【連載朗読】さぶ1 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回から山本周五郎作「さぶ」を連載でお送りします。この作品は昭和38年週刊朝日に掲載されました。不器用でのろまで泣き虫だけど心優しいさぶと、男前で頭がよく、仕事もできる栄二。対称的な二人の友情と、周囲の人たちの人間模様。何度読んでも胸がいっぱいになる名作です。
さぶ1 主な登場人物
(少年時代)
さぶ・・・15歳 ずんぐりした体つきに顔も丸く頭が尖っている。実家は貧しく葛西で百姓をしている。小舟町の「芳古堂」に奉公に来て三年、休む暇もなく浴びせられた小言と嘲笑と平手打ち、そして自分のとんまさ、ぐずさに奉公先「芳古堂」から逃げ出したくなる。
栄二・・・15歳 八歳の時、夏火事で両親と妹に焼け死なれ、身寄りがないひとりぼっち。「芳古堂」で奉公している。鰻の蒲焼食べたさに「芳古堂」の帳場の銭を十二、三度盗み、主婦のお由に見つかる。
おのぶ・・・両国橋で雨に濡れるさぶと栄二に傘を差しだす。姉が堀江町の「すみよし」で働いている。
(二十歳~)
さぶ・・・はたちになっても糊の仕込みで、ときどき自分がやりきれなくなる。
栄二・・・屏風にかかれるようになり、襖の下張りは一人前になった。
綿文・・・日本橋本町の大きな両替商。主人は徳兵衛、妻女はおみよ。男の子はなく、おきみ、おそのという娘が二人ある。
おきみ・・・十八歳。綿文の姉娘。父親に似てゆったりとした躰つきで性質ものんびりしている。
おその・・・十六歳。綿文の妹娘。痩せ型で顔も細く、ませた口をきくし、することがすばしこい。
おすえ・・・十六歳になる綿文の仲働き。
おのぶ・・・小料理屋「すみよし」の女中。きりっと緊まったほそおもてで、笑うと唇の間から八重歯が覗く。
さぶ1 覚え書き
折助(おりすけ)・・・武家で使われた下男の異称。
平板(へいばん)・・・変化に乏しく、おもしろみのないこと。
はちけん・・・平たい大形の釣行燈、人の集まる場所で、天井などにつるして用いた。
下廻り(したまわり)・・・雑用などをする人。下働き。
衣桁(いこう)・・・室内で衣類などを掛けておく道具。
愚直(ぐちょく)・・・正直なばかりで臨機応変の行動をとれないこと。また、そのさま。ばか正直。