【朗読】良人の鎧 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「良人の鎧」です。(昭和18年)孫兵衛は義兄与太郎が石田三成に取り入ろうとするのを憎んでいた。それは主君右京太夫幸長の父は弾正少弼長政で、もと織田信長の家臣であり、秀吉とはあい婿の親族であったが、秀吉が関白太政大臣とまで栄達するあいだに、二人の間柄は必ずしも折り合いがよくなかった。長政は二度まで秀吉のために危うく殺されようとした。その二度とも徳川家康が調停にたって命は助かったが、二十四万石の大名としてはぬぐいがたい屈辱だった。そのうえ去年秀吉が逝去して間もなく、浅野長政は密かに徳川どのを討とうと謀略をめぐらせているという密謀を徳川家に通じたものがあった。その密謀が治部少輔から出たものだということは今では知らぬものがないといってよい。だから与吉郎がしきりに三成に取り入っていることは屈辱の上塗りであり、ましてあわよくば己の運の踏み段にしようという肚があるとすれば、孫兵衛は最悪の場合をも辞さぬ気持ちを持っていた。
良人の鎧 主な登場人物
香田孫兵衛・・・浅野幸長の家臣。義兄、菊岡与吉郎があわよくばご主君をさし越えて気に入ろうとれが石田三成に贈る下心で育てていた犬を斬り、兄与吉郎も斬ってしまい出奔する。
屋代・・・孫兵衛の妻。良人が戦に間に合わなかったので・・
菊岡与吉郎・・・浅野幸長の家臣、石田三成に取り入るため、贈る犬を育てている。孫兵衛に斬られる。
菊岡弥五郎・・・浅野幸長の家臣。与吉郎の弟。
平林大膳・・・孫兵衛の知人。
和泉兵庫介・・・孫兵衛の知人。
良人の鎧 覚え書き
権門(けんもん)・・・官位が高く、権力や勢力のある家。
武弁者(ぶべんしゃ)・・・武士、武官。
疎隔(そかく)・・・疎くなってへだたりができること。
遠侍(とおさぶらい)・・・武家の屋敷の侍詰め所。
霜雪(そうせつ)・・・年を取って白くなった髪の毛や髭の事。
安閑(あんかん)・・・のんびりと静かな様子。
第(だい)・・・立派な屋敷、家。
進捗(しんちょく)・・・物事がはかどること。
朋輩(ほうばい)・・・同じ先生に師事したり、同じ主人に仕えている仲間。
敢然(かんぜん)・・・困難や危険を伴うことは承知しながら思い切って行う様子。