【朗読】柘榴 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「柘榴」です。昭和23年、周五郎氏45歳の作品です。17歳で結婚がどんなものかわからないまま松室の家へ嫁した真沙は、夫の昌蔵の自分への愛情を理解することができなかった。昌蔵もまた妻を幸せにするのは家名と金に不自由のない生活だと思って間違いを犯すのでした。
柘榴 主な登場人物
真沙・・・実家は代々の物がしら格上席で、武家の厳しい躾を受けて育つ。若さゆえか夫の愛情を理解できず、不幸な結婚生活を送る。
松室昌蔵・・・真沙の夫。家系が没落し、自らの不遇を恥じながらも真沙を幸せにしようと努力する。しかしその野心が災いして失敗する。
戸沢数右衛門・・・真沙と昌蔵の仲人。真沙の結婚生活が破綻した後も彼女を助ける。
菊江・・・戸沢数右衛門の末娘。真沙が数右衛門の家に世話になっていた時に親しくなった。
昌蔵の母・・・真沙に女としてのつとめについて話すが病死する。
井沼玄蕃・・・真沙の父。お槍奉行を勤める堅苦しい人。
柘榴 あらすじ
十七歳で松室へ嫁してきた真沙は、若さゆえか昌蔵の愛情を理解することができず、結婚生活は次第に苦痛に満ちたものとなっていきました。昌蔵は家名を再興することが真沙を幸せにすることだと信じて努力しますが、無理な野心が災いして破滅の道を歩んでしまいます。彼は失敗し自ら姿をくらまします。多額の公金費消で断罪の罪となることが定まった昌蔵の妻として、本来なら妻の真沙にもお咎めがなければならないが、戸沢数右衛門の奔走で国許お構いになり色々な事情から生涯独身と決めたものが多く、そこには独立して生きる者の張りと自覚があったから、松室での生活に比べれば遥かに気楽でもあり、のびのびと解放された気持ちでいることができた。しかし心の底には、かつての結婚生活への後悔が残り続けます。晩年、田舎の静かな生活に身を置いた彼女は、老僕、伊助との交流を通じて過去の自分の若さと無理解を思い返し、昌蔵の愛情の深さに気づくようになります。
柘榴 アリアの感想と備忘録
幼い真沙が嫁いだ当初の、結婚という現実に直面し、自分の心が追いつかずに昌蔵との間に溝ができてしまう様子がとてもリアルに描かれていて心が痛みました。昌蔵は不器用ながらも真沙を心から愛していて、彼女を幸せにしようと必死でしたが、その愛情が逆に重荷となってしまうところが二人のすれ違いをさらに悲しく感じさせました。特に昌蔵が柘榴の実を真沙の躯に例える場面は、彼の愛が強すぎるあまり、真沙に恐怖を拒絶を感じさせるという象徴的で印象的な場面でした。しかし年を重ねた真沙が、徐々に過去を振り返って、若い頃には理解できなかった昌蔵の気持ちに気づいていく姿には、なんとも言えない切なさと少しの救いを感じました。伊助が昌蔵だったのかもしれないという謎は残ったけれども、最後の彼の言葉で、まさには十分な慰めになったのではないかと思います。人生には後になって気づくことや、過去を悔やむことが色々ありますが、どれをどう受け入れて生きていくかが大切だと、この話を読んで改めて考えさせられました。静かながら深い余韻を残す作品で、心にじんわりと響きました。