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五月雨日記

五月雨日記 山本周五郎 

五月雨日記 山本周五郎 読み手 アリア

 

こんにちは 癒しの朗読屋アリアです。 今回の朗読は、山本周五郎作「五月雨日記」です。この作品は1947年昭和17年に書かれました。五月雨とは旧暦5月頃の雨、梅雨のことです。「五月雨日記」は、主人公 伊兵衛と老僕 弥助が五月雨あけ(梅雨)で水かさが増した大須川で夜釣りをする場面から始まります。

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五月雨日記 主な登場人物

中根伊兵衛・・・紀伊徳川家の郡奉行、中根吉郎兵衛の長男。剣法の才分に恵まれ、生涯を剣の求道に捧げようと家を出奔する。

弥助   ・・・伊兵衛を背に負って守をする時代から、ほとんど側を離れたことのない老僕。

小夜   ・・・大須川へ身投げをした身重の女

介川なぎさ・・・介川外記の娘。美しく、気質も凛として怜悧で、伊兵衛と縁談がある。

介川外記 ・・・城番本多家の老職。駿州田中に来て病気にかかり、困窮していた伊兵衛を助ける。

介川伊織 ・・・介川外記の長男で、色白で女性的な感じのする美男。伊兵衛の道場に稽古に通っている。

五月雨日記のあらすじ(※ネタバレ含みます)

伊兵衛と老僕 弥助は五月雨あけで水かさが増した大須川で夜釣りをしていた。

伊兵衛は紀伊徳川家の郡奉行 中根吉郎兵衛の長男で、剣法の才分に恵まれ、生涯を剣の求道に捧げようと決心していたが、父・吉郎兵衛に反対され、家を出奔し修行の旅に出た。老僕 弥助は、若主人の落ち着く先を見届けぬ限り、骨になってもついてゆくと一緒についてきた。遍歴四年で病気にかかり、困窮しているところを城番本多家の老職、介川外記に救われ、この駿州田中で道場を持った。

自分の竿先を見守っていた伊兵衛と弥助の耳に、上手で何か川に中へ落ちた音がぎょっとするほど高く響いた。二人は人が落ちたことに気付き、伊兵衛はとっさに川へ飛び込んだ。やがて救い上げたのは若い身重の女であった。

住居に連れ帰ると数日うちに女は子を産んだ。女の名は小夜。子を産んでも誰にも知らせたがらない。自分一人の子だと云う。

続く・・・

かん太
秘めた恋で子ができ、男の心が去って死を求めた小夜に伊兵衛が静かに云ったんだよね。
アリア
どんな過でも、この世で取り返しのつかぬことはない。人間はみな弱点を持っている。誰にも過失はある、幾度も過を犯し、幾十度も愚かな失敗をして、少しずつ、本当に生きることを知るのだ。それが人間の、もって生まれた運命なのだ、ってね。
かん太
この言葉が小夜の胸に響いたんだね。
アリア
次の夜、子を産んだ後で伊兵衛に云うんだ。昨夜のお言葉が、なによりの力になりました。もう弱い心は起しませんわ。わたくし、自分の過の取り返しをいたします。この子を立派に育ててまいります、ってね。

五月雨日記 覚え書き

矢も楯もたまらず ・・矢でも楯でも勢いが抑えきれないということで気持ちがあせって我慢できない、じっとしていられない様子。
懇望 (こんもう)・・・切に希望すること、ひたすら願い望むこと。
べた一面(べたいちめん)・・・物の表面全体にすきまなく及んでいるさま。
濃緑(こみどり)・・・深緑、濃い緑色。
陶物(すえもの)・・・やきもの、陶器。
嬰児(えいじ)・・・生まれたばかりの赤ん坊。
肥立ち(ひだち)・・・産婦が日増しに健康を回復すること。
扶持(ふち)・・・主君から家臣に給与した俸禄。
怜悧(れいり)・・・賢いこと。利口なこと。また、そのさま
破約(はやく)・・・約束を破ること。また、契約を取り消すこと。
知己(ちき)・・・自分のことをよく理解してくれている人、知り合い、知人。
凄艶(せいえん)・・・ぞっとするほどなまめかしいさま。
舌峰(ぜつぽう)・・・言葉つきの鋭いことを、ほこさきにたとえていう語。
詰問(きつもん)・・・相手を責めて厳しく問いただすこと。
白刃(しらは)・・・鞘から抜いた刀。抜き身。
峰打ち(みねうち)・・・刀のみねで相手を打つこと。
青眼につける(せいがん)・・・剣術の基本となる中段の構え。
死地(しち)・・・死ぬべき場所。死に場所。
木根(きね)・・・樹木の根
高邁(こうまい)・・・志などがたかく、衆にぬきんでていること。またそのさま。
五月雨日記
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