【朗読】人情裏長屋 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「人情裏長屋」です。この作品は、昭和23年講談雑誌に掲載されました。(ペンネームは折箸蘭亭)木挽町一丁目の十六店という裏長屋に住む浪人、松村信兵衛はいつも酔っている。信兵衛は長屋うちで稼ぎ手に寝られるとか、仕事にあぶれて困るものがいると、さりげなく米味噌を届けさせたり銭を持っていって遣ったりする。「どうせもっていれば飲んじまうんだ、困る時はお互いさ」と決して相手に遠慮やひけめを感じさせないサラッとした態度である。だから信兵衛は長屋ぜんたいの先生と呼ばれていた。ある日、新しく長屋に沖石主殿という赤子を連れた浪人が越してきた。
人情裏長屋 主な登場人物
松村信兵衛・・・三十歳くらい。浪人。眼に凄みがあるが笑うと人懐っこい愛嬌が出る。相長屋で困っている者があるとよく面倒をみる。道場荒しが稼業で取手呉兵衛(とってくれべえ)の名をつかう。
おぶん・・・十八歳。隣に住む重助の孫娘。信兵衛の身の回りの世話をする。丸顔で目尻がちょっと下がった大人しそうな娘。実は芯にきついところがあり、年に似合わない気丈な性質をもっている。信兵衛のことを「うちの先生」と呼ぶ。
沖石主殿・・・二十五六才。主家を浪人し、妻に死なれ嬰児と共に長屋へ越してくる。嬰児・鶴之助を信兵衛に託して出奔する。一年後、松平出雲家に召し抱えられ鶴之助を迎えに来る。
重助・・・夜鷹そば屋で稼いでいる。おぶんの祖父。
平八・・・十六店長屋の差配。
折笠五郎左衛門・・・折笠道場の道場主。信兵衛に大藩への仕官を勧める。
定吉・・・酒屋・三河屋の小僧。信兵衛が毎日来るのを待っている。
人情裏長屋 覚え書き
一議・・・異議や異論
嬰児・・・乳飲み児
草鞋銭(わらじせん)・・・わらじを買うくらいの金。
慇懃(いんぎん)・・・真心がこもっていて礼儀正しいこと。
懸隔(けんかく)・・・二つの物事がかけ離れていること。
蹣さん(まんさん)・・・よろよろと歩くさま
こぬか雨・・・霧のように細かい雨
忿怒(ふんぬ)・・・ひどく怒ること。
遺恨(いこん)・・・忘れがたい深いうらみ
尺箸(しゃくばし)・・・長い箸
四方八面(しほうはちめん)・・・すべての方向
やぶにらみ・・・物を見る時片方の目が違った方へ向く
鼬の道(いたちのみち)・・・行き来音信が絶えること。
気勢(きせい)・・何かしようと意気込む気持ち。
阿諛追従(あゆついしょう)・・・相手に気に入られようとして媚びへつらうこと。
弁口頓才(べんこうとんさい)・・・口先がうまく機転を利かせる。