癒しの朗読屋へようこそ 主に朗読作品の解説を書いています

追いついた夢 山本周五郎  

追いついた夢 山本周五郎  読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「追いついた夢」です。この作品は1950年(昭和25年)に雑誌に掲載されました。2017年BSジャパン開局15周年記念特別企画「山本周五郎・人情時代劇シリーズ」で放送されました。謎の富豪老人和助が、貧しい若い娘おけいを身請けする話なのですが、話の展開が意外な方向に進んでいき、最後まで面白く読みました。

スポンサーリンク

追いついた夢 主な登場人物

和助・・・両替商「近正」の番頭。自分の身の上を隠し、身請けしたおけいと世間や人間から離れて遁世しようとしている。

おけい・・・貧しく母の薬代に困り、和助の妾になろうとしている。お金を貯めて、いつかは和助に暇をもらおうと思っている。

宇之吉・・・おけいの幼馴染み。植木屋の職人でおけいと愛し合っている。

おたみ・・・おけいの母。身体が弱く三年前から病みついている。

おむら・・・おけいの住む長屋の隣人。いつも力になってくれる。

吾平・とみ・・・和助に雇われている別邸の世話をしてくれる爺やとばあや。

追いついた夢のあらすじ(※ネタバレ含みます)

娘は風呂桶から出るところだった。名はおけい、年は十七だという。和助は行燈部屋のような暗い部屋の穴から風呂場の中をじっと見守っていた。娘の躰は少しもいやらしさやみだらな感じを受けない浄らかな美しさを持っていた。彼は尾花屋で、すべての点で自分の好みに合う者、これなら満足だといえる者を探していた。和助はおけいに世話を申し出たが、実家と縁を切ること。住む家の場所を誰にも知らせないことが条件だった。おけいの母は三年越し寝ついたきりで、父が去年急死してから全てがおけいの肩にかかってきた。医者の払いも溜まり、借りも溜まり、売るものも無くなっていた。そのときすぐにおけいは肚を決めた。

 

かん太
家へ帰ると、いつもよくしてくれる同じ長屋のおむらが励ましてくれるんだ。「女に生れたからこんな悲しい思いをするんだけど、女だからこそこれだけのことができるんだよ。まだ若いんだから、いまにこんなことも笑い話にするときがきっとやってくる。生きているうちには悪いことばかりではないさ、くよくよしないで辛抱しておくれよ。」ってね。
アリア
その夜、幼なじみの宇之吉が一緒に逃げようというんだ。おけいは貧乏からは逃げられない。逃げるだけでは幸せになれないというんだ。自分たちの子どもにもみじめな辛い思いをさせたくない。逃げちゃだめ、逃げるのは負けよ、ねえ、世の中はたたかいっていうでしょ、あんたも強くなって頂戴、やけになったり諦めたりしないで辛抱強く一寸刻みでもいいから貧乏からぬける工夫をして頂戴って励ますんだ。
かん太
そして、いつか一緒になろうと約束するんだ。
アリア
四五日後、和助から迎えが来ておけいは去ってゆくんだけれど、実は和助には秘密があったんだ。どうやって富豪になったのか、ここからは朗読を聴いて下さいね。

追いついた夢 覚え書き

含羞(はにかみ)・・・恥ずかしいと思う気持ち。

遁世(とんせい)・・・隠棲して世間の煩わしさから離れること。

利慾(りよく)・・・利をむさぼる心。利益を得ようとする欲望。

凶状(きょうじょう)・・・凶悪な罪を犯した事実。

賢しげ(さかしげ)・・・いかにも才知、分別のありそうなさま。

義絶(ぎぜつ)・・・親子・兄弟など肉親との関係を絶つこと。

業が深い(ごうがふかい)・・・前世の罪深さにより、多くの報いをうけているさま。

脱疽(だっそ)・・・躰の組織の一部が生活力を失って脱落する病気。

閑居(かんきょ)・・・世俗を離れて静かに暮らすこと。また、その住まい。

御新造(ごしんぞう)・・・他人の妻の敬称。

朴訥(ぼくとつ)・・・かざりけがなく口数が少ないこと。

追従(ついしょう)・・・他人の気に入るような言動をすること。

救小屋(すくいこや)・・・江戸時代に地震・火災・洪水・飢饉などの天災の際に被害にあった人々を救助するために、幕府や藩などが建てた公的な救済施設のこと。

 

 

最新情報をチェックしよう!

下町ものの最新記事4件