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樅ノ木は残った 1の15 孤燈のかげ 山本周五郎

【朗読】樅ノ木は残った 1の15  孤燈のかげ 山本周五郎 読み手アリア

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樅ノ木は残った1の14 断章3 孤燈のかげ あらすじ

秋の深まりとともに、原田甲斐の周囲では、運命の歯車が静かに、しかし確実に回り始めていた。亀千代の家督が正式に幕府から認められ、伊達家に安堵の空気が流れる中、甲斐は祝いの場にすら姿を見せず、ひとり静かな時間の中にいた。そんな折、忠実な家従・中黒達弥が切腹を試みる。理由を問えば、ただ黙し、涙をこぼすだけ。甲斐は静かに彼の胸中を察し、「生きよ、そして、死よりもつらい役目を果たしてほしい」と語りかける。達弥は深くうなだれ、甲斐の命に従う決意をにじませた。やがて、小石川の堀普請場での崩落事故、労働者の賃上げ要求、逼迫する藩の財政……苦難が重なる中、甲斐は黙して奔走する。そして、下屋敷に逼塞中の綱宗との再会。かつての主は酒に溺れ、怒りと悲しみに揺れていた。自らの若さ、抑え込まれた想い、裏切りと陰謀――綱宗はすべてをぶつけるように叫ぶ。「六十万石など潰してくれる」とまで。甲斐は黙ってそれを受け止め、酔乱した綱宗の刃を静かに封じ、ただひとことも恨み言を言わなかった。やがて綱宗は涙を流し、「まだ二十一だ」と呟く。甲斐はその姿を、深く、深く、心に刻んだ。
それは、失われた主君の光が、かすかに残る最後の瞬きのようだった。十月、藩の中では新たな後見人と家老の人事が進む。だが、甲斐の心には、あの夜の綱宗の孤影が、いまだ消えることなく、静かに残り続けていた。

樅ノ木は残った1の14 断章3 孤燈のかげ 登場人物

名前 立場・関係 特徴・補足
原田甲斐 伊達家の重臣(評定役) 冷静沈着で誠実、物語の中心人物。綱宗に対しても節度ある態度を貫き、達弥には命を託す。
中黒達弥 原田甲斐の家従(元近習) 物静かで潔癖な若者。思い詰め切腹を図るが、甲斐の説得により命をつなぐ。
伊達綱宗 前藩主、逼塞中 若くして家督を奪われ、酒に溺れる。怒りと孤独を抱え、甲斐に悲痛な胸中を吐露する。
三沢はつ女 綱宗の側室(亀千代の母) 綱宗を静かに支える穏やかな女性。甲斐に理解を示し、場をなだめようとする。
藤井 綱宗付きの老女中 綱宗を深く案じ、甲斐に助けを求める。
亀千代 綱宗の嫡子(伊達家新当主) 墨印を受けて正式に家督を継承。まだ幼く、抱守にかかえられて登場。

🏯家中・政務関係者

名前 役職・立場 補足
柴田内蔵介 家老 → 家老に再任 最終的に「外記朝意」と改名。家老として藩政に加わる。
富塚内蔵允 藩士 → 家老に昇進 加増を一度辞退するが、最終的には受け入れる。
大町備前(定頼) 綱宗の家老(下屋敷) 綱宗の状態を案じ、甲斐の面会をためらうが案内役を務める。
今村善太夫 目付役(本邸詰) 綱宗の下屋敷にいることで、甲斐に兵部派とのつながりを疑われる。
茂庭周防(定元) 普請総奉行・忠臣 綱宗を諫めた忠臣の一人。綱宗との再会はできていない。
塩沢丹三郎/堀内惣左衛門 甲斐の近習・側近 達弥の切腹未遂の騒ぎに対応、甲斐を補佐する。
里見十左衛門/北見彦右衛門 普請場の目付役 工事現場の責任者として登場。賃金交渉にも関わる。

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🎭政治的陰影を持つ人物

名前 立場 特徴
兵部少輔 宗勝 伊達家の重臣、綱宗の叔父 綱宗を失脚させた首謀者とされる。巧妙に権力を広げていく。
田村右京亮 宗良 綱宗の庶兄 後見人に任命され、兵部に同調する立場。
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