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正雪記 まとめ1 山本周五郎 

【朗読】正雪記まとめ1 山本周五郎 読み手アリア

【朗読】正雪記まとめ1 あらすじ 

第1部 1の1〜3の2まで

駿河の田舎道を揺れながら進む一台の馬車。夜の帳が下りたその中で、小さな少年・小太郎は星を見上げ、甘い棗の実をしゃぶっていた。父・与兵衛の酒酔いに付き合わされ、遅くなった帰り道。その荷車には何者かに追われるもう一組の父子がいた。見知らぬ浪人・矢橋忠左衛門とその幼い息子。同じ年頃の二人の少年は、隣り合いながらも交わることのない心を抱えていた。

馬車が東海道へ出ると、提灯の灯が両側から迫る。追手だ。浪人の運命は尽きたのかもしれない。彼は静かに決意する。幼い息子だけは生かしたいと。小太郎はその願いを聞きながら、自分と同じ名前を持つ少年の震える体を感じていた。そして・・・激しく切り裂かれる夜の静寂。浪人・矢橋忠左衛門は果敢に飛び出し、刀を振い、そして散った。浪人の息子、小太郎少年の祈りにも似た嗚咽を聞きながら、小太郎は彼を抱きしめ、「泣いちゃダメだよ」と囁いた。それから数日の間、矢橋小太郎少年は小太郎の家に匿われるが、すぐに江戸へと旅立ち、二人の道は分たれる。のちの久米与四郎は、この夜の恐怖と悲しみを胸に刻み、己の生きる道を探し始める。

人の世の非情と生きるための知恵。久米(小太郎)は貧しさの中で学び、働き、己を鍛えた。久米を江戸まで連れてきた酒浸りの細工師・又兵衛との縁。彼が捨てた「歩く蟹」に象徴される職人の誇りと絶望。江戸の喧騒の中で、久米(小太郎)は武士としての未来を夢見ながら時代の激流に身を投じていく。

しかし、どれほど知恵を巡らせても彼を惑わせるものがあった。剣術よりも学問よりも強く、彼の心を揺さぶるもの・・・それは石川主税助の娘・はんの存在だった。浄らかで優しく微笑む彼女。その姿を見るたびに久米は、自らの汚れを思い知り、触れてはならないものとして心を引き裂かれる。

力こそが善、賢さこそが正義。そう信じてきた道のりの中で、久米は初めて己の無力さと、人の心の奥深さに向き合おうとしていた。

正雪記まとめ1 主な登場人物

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久米与四郎・・・

幼名は小太郎。駿河国、由比の染物職人・与兵衛の息子。幼い頃、馬車の中で浪人・矢橋忠左衛門の死をその息子と目の 当たりにする。その後、江戸へ出て学問を修め、武士としての道を模索する。冷静で賢く、知略を重んじるが、主税助の娘・はんの存在に心を揺すぶられる。

与兵衛・・・

小太郎(久米与四郎)の父。由比で染物屋を営む職人。酒好きで粗野な性格だが、息子に学問を学ばせ将来を案じている。浪人・矢橋忠左衛門の最期を目撃し、その息子・小太郎をしばらく匿う。

矢橋小太郎・・・

浪人・矢橋忠左衛門の息子。小太郎と同じ名前、同じ七歳。馬車の中で震えていたが、小太郎に励まされる。父の死後、しばらく小太郎の家に匿われたが、のちに江戸へ旅立つ。

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又兵衛・・・

細工師。かつて名工と呼ばれたが、酒に溺れ、無気力に生きる。久米を江戸に連れてきてくれた恩人。自作の「歩く蟹」に誇りを持っていたが、それを川へ捨て、自らの人生を捨てるように姿を消す。

石川主税助・・・

浪人で楠木流の軍学者。江戸で講義を開き、久米を引き取って学問と武士の心得を教える。実は将来を悲観し、騒乱を望んでいる節がある。

はん・・・

主税助の娘。幼少期は母方の実家で育ち、十五歳で父の元へ来る。浄らかで温かい性格で、久米心を大きく揺さぶる。

金井半兵衛・・・

蒲生家の旧臣で浪人。叔父の和泉屋に寄食し、道楽にふける。久米を遊びに誘い、吉原へ連れていく。軽薄だが義理堅い面もある。

和泉屋久兵衛・・・

半兵衛の叔父。裕福な太物商。主税助に十軒店の家を提供し、彼の講義を支援するパトロン。

 

正雪記まとめ1 備忘録

久米が江戸で、貧しさと孤独の中で学問を積みながら、「どうすれば生き残れるか」「どんな力が必要か」を学んでいきます。一緒に江戸に来た細工師・又兵衛は、社会から認められず酒に溺れていく。彼が「歩く蟹」を捨てる場面は、夢や執着を断ち切り、「無駄なものに囚われるな」「人間は食う琴に追われたら終わりだ」という現実を久米に痛感させる。久米が「どう生きるか?」「何を捨て、何を守るべきか?」はんの存在によって「本当にそれだけでいいのか?」と葛藤しました。

 

 

 

 

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