梅雨の出来事 山本周五郎 読み手 アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「梅雨の出来事」です。この作品は、昭和27年に雑誌に掲載されましたが、前編が見つかっていません。後編だけでも楽しめますが、前編も読みたかったです。
梅雨の出来事 主な登場人物
堀保之助・・・山牢から逃げた囚人に二度も遭遇する。女性に付文などもらうモテ男。普請奉行。
しの・・・保之助の妻、子どももないため自分に自信がもてない。モテる良人に嫉妬している。
坂井又兵衛・・・保之助の友人。町奉行で山牢から囚人が逃げた件で総指揮者をしている。
源八郎・・・しのの兄。
島田内記・・・暴慢で凶暴な重職
梅雨の出来事のあらすじ(※ネタバレ含みます)
保之助は一人の怪しい人間を見かけた。黒装束に白い頭巾という忍び姿で、武家屋敷を窺おうとしていた。声を掛けるといきなり斬り込んできた。躱しようもなく保之助は大泥溝にとび込んだ。背中から斬られ、雨合羽と着物が大きく切れた。そしてそのまま坂井又兵衛の家に行った。その晩は坂井家で集まりがあった。皆にわけを聞かれ、ことのあらましを話した。するとそこへ若い家士が走って来て、又兵衛に何か変事が起こったことを伝えた。又兵衛は立って行ったがすぐ戻って来て、「山牢の囚人が逃げた。おそらく保之助が見かけた男だろう。」と云った。城下町は脅えあがっていた。夕方になると家々は戸を閉め、店を閉めた。どの辻にも警戒の侍たちが5人一組で絶えず町中を回って歩いた。保之助も毎夜、夕餉の後で三時間ぐらいずつ出かけた。組下の者たちの労をねぎらうというが、妻のしのは、それだけだとは思わなかった。雪辱のために自分で破獄者を捕まえるつもりか、もしくは三舟亭へ行ってほの字に逢うのかもしれないと思った。以前、保之助がほの字に五通の付文をもらったこと、保之助は捨ててしまえというが、しのは捨てるまえにあけて読む癖がついていた。最近しのは、躰が不調でヒステリーを起こすので、「ちのみち」にかかったと思っていた。その夜、又兵衛のもとに同心が走り込んできた。「曲者を島田内記が斬伏せた」と云うのだ。又兵衛は思った。島田内記が破獄者を斬ったとすれば、彼の暴慢を増長させ、手柄を振りかざし、それを兇暴の縦に使うにちがいない。又兵衛はすぐに現場へ走っていった。
梅雨の出来事 覚え書き
泥溝(どぶ)
変事(へんじ)・・・普通でない出来事、思いがけない事件。
破獄(はごく)・・・囚人が牢獄を破って脱走すること。
無頼漢(ぶらいかん)・・・ならずもの。ごろつき
搦手(からめて)・・・城や砦の裏門。陣地などの後ろ側。
暴慢(ぼうまん)・・・荒々しく自分勝手なこと。また、そのさま。
兇暴(きょうぼう)・・・性質が残忍で非常にらんぼうなこと。