【朗読】万太郎船 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「万太郎船」(昭和16年)少年少女ものです。長崎屋という大頭梁の二代目、万太郎は、十三四のころから職人たちと同様に仕事場で木屑だらけになって働きだした。そればかりでなく、たえず何か新しい工夫を考えだした。ところが父親の万助が死ぬと間もなく、彼はだんだん仕事場から遠のきだして、一日中ぼんやりとなすこともなく日を暮らすようになった。
万太郎船 主な登場人物
万太郎・・・二十六歳。舟大工。舟を漕ぐのに櫓や櫂や帆ではなく、もっと速く、そして波や風を乗り切って動かすことのできる方法を研究する。
長崎屋・・・お膝元の舟大工の中でも三番とさがらぬ店。お上の御用まで勤める立派な頭梁。職人は八九十人、相川町から玉井町へかけての地面、百四五十軒の家作、河岸割りの株もあったが、万太郎の道楽(舟の新らしい工夫)で二年で三千両消えてしまった。
仁兵衛(冬木河岸)・・・長崎屋の子飼いの職人で、腕を見込まれて三十の年にじぶん一軒の仕事場を持たせてもらった頭梁株。万助亡き後の財産管理と万太郎の後見を頼まれている。
万助・・・長崎屋の大頭梁。万太郎の父親。四年前に亡くなる。
お雪・・・十六歳。指折りの資産家廻船問屋、佐野屋庄左衛門の娘。万太郎の許嫁者。
おすえ・・・百姓の娘。十六歳。十二歳から大商人の店に奉公に上がるが、年頃になり、その家の倅に目を付けられ逃げ出す。実家に帰るも行方知れずとなっていたため絶望し、身投げする。
平吉・・・仁兵衛の息子。二十三歳で、手の付けられないのら息子。
万太郎船 覚え書き
身代(しんだい)・・・一身に属する財産。資産。身上。
根っきり葉っきり・・・何から何まで含めて根こそぎ。
無いが意見の総じまい・・・放蕩や遊興にふける者は、金を使い果たせば自然におさまるということ。
子飼い(こがい)・・・商家や職人の家で、子どもの時から奉公人や弟子として養育すること。
家作(かさく)・・・人に貸して利益を上げるためにつくった持ち家。
舷側(げんそく)・・・船体の側面。ふなばた。ふなべり。
転舵(てんだ)・・・船や飛行機のかじの角度を変えること。
石地蔵(いしじぞう)・・・無口な人。色恋に反応を示さない人のたとえ。
閑寂(かんじゃく)・・・物静かで趣のあること。ひっそりとして落ち着いていること。
汀(みぎわ)・・・波打ち際。水際。
忿怒(ふんぬ)・・・ひどく怒ること。