【朗読】樅ノ木は残った 1の14 断章3 孤燈のかげ 山本周五郎 読み手アリア
樅ノ木は残った 1の14 断章3 あらすじ
秋風が吹きはじめるころ、仙台藩の水面下では密かな火花が散っていた。原田甲斐の妻が「あなたは冷酷で無情な人」と声を荒げたという噂が、静かに屋敷の奥に広がる。長年“温厚篤実”と謳われた甲斐に、まさかの非情の影。そして、その影は藩の重臣たちの思惑にまつわる仮面にもつながっていく。一方、別席では奥山大学が声高に吠え、原田は酔いつぶれたふりで密談をかわしていた。その夜明け、かつての盟友・周防との会話は「手を引く」という一言で途切れ、冷たい亀裂を残す。さらに場面は変わり、柿崎六郎兵衛に忠義を誓う六人の浪人たちが、どんな恩も扶持も断ってその忠誠を貫く姿が浮かび上がる。策は破れ、説得も失敗――だが、その忠義の強さこそが、新たな駒となり得るのではないか。策士たちは静かに嗤い、また次の一手を思案する。白菊が咲く頃、心にもまた、花ではなく、氷のような静けさが、ひとひら。
樅ノ木は残った 1の14 断章3
名前 | 立場・役職 | 性格・印象 | 心情・行動描写 |
---|---|---|---|
原田甲斐 | 宿老・「船岡殿」 | 冷静沈着・中庸・表には出さない策士 | 妻に「冷酷無情」と糾弾される一方で、密かに周防・安芸と通じる。自ら「手を引く」と語るが、真意は不明。裏で何を見ているのか…。 |
原田甲斐の妻 | 武家の妻・15年以上連れ添う | おっとりとした性格とされる | 長年の夫への不満が爆発。「あなたは冷酷な人」と強く非難する。甲斐の本質を知る者の苦しみ。 |
茂庭周防 | 家老(松山殿) | 正義感が強くまっすぐ・情にもろい | 甲斐に失望しつつも、信じたくて揺れている。「本当に手を引くのか」と詰め寄るも、拒まれ、動揺。 |
伊達安芸(涌谷) | 重臣・密議の中心人物 | 策謀に長けた知略家 | 甲斐・周防とともに密議を仕切るが、感情を表に出さない。裏で状況を掌握しつつ、誰が味方かを見極めている。 |
奥山大学 | 家老・吉岡館主(6千石) | 傲慢・直情径行・頑固者 | 宴席で声高に一人吠える存在。周囲から孤立しつつも、自らが正義と信じることを貫く。 |
柿崎六郎兵衛 | 浪人だが信望ある人物 | 指導者的・忠義を集める | 六人の浪人たちに命まで預けられる存在。藩の命にも応じず、忠義を貫く姿が印象的。 |
六人の浪人たち | 柿崎に心服する浪人たち | 無名の忠義者たち | 扶持や金銭よりも信義を選び、柿崎のもとを離れない。彼らの忠誠心が、今後の鍵となるか。 |
語り手(政敵) | 名は明示されず | 冷徹な観察者・策略家 | 原田と周防のやりとりを見透かし「騙されない」と吐き捨てる。隠れた黒幕の気配。 |
隼人 | 使いの者・命令を受ける立場 | 無表情・忠実 | 「隼人にもまいれ」と語られる。次の行動の鍵を握るかもしれない存在。 |
成瀬久馬 | 甲斐の舎人 | 若く、従順な補佐 | 甲斐の命で静かに登場。密談を裏から聞いていた可能性もあり、場の空気を一変させる「目撃者」。 |
伊達安芸(涌谷さま)
(伊達家の重臣/冷静な黒幕的存在)
│
─────────┼───────────
│ │ │
▼ ▼ ▼
茂庭周防 原田甲斐 奥山大学
(家老・松山) (宿老・船岡) (家老・吉岡館主)
│ │ │
│〈幼なじみ〉 │〈妻と不和〉 │〈孤高・直言〉
│〈信頼→失望〉 │〈表向き手を引く〉 │〈宴席で一人吠える〉
│ │〈周防と対立を演じる〉│
│
▼
原田甲斐の妻
(長年連れ添う/冷酷無情と批判)
――――――――――――――――――――――――――――
柿崎六郎兵衛(浪人・六人の忠臣を従える)
▲
│
忠誠を誓う六人の浪人たち
(野中・島田・石川・砂山・藤沢・尾田)
→ 伊達家の側近が懐柔を試みるも、忠義を貫く。
――――――――――――――――――――――――――――
語り手(敵対的観察者)──「騙されぬ」と冷笑しつつ
事態の裏を読もうとしている。
隼人・成瀬久馬──それぞれ使者・舎人として密談に関与。
久馬は密談の目撃者かつ、甲斐の忠実な補佐。