【朗読】宗近新八郎 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、「宗近新八郎」(昭和16年)です。主人公の新八郎は尺八の名人です。新八郎の尺八と婚約者のおぬいの琴で合奏する場面がおすすめです。音が目に見えるように美しく描かれ何度も読み返したくなります。
宗近新八郎 主な登場人物
宗近新八郎・・・二百石の書院番で、そのすぐれた男ぶりと、ずば抜けた剣の名手とで家中に知られている。道楽に尺八をたしなむ。
おぬい・・・十九歳。新八郎の許嫁者。外村剛兵衛の娘。琴にたんのうで。にくづきのすぐれたからだつきで、赤いつまんだような唇もとと、まつ毛のながい目があり、ときどき艶やかな表情をみせる。
平林六郎右衛門・・・藩政を握る戸沢堅物の反対派。新八郎を利用して・・・
平林啓二郎・・・六郎右衛門の長男。前におぬいを貰いたいと熱心に申し込んだことがある。
戸沢監物・・・六十三歳。常陸ノ国手綱藩、中村信濃守の城代家老。藩政の中心を握る。中条流の小太刀の名人。
宗近新八郎 あらすじ(※ネタバレを含みます)
徳川幕府はじまって百年、享保年代になると、純然たる消費生活にはいった諸大名の財政は、目に見えて窮乏の一途をたどりだしていた。手綱藩四万石も、監物が家老職についたとき、藩の財政は手のつけようもないほど紊乱していた。戸沢監物はご主君信濃守に執政一任のおすみつきを乞い財政建て直しの大鉈をふるいはじめた。しかしその専制的な執政が一部の家中の者に評判が悪く、「斬ってしまえ」という過激な論さえでているくらいだった。宗近新八郎は、反対派に監物を御意討ちせよと命ぜられる。一命を捨てて監物を糺しにいった新八郎は、監物の身命をなげだして主家万代の策を断行した態度の壮烈さに感動し、命を懸けて監物に命ぜられた役目にあたることになる。
宗近新八郎 覚え書き
御意(ぎょい)・・・貴人や目上の人などを敬って、その考え・意向をいう語。
専横(せんおう)・・・好き勝手にふるまうこと。また、そのさま。
一身一家(いっしんいっか)・・・一人の人間、ひとつの家族。
病臥(びょうが)・・・病気で床につくこと。
陶然(とうぜん)・・・うっとりとしてよい気持ちであるさま。
結託(けったく)・・・互いに心を通じて助け合うこと。力を合わせ団結すること。
徒費(とひ)・・・金銭・時間・労力などを無駄に使うこと。
重代(じゅうだい)・・・先祖代々伝わっていること。また、そのもの。
後事(こうじ)・・・あとのこと。将来のこと。
想夫恋(そうふれん)・・・新八郎とおぬいが合奏した曲の題名。
姚冶(ようや)・・・顔かたちが美しくなまめかしい。
憂愁(ゆうしゅう)・・・うれえ悲しむこと。気分が晴れずに沈むこと。
点綴(てんてい)・・・進行方向を変えること。
無念無想(むねんむそう)・・・一切の想念を離れること。
感興(かんきょう)・・・何かを見たり聞いたりして興味がわくこと。
小歇み(こやみ)・・・雨や雪などがしばらくの間降りやむこと。
火急(かきゅう)・・・火のついたように、差し迫った状態にあること。
擡頭(たいとう)・・・勢いを増してくること。
紊乱(びんらん)・・・秩序・風紀が乱れること。また乱すこと。
諮問機関(しもんきかん)・・・行政庁の諮問に応じて学識経験者などが審議・調査を行い意見を答申する機関。
蕭条(しょうじょう)・・・ひっそりと物寂しいさま。
幽玄(ゆうげん)・・・物事の趣が奥深くはかりしれないこと。
奸物(かんぶつ)・・・悪知恵のはたあらく心のひねくれた人物。
疾呼(しっこ)・・・口早に激しく呼び立てること。
発止(はっし)・・・堅いものどうしがぶつかるさま。
歎息(たんそく)・・・悲しんだりがっかりしたりして、ため息をつくこと。