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御馬印拝借 山本周五郎

【朗読】御馬印拝借 山本周五郎 読み手アリア

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御馬印拝借 山本周五郎  あらすじ

三村勘兵衛は、沈黙を貫く武士の誇りと親の情愛の間で葛藤します。彼は娘・信夫を、信頼する甥であり勇猛な若武者・土田源七郎の妻にと願っていました。しかし、言葉少なな彼にはその想いを直接伝える勇気がなかなか湧かない。ようやく伝えたその想いは、源七郎にもしっかりと届いたはずでした。

けれども運命は、ひとつの「はい」という言葉で大きく揺らぎます。戦場へと旅立つもう一人の若武者・河津虎之助が、命を賭けた告白を信夫にぶつけたのです。幼く優しい心を持った信夫は、その激情に「はい」と答えてしまう。そしてそのたった一言が、彼女自身の未来も、源七郎の胸の内も、取り返しのつかない方向へ動かしてしまうのでした。

菩提山の砦では、源七郎が命を懸けて守る戦が始まります。家康本陣の旗を偽って掲げる策略、散ってゆく仲間たち、そしてすべての苦悩を心に封じ込めて最後まで闘う誇り高き姿。その姿は壮烈にして静謐、まさに武士道の極致でした。

御馬印拝借 山本周五郎 登場人物

土田 源七郎(つちだ げんしちろう)

  • 榊原康政の家臣で、信夫の母方の甥。

  • 無口で、内に情熱と誠意を秘めた武士。勘兵衛の信頼も厚い。

  • 信夫への想いを胸に秘めたまま、菩提山の戦で壮絶な最期を遂げる。

  • 亡くなる直前に信夫と虎之助の結びつきを受け入れ、鏡を譲る。

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三村 勘兵衛(みむら かんべえ)

  • 信夫の父。武士でありながら、寡黙で繊細な性格。

  • 土田源七郎に娘を嫁がせたいと望むが、不器用な性格ゆえになかなか切り出せない。

  • 最後には源七郎の心を理解し、信夫と虎之助を結ばせる。

お萱(おかや)

  • 勘兵衛の妻。家庭を温かく見守る穏やかな母。

  • 勘兵衛の気持ちを敏感に察し、娘の未来を案じながらも静かに支える。

信夫(しのぶ)

  • 勘兵衛の娘。18歳。情け深く、優しすぎるほど優しい性格。

  • 源七郎を婿と意識していたが、出陣前の虎之助の告白に「はい」と答えてしまい、自らの運命を揺らしてしまう。

  • 最後は源七郎の大きな愛に涙し、虎之助の妻となる覚悟を決める。

河津 虎之助(かわづ とらのすけ)

  • 源七郎と同じく榊原家の家臣。若く血気盛んな武士。

  • 信夫への強い想いを抱き、出陣前に命がけの告白をする。

  • 戦場でも命を懸けて戦い、のちに生還する。

  • 源七郎の遺志によって信夫と結ばれる。

榊原 康政(さかきばら やすまさ)

  • 徳川家康の重臣で、源七郎や虎之助の主君。

  • 源七郎を信頼し、重要な砦の任務を任せる。

  • 戦後、源七郎の死を悼み、家康の陣羽織を与える。

徳川 家康(とくがわ いえやす)

  • 戦の全体を指揮する大将。

  • 菩提山の戦いの重要性を理解し、源七郎たちの忠義に深く感動する。

  • 無断で馬印を使った源七郎の行為を許し、陣羽織を与える。

弥五兵衛(やごべえ)

  • 先手組の兵士。飄々とした性格で、戦場でもユーモアを忘れない。

  • 戦死の間際にも冗談を言い、仲間との温かいやりとりが印象的。

刀根 五郎太(とね ごろうた)

  • 組頭の一人。実直で忠義に厚く、源七郎に進言する場面も。

  • 補給や戦略において現場の声を届ける役割を果たす。

アリアの備忘録

「何が正解か」ではなく、「どう生き、どう思い、何を選ぶか」に込められた心の真実と、本当に強い人間とは、他人を思いやることのできる人だと描かれています。どの人物も決して完璧ではない「人間らしさ」を持っていて、それがこの物語に深いリアリティと情感を与えていました。

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