【朗読】松風の門 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「松風の門」(昭和15年)です。藩主宗利が十歳の頃、お相手として殿中に召し出された少年たちの中に一つ年下の池藤小次郎がいた。彼は神童と云われた俊才で、学問にも武芸にもずばぬけた能力を持ち、ほとんど一家中の注目の的になっていた。宗利は小次郎を嫉んでいた、領主としての自分よりも遥かに多く人々の尊敬と嘆賞を集めている彼が憎かった。それでいながら宗利は最も多く彼を相手に選んだ。江戸邸に移る前年の夏、宗利は小次郎に剣術の相手を命じた。巧みに鋭鋒を避けて逃げ回る小次郎に宗利は法もなく打ち掛かっていったが、避けきれず向かっていった小次郎の竹刀の先が宗利の右目を突いてしまう。
松風の門 主な登場人物
池藤八郎兵衛(小次郎)・・・父は郡奉行。学問にも武芸にも秀でた神童だったが、宗利が江戸へ去ってからようすが変わり、利口さも挙措動作も次第に鈍くなり、一家中からあれほど注目されていた才能も影が薄くなって、やがて家中の人々から忘れられていった。
伊達大膳大夫宗利・・・伊予の国宇和島の藩主。二十六年ぶりに帰国する。少年の頃、右目の視力を失っている。
朽木大学・・・五十九歳、宗利の傅で宗利が家督すると共に参政となった。
うめ・・・八郎兵衛の妻。八十島治右衛門の娘。
八十島治右衛門・・・郡奉行。八郎兵衛の亡父と親しかった人で、親たちによって長女のうめと八郎兵衛は許嫁の約を結んでいた。
松風の門 覚え書き
窟(いわや)・・・岩壁に自然とできた洞穴。
緋羅紗(ひらしゃ)・・・厚地の毛織物。
静座(せいざ)・・・心を落ち着けて静かに座ること。
半跏(はんか)・・・片足を他の足のももの上に組んで座る。
白雨(はくう)・・・明るい空から降る雨。にわか雨。
暗鬱(あんうつ)・・・気持ちが暗くふさぎこんでいること。
傅(ふ)・・・教育係。
参政(さんせい)・・・政治に参与する職。
鋭鋒(えいほう)・・・鋭い矛先。
恩典(おんてん)・・・ありがたい処置。情けある取り計らい。
面謁(めんえつ)・・・藩主に会うこと。
反別(たんべつ)・・・田を一反ずつ分けること。
古法(こほう)・・・昔の方法。
面壁九年(めんぺきくねん)・・・達磨が無言のまま九年も壁に面して座禅し、悟りを開いたという故事。
夫婦は二世(ふうふはにせ)・・・夫婦の関係は、現世だけでなく来世にも続くということ。
騒擾(そうじょう)・・・集団で騒ぎを起こし、社会の秩序を乱すこと。
好餌(こうじ)・・・よいえさ。
怨嗟(えんさ)・・・うらみ嘆くこと。
蕭々と(しょうしょうと)・・・ものさびしい。