平・・・二十八歳。剣術のうまく腕っぷしが強い中老の息子。佐野家は貧乏で有名で呑み代がないので要平は友人にたかり、いたるところに勘定をためて呑んだくれている。あだ名は平家蟹。

 

女は同じ物語 覚え書き

新式(しんしき)・・・新たな形式。

由ありげ・・・わけがあるような様子。

秋波(ながしめ)・・・女性のこびを含んだ眼つき。

奸悪(かんあく)・・・心がねじけて悪いこと。

嬌羞(きょうしゅう)・・・女性のなまめかしい恥じらい。

禁厭(きんえん)・・・まじない。呪術。

頑迷(がんめい)・・・かたくなでものの道理がわからないこと・