【朗読】鳥刺しおくめ 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「鳥刺しおくめ」、昭和12年少女倶楽部に掲載された少女ものです。足軽、村岡伊右衛門の娘おくめは十五歳。去年の夏から寝付いてしまった父の代わりに家計を助けるため、父の薬代を稼ぐために鳥刺しをはじめたのでした。彼女のあだ名は「猿っ子」。城下町の悪童たちにも彼女が手強いことは知られていた。おくめは幼い頃から川漁りや鳥刺しが得手で、一度狙ったらどんな鳥でも逃がしたことはなかった。うぐいす、こまどり、ほおじろ、かけすなどを刺してきては鳥好きの人たちに売っていた。なかでも国家老池田三左衛門は有名な小鳥道楽で、鳴きの素性のよいものならいくらでも買ってくれたので、近頃では父親の薬代にもさして不自由をしなくなっていた。ある日、「諸鈴」という珍しい鳴き声をもったほおじろを追っていた時、猪谷の山の中の百姓家で、鬼鞍東左という武士が若い男を刀の柄に手をかけながら脅しつけていた。(周五郎少年文庫/新潮文庫)
鳥刺しおくめ 主な登場人物
おくめ・・・十五歳。ぱっと見は、いっぱし男の悪たれ坊だが、まれに見る美しい顔だち。「猿っ子」という綽名を持つ。母を七歳で亡くし父娘二人で暮らす。国家老・池田三左衛門にひどき気に入られ、いつも案内なしに通れと許されている。
池田三左衛門・・・国家老。おくめのことを年はゆかぬが見どころのあるやつと密かに目をつけている。おくめの優しさも強さも理解してくれている。
鬼鞍東左・・・物頭格。武士に似合わず金を貯め、それを諸方に貸して利息を取り、高利貸しをしているため、家中で「鬼鞍のげじげじ」と呼ばれている。
猪谷さま・・・鬼鞍が探し出した主君光政公のご落胤。
鳥刺しおくめ 覚え書き
雲霞(うんか)・・・大勢の人が群がり集まるたとえ。
得手(えて)・・・巧みで得意なこと。最も得意とすること。
清冽(せいれつ)・・水などが清らかに澄んで冷たいこと。
お下城(おさがり)
落胤(らくいん)・・・身分の高い男が正妻以外の身分の低い女に産ませた子。
軽輩(けいはい)・・・地位・身分の低い者。
吉左右(きっそう)・・・良い知らせ。吉報。
破鐘(われがね)・・・ひびの入った釣鐘。またその音から、濁った太い大声のことをいう。
無益(むえき)・・・利益のないこと。無駄なこと。