【朗読】武家草鞋 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「武家草鞋」です。この作品は昭和20年、富士に掲載されました。宗方伝三郎は出羽の国、新庄の藩士で二百石の書院番を勤めていた。清廉潔白で謹直な性質だったが周囲との折り合いが悪く、極めて孤独なおいたちをした。人は彼を偏狭な男だとか傲慢な独善家だと罵った。世間の人には彼の純粋に生きようとする態度が滑稽で煙たかったようだった。貞享三年、新庄藩に家督問題が起こり、伝三郎は上役や老臣たちと衝突して戸沢家を退身してしまう。それから彼は心のどこかの敗北感と、負けて逃げ出すような屈辱的な感じから逃れられない。わずかな貯えを持って江戸へ出てもその生活は武家生活におけるような生優しいものではなく、彼の廉潔心は叩きのめされる。やがて貯えが無くなるまで安宿に泊まり、無くなってからは野宿をしながら水を飲み飲み辿り着いた先で、彼は老人に救われる。
武家草鞋 主な登場人物
宗方伝三郎・・・新庄藩を退身した浪人。武士でなくともよい、清潔に生きる道さえあればどんなことでもしよう。そう思って世の中へ入っていくが順応することができず苦しむ。
牧野市蔵・・・元郷士の老人。伝三郎を救い自宅で養生させる。村の子供たちに読み書きを教えたり、ろうそくを作って売ったりしている。
いね・・・市蔵の孫娘。村の娘に裁ち縫いを教えたり、わらびを育てたり、わらびから質のいい糊を作ったりする。
武家草鞋 覚え書き
祈念(きねん)・・・神仏に願いがかなうように祈ること。
清廉潔白(せいれんけっぱく)・・・心が清くて私欲がなく、後ろ暗いことがないこと。
信条(しんじょう)・・・固く信じて守っていること。
偏狭(へんきょう)・・・自分だけの狭い考えにとらわれること。
廉潔(れんけつ)・・・私欲がなく、心や行いが正しいこと。
興隆(こうりゅう)・・・勢いが盛んになること。
勃興(ぼっこう)・・・にわかに勢力を得て盛んになること。
卑賎(ひせん)・・・人としての品位が低いこと。
憤懣(ふんまん)・・・怒りが発散できずいらいらすること。
老耄(ろうもう)・・・おいぼれること。
慚愧(ざんき)・・・自分の見苦しさや過ちを反省して心に深く恥じること。
憤怒(ふんぬ)・・・ひどく怒ること。
艱難(かんなん)・・・困難に出会って苦しみ悩むこと。