【朗読】名娼満月 夢野久作 読み手アリア
名娼満月 あらすじ
宝暦の春、島原で「満月」と呼ばれる花魁がいた。名の通り満ち欠け知らぬ美しさを誇り、十九の若さで世を魅了し、人々はその姿を一目見んと集まった。
彼女の元に通う三人の男たち──
老いを忘れ、財を惜しまず尽くす「金丸長者」。
美貌を誇り、身を持ち崩す「青山銀之丞」。
商売の才を持ち、恋に溺れる「播磨屋千六」。
三人は、それぞれの思いと欲望で満月を巡って争うが、満月の笑顔と技に翻弄され、人生を狂わされてゆく。やがて破滅に向かい、追い込まれた二人──銀之丞と千六は、ひと春のあと、満月の道中で再会する。
そこで見たのは、金丸の紋を掲げて誇らしく歩む満月の姿。そして、彼女から放たれたたった一言・・・
名娼満月 登場人物
■ 満月(まんげつ)
島原の松本楼に咲く絶世の花魁。
5歳で親を亡くし、松本楼に売られる。
美貌と才知に恵まれ、全国に名を轟かせる存在。
実は重い病を患いながら、男たちの間で巧みに立ち回る。
最期は金丸に身請けされ・・・
💰 満月を巡る三人の男たち
■ 金丸長者(かなまる ちょうじゃ)
越後出身の大富豪。
老齢ながら満月に夢中になり、財を惜しまず尽くす。
最終的に満月を身請けし、死後は寺を建て僧となる。
出家後の法名は「友月(ゆうげつ)」。
■ 青山銀之丞(あおやま ぎんのじょう)
関白七条家に仕える若侍。
容姿端麗な色男で、自らの魅力に自信満々。
満月への想いから身を持ち崩し、盗みや逃亡を重ねる。
最終的に満月への悔いと憎しみを胸に、僧となる。
出家後の法名は「友銀(ゆうぎん)」。
■ 播磨屋千六(はりまや せんろく)
大阪の廻船問屋の若旦那。
満月に一目惚れし、店の財産を使い果たす。
のちに長崎で密貿易で成功し、一万両以上を得る。
満月を思い続けたが、死を知り涙する。
出家後の法名は「友雲(ゆううん)」。
🏠 周囲の人物
■ 松本楼の主人
満月を幼少時から育てた楼主。
彼女の病を金丸に正直に告げるなど、思慮深い人物。
■ 三多羅和尚(さんたら おしょう)
井遷寺に住む怪僧。
本堂を細工し、賭場で客を脅して金を奪う。
後に銀之丞に討たれる。
■ 銀之丞が名乗った偽名
吉岡鉄之進(よしおか てつのしん)
井遷寺で僧を討つ際に使った偽名。
🏮 その他
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本願寺の会式(えしき)
満月の花魁道中と並ぶほどの盛況を見せる仏教行事。 -
鼻曲山人(はなまがりさんじん)
江戸の学者。金丸邸に訪れ、満月の住居を筆録に残す。
アリアの備忘録
登場人物たちは、「愛」「欲」「名誉」「復讐」「懺悔」といった深い情念に突き動かされ、やがてすべてを脱ぎ捨てて一つの墓前に辿り着きます。
彼らの心の変遷こそが、この物語の最大の見どころです。