【朗読】熊野灘 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「熊野灘」です。この作品は、昭和17年講談雑誌に掲載されました。熊野灘の網元の二男、和田小三郎が、紀州家より献上した鯨について将軍家光に鯨突きのしだいを言上します。和田小三郎の祖先は鎌倉幕府に仕えた朝比奈義秀の裔でした。将軍家光は小三郎の不屈なつらだましいを好きになり、しばらく話し相手として江戸城に留めるうちに彼が朝比奈義秀の血統であることを知り小三郎に千石で和田家を立てよと武士になることをすすめるのでした。
鯨突きの描写は目に見えるようで迫力がありました!まず漁夫が鯨の背へ飛び乗って利刀で鯨の背を貫き、その間に鯨は海中に沈みあるいは水面に浮かび、波濤の間を縦横無尽に暴れまわる。わきたつ泡、飛び散る飛沫、渦巻き返す海面に出没狂奔する鯨と人と命を賭して戦うこのありさまを熊野灘のあらくれどもは華と呼ぶ。そして水中をくぐること幾十たび、鯨の背を突き貫いて太綱を通し、左右の舟へ綱を繋ぎ陸地へ揚げる。この仕方をてがたとりと云って熊野灘の漁夫だけが持つ独特の方法です。暴れるクジラの背へ乗るなんて危険すぎやしませんか・・・。
熊野灘 主な登場人物
和田小三郎・・・二十四歳、和田屋忠兵衛の二男。
お美代・・・十八歳。十一二歳のころから和田屋の家に女中奉公にきている。色白の愛くるしい顔立ちに気質のおとなしいしっとりと落ち着いた娘。
和田屋忠兵衛・・・朝比奈義秀の裔。小三郎が武士になることを喜ぶ。
清太郎・・・和田屋の長男。てがたとりで命を落とす。
徳川家光・・・小三郎の不屈なつらだましいを好きになる。
お秋・・・小三郎の乳母、お美代の母親。
安藤帯刀直次・・・紀伊徳川家の老臣。