【朗読】一領一筋 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読アリアです。今回は、山本周五郎作「一領一筋」です。(昭和21年)鴨部五郎左衛門は癇癪の強い人で、いつも眉をしかめて唇をへの字なりにして、何もかも気に入らないと云いたそうな目であたりを見回す。我が強くて自分がよしと信じたことは中々後へ引かない。しかし癇癪があろうと我が強かろうと、藩政の実務にすぐれた才腕があるため無くてはならぬ人物の一人に数えられていた。しかし残念なことには彼には男子がなく、娘一人しかいなかったため選り抜きの婿を手に入れなければならなかった。五郎左衛門が婿にと目をつけたのは、同じ家中の番頭、内田覚右衛門の三男圭之介だった。
一領一筋 主な登場人物
鴨部五郎左衛門・・・52歳。讃岐のくに高松藩の年寄役。若い者に煙たがられている。いつも「うるるるけふん」というような喉頭運動をする癇癪持ち。娘八重の婿に、家中随一の有能な圭之介を迎える。
八重・・・五郎左衛門の一人娘。圭之介の妻。
内田圭之介・・・25歳。番頭、内田覚右衛門の三男。おっとりとした物腰で立ち居も言葉つきも幼い頃から変わらない。江戸で文武両道に秀でた才能を開いてぬきさしならぬ人物となった。
松平頼重・・・高松藩主。8歳の頃児小姓として側へあがった圭之介に目を付け寵愛した。
一領一筋 覚え書き
喉頭(こうとう)・・・呼吸器の一部。
強弁(ごうべん)・・・無理に理屈をつけて自分の意見や言い訳を通そうとすること。
弄する(ろうする)・・・思うままに操る、もてあそぶ。
選り抜き(えりぬき)・・・多くの中から選んで抜き出す。
学頭(がくとう)・・・学校長。
嚢中の針(のうちゅうのはり)・・・優れた才能を持つ人は、凡人の中に混じっても、自然とっその才能が目立ってくるということ。
儕輩(さいはい)・・・仲間、同輩など。
一列一隊(いちれついったい)・・・どれも同じであるさま。
蕭々(しょうしょう)・・・ものさびしいさま。
寝鳥(ねとり)・・・ねぐらで寝ている鳥。
佶屈(きっくつ)・・・かがまって伸びがないこと。曲がりくねっている。
虚説(きょせつ)・・・根拠のない噂。
退下(たいげ)・・・御前を下がること。
稀覯(きこう)・・・めったに見られない珍しいこと。